カリフォルニア州の大規模な山火事で被害が広がるなか、ジェレミー・コストはインスタグラムにふさわしい写真を探していた。
コストはマリブビーチで、ヌードで大きな木にもたれて物思わしげに地面を見ている男性の写真に選び出した。そしてコストはその写真にマリブの位置情報と、「#今の心境 火事によるマリブの非現実的な破壊の様子を見た。マリブビーチは私の仕事の中心的な場所。愛着があるし、世界にとってもあのような荘厳な場所を失うのは本当に悲しい」というハッシュタグとキャプションをつけて、87,000人のフォロワーにシェアした。
現在、多くの多くのインスタグラムのインフルエンサーや企業が、火事に関連した位置情報やハッシュタグ、キーワードを使って自分や商品をプロモーションしている。ドラッグとヌードの投稿をしているアーティストのコストも、その一人だ。
こういった活動の結果、誰かが火事に関する情報を求めてハッシュタグを検索すると、瞑想中の姿や、商品のセールスや、プロモーション、ヌード、美女といった、インフルエンサーの魅力的な写真が、被害の深刻さを映し出す写真とともに出てくることになっている。
「カリフォルニアのみんなの安全を祈っています。#caliyork(シンシア・ローリーの洋服ブランド)の収益の20%は赤十字を通じてカリフォルニアに寄付されます。#coasttocoastlove」というのは、50万人弱のフォロワーがいるユーザーが投稿したものだ。
その投稿には、 #californiafires(カリフォルニア火事) #lovecalifornia(ラブ・カリフォルニア)#californialove(カリフォルニア・ラブ)というハッシュタグも使われている。
ある俳優は、「サマー・ラブ。メロン色ギンガムのリネンの @miguelinagambaccini(リゾートウェアブランド)アンサンブル。キュートな @ellian.raffoulさんが着用」という投稿をした。
そこには「マリブの火事の件、とても悲しいです。安全をお祈りし、そこで火事と戦う消防士を応援します。人生には何が起こるかわかりません。幸せな瞬間はすべて、それだけでありがたいものなのですよね」と付け加えられている。
動画コンテンツ企業「Funny or Die」のTwitterアカウントでは、「Like and Subcribe」と呼ばれるインフルエンサーのツイートを紹介している。「Like and Subcribe」は、多くの人がインスタグラムで、カリフォルニア火事に苦しむ人々を支援していると装って自分自身の写真を投稿していると指摘しているのだ。
コストが写真を投稿すると、彼はすぐにフォロワーから怒りのメッセージを受け取った。そこで彼は位置情報とキャプションを削除した。BuzzFeed Newsの電話取材に対し、コストは謝罪し、誰かを傷つけるつもりはなかったのだと強調した。
「注目を集めようとしたわけではなく、共感をキーに私を理解してもらおうとしたわけでもありません。強く愛着のある場所で撮影した自分の作品を、自分でシェアしただけです」とコスト。彼はマリブで12年仕事をしてきて、その写真はそこで撮られたものだというのだ。
「写真は、十分に配慮のあるキャプションとともにシェアしたつもりです。その写真は、うれしがって飛び跳ねている写真ではありません。沈鬱な写真なのです」
こう言った行為は、リサーチャーのジョアン・ドノバンが「キーワード・スクワッティング(キーワードの無断占拠)」と呼ぶものだ。
キーワード・スクワッティングは、事件や政治、有名人のゴシップなどの速報に関連する言葉を、自分の利益のために使うことを指す。その瞬間に起きている何かの裏で、人気を押し上げようとする発想で行わているのだ。ドノバンは研究機関データアンドソサエティのメディア市場操作研究プロジェクトを率いている。
「キーワード・スクワッティングはある意味で、無料のマーケティングだと言えます」とドノバンはいう。
「そして、もし自分自身を売り込むだけでなく、何か商品を売っているのだとしたら、それはお金を生み出すのです」
ドノバンによると、インスタグラムはユニークなSNSである。なぜなら、Facebookなどとは違い、検索方法がそう多くはないからだ。
特にインスタグラム内部の検索では、検索方法が少ないために、インフルエンサーになりたい人々が、話題性のある速報の出来事のハッシュタグや位置情報に自分自身を絡めているとドノバンは指摘する。
インスタグラムは、前述のアーティストのコストにとって最優先のソーシャルメディアだ。彼はそこで自分のヌードとドラッグのアート作品をシェアしている。何かの戦略を使おうとしたわけではないし、投稿とキャプションでマリブを使うことは、深く考えて行ったことではないと彼は話していた。
「6、7年の間、毎日写真を投稿していたら、それは無意識で行うものになっていきます」と彼は話す。
自然災害が増え、話題性のある出来事の速報は常に注意を引きつける。そのため、ソーシャルメディアのユーザーは、いつ何をシェアする必要があるのかというエチケットを再考する必要があると、ドノバンは主張している。
「危機的状況にある時にコミュニティとしてどんな振る舞いをするべきか、私たちは学ぶ必要があります」と彼女は話していた。
この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:フェリックス清香 / 編集:BuzzFeed Japan