キリンシティのビールが容赦なく美味しい理由

    キリンシティに人生を捧げた人が一杯のビールを注いでいました。

    関東を中心に展開するビアレストラン、キリンシティ。とにかく美味いビールが飲めるとビール好きが足繁く通うお店です。

    ビールなんてどれも同じじゃないの?て、思う人もいるかもしれません。キリンシティのビールは見た目から違います。


    実際に提供されているプレミアムビール、ブラウマイスターを見てほしい。

    こんもり。

    泡がグラスの縁からせり上がっています。口をつけると鼻まで到達するほどです。

    口当たりはフワフワでクリーミー。そして液体の美味さが格別。ビールであってビールでないような、まろやかなうまみを体験できます。


    なぜこんなビールを提供できるのか、キリンシティ神奈川ブロック ブロックマネージャーの熊谷健さんに聞きました。

    キリンシティではビールのクオリティを守るため、社内資格「ビアマイスター制度」を設けています。厳しい審査に合格したスタッフのみがビールを注ぐことを許されます。

    熊谷さんは最高ランク ゴールドの称号をもつ人。キリンビールサーブのトップオブトップです。

    フワフワ泡の秘密は“3回注ぎ”

    キリンシティでは一杯のビールを3回に分けて注ぎます。1回目はグラスを泡で満たし、泡のトップの状態を見ながら2回目、3回目と注ぎ足してやっと完成します。

    所要時間は約4分。見た目に美しく、美味しく注ぐためにじっくりと時間をかけるそうです。

    「早く注ぎすぎるとクリーミーに盛り上がらず、遅すぎると泡が変形してしまいます。そのいい塩梅を見極めています」


    「泡が鼻につくくらい傾けて飲んでみてください。液体がマイルドに感じるはずです」

    そうして飲んでみると、ひとくち目は苦味よりも麦の味を。飲み進めるうちに少しずつ苦味が増し、味にグラデーションが感じられます。

    注ぎ方でこんなにも味が変わるとは驚きです。

    一番搾り用の注ぎ方を開発

    ビールの銘柄によって注ぎ方を変えることもあります。前述のブラウマイスターは3回に分けて注ぎますが、キリン一番搾りは2回でフィニッシュ。

    「一番搾りはスッキリとした飲み口のビールなので、炭酸をほどよく残しながら喉越しを消さない2回注ぎのほうが合っています」

    (細かすぎて伝わりにくい)見た目へのこだわり

    味だけではありません。泡と液体の分量にもルールがあるといいます。

    まずはキリン一番搾りの場合。

    提供する際、泡と液体の境目がグラスの漢字の「一」のラインからキリンマークの左前足踵の間にないと提供してはいけないそうです。

    ブラウマイスターをはじめとした3回注ぎ用のグラスは、キリンの右前足かかとから、左前足かかとに境目がくるよう提供します。

    「最高の状態でお客様にお届けするというこだわりです。この分量(300ml)で提供することで、はじめてお客様との約束を守れるんです」

    熊谷さんは続けてこう語ります。


    「ガスの状態や樽の中の液量、ビールの種類によって液体や泡の立ち方が変わるので、グラスの位置や角度で泡を調整します。非常に技術が必要です」

    コックになるはずがビール注ぎのプロに

    並々ならぬこだわりを熱く語る熊谷さん。聞けばもともとコックを目指していたとか。なぜビールを注ぐことになったのか聞きました。

    ——いつからキリンシティで働いているんですか?

    熊谷:2006年くらいです。最初はアルバイトで入社しました。

    ——きっかけはなんだったのでしょうか。

    熊谷:もともとコックを目指していました。銀座のイタリアンでアルバイトをしているとき、一緒に働いていたスタッフがキリンシティでバイトを始めたんです。

    「とにかくビールが美味いから来てみろ」と誘われて行ってみたら、本当にものすごく美味しかったんです。泡が盛り上がっていて、ふわふわで。

    ——客で来てみたらビール沼にハマってしまった。

    熊谷:スタッフのビールのうんちくも凄くて。料理の道に行きたかったはずなんですけど、ビール注ぎのプロとしてやってみたいなと思うようになって面接を受けました。

    キリンシティでビールを克服する人も

    ——実際に働いてみた印象はどうでしたか?

    熊谷:アルバイトながら、ビールでお客様を魅了できるのは凄いと思いました。

    お客様がお連れの方に「ここのビールが美味しい」と紹介してくれる、こんな飲食店はなかなか無いですよ。

    ——ホールスタッフ時代の印象的な出来事はありますか。

    熊谷:ビール好きのお連れ様で「ビールが苦手」という方がたまにいらっしゃいます。そういった方には「ハートランドだったらスッキリとして飲みやすいですよ。試してみます?」とお勧めしていました。

    これをきっかけにビールを飲めるようになった方がいますね。

    ——同じビールなのになぜ?

    熊谷:ハートランドは苦味が少なく、ほのかに甘い香りがします。3回注ぎをすることによって苦味成分が泡に吸収され、最初のひとくち目の苦味がさらに飲みやすくなるんです。

    ——ビールが苦手ならまずキリンシティでハートランドを飲んでみろ。

    熊谷:そうですね笑 お店でお客様にビールの説明をしたり、うんちくを語って、すごく喜んでもらって。その数日後にそのお客様が別のお客様をお連れしてくださることもありました。

    我々が伝えたいことをお客様が代弁してくださる。それって最高ですよね。

    たかがビール、されどビール。この一杯を人に勧めたくなる気持ちがよくわかります。

    もしもキリンシティに行く機会があるのなら、ぜひともカウンターに座ってください。注ぎたての最高の一杯が提供されます。

    ちなみに一番搾りに合う料理を聞いたところ、スパイシーな料理にもあっさりとした料理にも合う万能ビールなので、全ておすすめだそうです。