語りべ:むかし、足柄山の山奥に、金太郎と母親が暮らしていました。

語りべ:金太郎は産まれながらの力持ち。

語りべ:ハイハイ歩きのころから石臼を引きずるほどでした。

クマ:「へぇー」

クマ:「そんでそんで?」

語りべ:金太郎の遊び仲間は動物たちでした。

語りべ:元気に遊ぶうちに金太郎はどんどん、どんどん大きくなりました。

語りべ:母親は身体が大きくなった金太郎に鉞(まさかり)を与えました。

語りべ:金太郎はその鉞で薪割りの手伝いをするようになりました。

クマ:「えらいじゃーん」

クマ:「そんで、ねぇ、そんでそんで?」

語りべ:季節は秋になりました。

語りべ:動物たちがきて、栗拾いに行かないかと誘われました。

語りべ:金太郎は喜んで動物たちと栗拾いに出かけました。しかし…

語りべ:崖にかかっていた橋がなくなっていました。

語りべ:そこで金太郎は、近くにあった大きな木を力一杯押し倒し、橋をかけました。

クマ:「に、人間だよね…」

パンダ:「早く続きを聞かせてよー!」

語りべ:橋を渡ると、栗の実が沢山落ちていました。

語りべ:夢中で栗拾いをしていると、茂みから大きな熊が現れました。

クマ:「!?」

語りべ:動物たちは震え上がりましたが、金太郎は怖がることなく熊とがっぷり組み合いました。

クマ:「クマと…!?」

クマ:「やめてーーーー!!」

語りべ:山で一番強い熊が相手では流石の金太郎もなかなか勝負がつけられません。

クマ:「クマと戦うなんてやめてーーー逃げてーーー!!!」

クマ:「いのち大事にーーーーーー!!!!!」

語りべ:動物たちの応援に励まされ金太郎はついに…………………

クマ:「食べられちゃううううぅぅぅぅぅ!!!!」

クマ:「うわわああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

クマ:「っっっっっ!!!!!」



ナレーション:遠のく意識の中、クマは思った。

ナレーション:「金太郎、勝ったかな…」

ナレーション:「でも勝ったからってどうなる?新たな憎しみを生むだけじゃないか」

ナレーション:「そんなのただ虚しいだけじゃな…」


ナレーション:そう思いながら、深い眠りにつくクマであった。


(終)
あくまで妄想の話です。ところで、金太郎のオチをご存知ですか?
一説によると、都の偉いお侍さんの家来になり、悪者を次々とやっつけたそうです。
めでたしめでたし
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