“脳への錯覚”をリハビリに応用 「VRゲーム」の向こうに見える未来

    「まずは家庭に置いてもらうところから」

    VRの未来は、“エンターテイメントの先”にある

    10月13日、PlayStation VRが発売された。

    価格はVRセットだけで4万4980円。決して安価ではないが、売れ行きは好調だ。現在、多くの販売店で品切れの状態が続いている。

    ソニー・インタラクティブエンタテインメントの会田覚さんは「まずは、リビングにVR機器を置いていただくところから始めたい」と話す。

    ゲームはあくまでVR事業の起点に過ぎない。エンターテイメントとして利用するその先に、さらなる可能性が広がっているという。

    ゲームだけじゃない。VRはどんな景色も再現可能

    VR技術があれば、自分で撮影した写真や動画を、目の前に広がる景色かのごとく再生できる。

    全天球カメラで360度撮影し、前方だけでなく、空や足元などの景色を再現することが可能だ。

    “マップ”のデータを使って、世界中を旅したり。

    自分で撮影したものに限った話ではない。この技術を利用すれば、VRで世界を旅した気分を味わうのも容易だ。

    「極端な話ですが、足の不自由な方でも、行きたい観光地の映像があればそこを訪れた感覚を簡単に味わえます」

    それに加え、現代では衛星画像などから作られた地図データに誰でもアクセスできる。マップとVRを利用し、世界を旅することもいずれ可能になるかもしれない。

    「統一化されたデータで、PS4のメディアプレイヤーで再生できるものならば大丈夫です」と会田さんは述べている。

    VR技術は医療の現場にも。外科医の強力な味方に

    “手術”への応用も期待される。VR技術が、外科医の目線を患者さんの体内に移すことも可能にするのである。

    会田さんは「外科の方は、手術前に患者さんの臓器を3Dで想像してから施術すると言います。自分で見回して、どこをどうしたら最短のオペができるか想像されるらしいんです」と話す。

    「事前に患者さんの体内のスキャンはしているはずなので、VR技術をそれに応用できれば、さらにイメージが湧くようになります」

    “脳の錯覚”が、リハビリで活きる

    「やっていただくとわかると思いますが、VRを使用すると脳が騙されたような状態になります。浮遊感や、感じるはずのない風を感じたりするんです」と会田さん。

    VRは脳に錯覚を起こすが、実はいま、それを“リハビリ”に応用する研究が行われているという。

    「足の不自由な方が実際に歩いている映像を何度も観ることで、脳が刺激され、リハビリの役に立つのではないかと考えられています」

    すでに広がるVRの用途。“不動産”での利用も

    「PS4に繋がっている機器なので、まずはエンターテイメントのコンテンツから最初にやらせていただいてます。ただ、いろいろ引き合いは来ていますね。例えば、不動産とか」

    医療現場だけではない。“不動産”での利用も考えられる。建築物のデータをVRで再生することができるのだ。

    「いまはショールームや図面でしか見れないものが、実際に立って見ることができるようになります」と会田さんは話す。

    VR技術があれば、距離感もわかるようになる。家具を置いたらどうなるか、自分の目で感じられるという。

    “ライブ配信”ができるようになった時、きっと私たちの生活は変化する

    VRで完璧な“ライブ配信”を行えるようになったとき、私たちの生活は一変するだろう。

    もしライブ配信が可能になれば、日本にいながら、たったの5000円でアメリカのスーパーボウルが観戦できるかもしれないのだ。

    「スーパーボウルの会場にいくつか全天球カメラを設置し、ライブ中継するなんてことも考えられます。A席は5000円、S席は1万円、といった具合に」

    ここからが腕の見せ所。

    しかし、本物の視界同然のライブ配信はそう簡単ではない。「どんなライブ配信も可能ですが、全天球の映像はまだまだ粗いんです。そこの画質を上げていかないと、ライブ感は出せないんじゃないかと思います」と話す。

    画質を上げていく技術とVRそのものの技術、どちらも重要だという。

    「これらが重なったときに、また相当違う体験ができるのではないかと思います。このグループで技術を共有しながら進めれば、最先端のVR技術を世に送り出していけるのではないでしょうか」