新作映画、公開初日が「金曜」に 東宝・松竹が来春から

    「プレミアムフライデーに対する協力施策の一環」

    東宝と松竹は、来年度以降、邦画の公開日を原則的に土曜日から金曜日に前倒しする方針を示した。12月半ばに正式に発表される。

    金曜夜の余暇を充実させる「プレミアムフライデーへの協力施策」、土曜日に働く社員を減らすことによる「働き方改革の一環」という側面もあるようだ。

    BuzzFeed Newsは、東宝、松竹はじめ配給各社に話を聞いた。

    「名探偵コナン」から金曜初日

    東宝は、2018年4月13日(金)公開の劇場版「名探偵コナン ゼロの執行人」を皮切りに、新作公開日を「原則金曜日」に変更。

    「大人向け、ファミリー向けを問わず、基本的に東宝が配給する映画は金曜初日に変更する」と説明している。

    現状では、ハリウッド大作をはじめとする洋画は金曜、邦画は土曜を初日にしていることが多い。「洋画・邦画で初日が混在する状況を解消することで、お客様によりわかりやすくなれば」という狙いもあるという。

    12月13日のラインナップ発表会で、公式に発表があるようだ。

    松竹「プレミアムフライデーへの協力」

    松竹もBuzzFeed Newsの取材に対し、来年度以降「金曜初日」の施策を取ることを認めた。

    「政府や経団連が推進する『プレミアムフライデー』に対して、映画配給会社としての協力施策の一環」「土日の業務を削減する『働き方改革』や、金曜初日にすることで収益増を期待する側面もある」と説明する。

    「原則、金曜初日を推進するが、ファミリー向け作品は学校がある日の公開は避けるなど、作品個別の判断になる。土曜初日がなくなるわけではありません」(松竹広報)

    現状、同社では6月15日の「空飛ぶタイヤ」の金曜公開が決まっている。どの作品から前倒しがスタートするかなど、詳細は同じく12月19日にあるラインナップ発表会で明らかにするという。

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    東映の新作映画「探偵はBARにいる3」の公開日は12月1日(金)。他社に先駆けて金曜公開にかじを切ったのだろうか。

    「同作が金曜公開になったのはたまたま。原則土曜日ということは変わりませんし、いまのところ金曜にする予定はありません」(東映広報)

    興収ランキングへの影響は?

    映画のヒット規模を端的に示すのが観客動員数と興行収入。作品の成否を占う上で重要な指標だ。

    興行通信社が媒体向けに発表する「週末映画ランキング」は週末の土日2日間の客入りを反映している。

    つまり、公開初週のデータでも、土曜公開の作品は初日と2日目、金曜公開の作品は2日目と3日目の記録が取られている。

    東宝、松竹が金曜公開を原則とする姿勢を取ることで、集計期間に変更が生じる可能性はあるかを聞くと「現段階では特に検討していません」との回答にとどまった。

    「結局、労働環境は変わらないのでは」

    劇場側は「大歓迎」する今回の変更だが(関連記事)、理由の一つとして上げられている「働き方改革」に関しては、実際に改善につながるのか疑問視する声もある。

    ある配給会社の社長は「金曜が初日になってもイベントは土日にやるはず。コンプライアンスで『働き方改革』と言っているのかもしれないが、結局、労働環境は変わらないのでは」と冷ややかな見方を示す。

    PR会社の社員も「現状でも公開日はさまざまで、金土どちらでもない祝日のこともある。金曜公開に前倒しになったところで、現場の仕事の進め方が変わることは想像しにくい」と実感を語る。

    初速や客入りに影響はあるのか、プロモーションの現場は変わるのか――実際に運用が始まってからの変化が注目される。