アメリカの首都ワシントンで1月6日(現地時間)、大統領選の結果を確定する連邦議会の上下院合同会議中に、トランプ大統領の支持者らが議事堂に進入し暴徒化した。
現地時間6日午後6時に外出禁止令が発令され、州兵と警官隊によってトランプ支持者らは議事堂から追い出された。
この事件に関して「議事堂に押し寄せた人々は、トランプ支持者ではなくアンティファ」(ANTIFA:anti-fascist、反ファシズム運動を展開する勢力)とする説が日本でもSNSを中心に広く流布している。
しかし、議事堂への侵入や建物の破壊にアンティファが関与したという情報に、根拠はない。
SNS上で「アンティファ」と名指しされた複数の乱入者が、アンティファではないことも明らかになっている。また、支持者らは数週間前から侵入を計画していた。
誤った情報は今もSNSで拡散されている。日本でも同様の情報が広まっており、計測ツールBuzzSumoによると、まとめサイト「アノニマスポスト」の該当記事はSNS上で8000回近くシェアされている(日本時間1月7日午後4時時点)。
情報源は?
陰謀論Qアノンの支持者で親トランプ派の弁護士リン・ウッド氏が、アンティファのメンバーが議事堂にいたと主張するツイートを投稿した。約5万回リツイートされたが、その後ウッド氏のアカウントは凍結されている。
ツイートには、ウッド氏がアンティファのメンバーだと主張する男性の写真が添付されていた。左の男性は「Qシャーマン」を自称するトランプ支持者で、右の男性は白人ナショナリストとして有名なマシュー・ハイムバッハ氏だ。
過去にも誤解を招くような主張をしてきた保守派ライターのポール・スペリー氏は、複数の「アンティファ暴漢」が親トランプ派のデモ隊に潜入していたとツイートした。
彼は情報源として無名の「元FBI捜査官」を引き合いに出したが、それ以外の証拠はない。
検証されたものの…日本でも大きく拡散
TwitterやSNSを中心としたこうした誤情報は、ネットユーザーや米国メディアによってリアルタイムに検証されていったものの、英語圏だけでなく日本でも拡散している。
「議会を襲撃したのはトランプ支持者ではなくアンティファ」だけでなく「バッファロー男」や、手の甲のタトゥーについてもアメリカで拡散されているものと同じ情報が流布している。
アメリカ大統領選をめぐっては、11月の投票・開票時にもネット上に大量の誤情報や、根拠のない情報、さらにはミスリードな情報が拡散した。日本国内でも「まとめサイト」やインフルエンサー、一部の政治家らを通じて広がりを見せており、注意が必要だ。
この記事は英語から翻訳・編集し、日本国内の情報を加えました。 翻訳:髙橋李佳子
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