「本当に見せちゃいけないもの以外は隠してません」田中みな実の写真集が「ほとんど修正なし」だったワケ

    60万部を突破した田中みな実さんの大ヒット写真集『Sincerely yours…』。ほとんど修正を加えないリアルな肌感の写真が話題を呼んでいます。「30代の田中みな実のリアル」を包み隠さず見せることにした背景を、本人に聞きました。

    2019年12月に、初の写真集『Sincerely yours…』(宝島社)を発売した田中みな実さん。発売2ヶ月を待たず累計発行部数60万部を突破し、今も快進撃を続けている。

    『Sincerely yours…』(宝島社)

    徹底的につくりあげたボディ、多彩で自然体な表情、大胆な露出など、さまざまな要素が口コミで大きな話題に。男女年代を問わず、幅広い世代で人気を集めている。

    驚くのが、収められた写真たちにほとんどレタッチ(修正)がされていないこと。

    32歳(撮影当時)の田中さんの自然な肌感、シワや毛穴までありのままに残っている。

    このリアルさが、読者からは「ありのままで素敵」「生命力を感じる」など高評価。プロカメラマン・鈴木心さんも「ここまで決意を感じた写真集は久々」と絶賛した。

    広告雑誌、全ての写真が肌修正がされています。でも、この写真集は。撮影前に徹底的に仕上げられた生身の肌が。きっとご本人がレタッチを断っている。沢山の後でどうにかなるでしょう?を見てきた僕には、ここまで決意を感じた写真集は本当に久々。業界の腐った当たり前に鉄槌を喰らわす傑作です。

    TBSアナウンサーからフリーに転身して5年。今や女性誌やテレビに引っ張りだこの田中さんだが、実は写真集には当初まったく興味がなかったという。

    「最初で最後」の写真集を決意したきっかけ、あえてすっぴんを選んだ理由――田中みな実さんの仕事論を聞いた。

    (※取材は2月末、都内スタジオでおこなった)

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    私なんかの写真集、売れるわけない

    ――出版社が田中さんに声をかけたのが2017年の終わり。当初は、あまり写真集に前向きでなかったと聞きました。

    そうですね、最初はまったく。「私なんかの写真集売れるわけない」って。

    「何千円も出して私だけの本を誰が買ってくれるの?」「売れなかったら私のタレント力のなさが露呈するし、出版社だって赤字を抱えることになるし」――なんて、あれこれ理由をつけてお断りしました。

    ――オファーされた側とは思えない慎重さですね。

    心配性というか完璧主義というか、私に期待をしてオファーしてくれた誰かを失望させたくないんです。

    一度お断りしたら大抵は「そうですか」で終わりなのに、編集者の方が何度も何度も足を運んでお話に来てくれました。

    そもそも、自分には特定の“ファン”みたい方はいないと思っているので……写真集ってなんだかピンとこなくて。

    ――「自分にはファンはいないと思っている」、意外な言葉です。

    もともとは会社員で何の才能もありません。アナウンス技術は身につけましたが、アイドルや女優さんとは程遠い場所にいますから。特定のファンがつくお仕事ではないという認識でした。

    この本をこれだけ多くの方が手にとってくださったのは、ひとえに素晴らしいスタッフに恵まれたからだと思っています。私はただの被写体です。

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    20代だったら、できなかった

    ――「やります」と決めたのはオファーを受けてから数カ月後とのことですが、気持ちが変わったきっかけはありますか?

    最終的には、声をかけてくれた彼女(編集者)の熱意におされました。信頼できるプロフェッショナルの皆さんと作品づくりができたら、必ず人生の糧になるって。

    その通り、年齢や経験を重ねた今このタイミングだったからこそ、素晴らしい作品になったと思います。

    20代の頃だったら、もっと自分の「こうしたい!」を優先させてしまったはず。メイクはこんな感じがいい、とか、私はこういうお洋服しか似合わないと思う、とか。

    仕事に関してもそうでしたね。「モデルさんじゃないから雑誌は出るべきじゃない」「女優さんじゃないから演技の仕事をするのは失礼だ」……冒険するのが怖くて、自分で自分の可能性を狭めていた気はします。

    ――アナウンサーという枠に縛られなくなった、それはどこかで転機があったんですか?

    フリーランスになって、メイクさんやスタイリストさんをはじめ、数多くのその道のプロフェッショナルと出会ったからですね。考え方がガラリと変わりました。

    私という人間を客観的に捉え、想ってくれる。信頼できる誰かの手に身を委ねることで、今まで知らなかった自分に出会えることを知りました。

    なので、写真集制作にあたっても、自分の好みは優先せず、プロの手に委ねてみようと思ったんです。そしたら、どんなものになるんだろう? って。

    寝起き5分ですっぴん撮影

    ――全編を通して、レタッチがほとんどなく、素肌や素顔があらわになっている点も大きな話題を呼びました。すっぴんの写真、本当にすっぴんですよね?

    はい、まじりっけなしのすっぴん、完全に寝起きです(笑)。起きて5分とかじゃないかな?

    朝起きて、カメラマンさんの部屋をコンコン。側にいたメイクさんとスタイリストさんは「うん、いってらっしゃい」で終わり。

    髪とかメイクとか、少しくらいは何かしてもらえるだろうと思っていたから「あれ?」って(笑)。

    「寝癖くらい直しておく?」ってメイクさんに聞いたら、彼女が「どうですかね?」とカメラマンさんに問いかけ、「僕はしなくていいと思いますよー。素敵です!」って。そのまま「あっ……そうですか? じゃ、撮りますか~」みたいな。

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    ――流れるように撮影が……。

    いつのまにか伊藤さんがシャッターを切っていました。

    カメラマンの伊藤彰紀さんと初めてご一緒したのは数年前、広告の撮影だったんです。“すっぴん風”がコンセプトの撮影だったので、薄く、でもそれなりにお化粧をしてもらっていたのですが、演出の方が直前で「やっぱり、全部落とせます?」と。

    眉毛すらほとんど書かず、「この顔で広告の撮影大丈夫!?」と不安になるレベルの限りなくすっぴんに近い状態でした。その不安をよそに、完成した写真が驚くほど素晴らしくて。いつか、また絶対にご一緒したいと思いました。

    「30代のみな実さんのリアルを見せてほしい」

    ――毛穴やクマ、リアルな女性としての田中みな実さんなのが新鮮でした。きれいに整えてしまうことの多い写真集では珍しいですよね。

    ふふふふ。穴が開くほどみてください。

    テレビ番組で共演した大久保佳代子さんが「下乳の下着のあとがエロい」と言ってくださって。同性にそういうところに気付いてもらえるのは嬉しかったです。

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    ――読者の方はもちろん、同業者の方からも反響が寄せられています。

    「レタッチはなるべく少なく」は2年前、最初に企画をご提案いただいた時点で編集者の方が強く希望されていたことなんです。

    「10代、20代のアイドルのように毛穴もニキビもないつるっつるの完璧な肌にしても何の面白さもないです」「30代のみな実さんのリアルを見せてほしい」と言われ、それもそうね……と。

    なので、本当に見せちゃいけないもの以外は隠していません。

    ほうれい線を薄くするとか、お腹をすこ~しへこませるとか、「やってもいいよね?」と提案したのですが、即却下。「しなくていいです!」って(笑)。

    「この写真、おなかぷにってみえるし、変なシワあるよ?」「まぁ……でも、こういう座り方したら人間の体ってここにお肉がのるし、シワ寄りますよ」「僕も同感です。自然にできるものですし、この方がいいと思います」「そっか……」みたいな。

    ――その場の空気が伝わってきました(笑)。そのさじ加減、制作チームの感覚が一致していたんですね。

    嫌がる私を説得、という感じではなくて、「みんながそう思うならそれが一番だね」って自然に思えたんです。

    それにしても……そのまますぎない!? と、若干の不安はありましたけどね。

    ――かざらなさ、自然さがまた評価されていますよね。私も一読者として「完璧にしすぎない」勇気が格好いいな、と思いました。

    何枚か“おじさん”みたいにみえる写真があるんです〜(笑)。 自分でセレクトしていたら絶対に選んでいなかったと思うし、「入れる?」って最後の最後までしつこく聞いた覚えが。

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    この笑いすぎている写真も! 私は、正直そんなに好きじゃないんです。目の大きさが左右で違うし、シワも目立つし、歯並びだってそんなにきれいじゃない。

    というか、正面からみた自分の顔が好きじゃないんです。私が選んだら1冊まるごと横顔の写真集になっていたはず(笑)。

    でも、スタッフみんなの「みな実さんのよさが出ていていいと思う、入れましょう」を聞き入れてよかったです。「この写真が一番好き」って言ってくださる読者さんがたくさんいたから。

    私が「好きじゃない」写真が入っているのが強み

    ――確かに、普段雑誌やテレビで見る田中さんとは違う表情も多くて新鮮でした。

    本当にね、楽しくて楽しくて笑顔ばっかり。こうやって改めて見返していると「何がそんなにおかしいんだろう?」って笑っちゃうくらい。

    他にもそういう、自分からみれば欠点だらけの写真が何枚もあるのですが、そのどれもに必ず魅力を見出してくれる人がいて。ほんの少し自分を好きになれました。伊藤さんの写真の中の私をね。

    欠点を魅力だと捉えてくれる人がいる。私が「好きじゃない」写真が入っているのも、この写真集の強みです。

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    ――プロにすべてを委ねる、先ほどおっしゃっていたことにつながります。

    30代、40代になってから何かを変える、欠点と向き合い、認めるって簡単じゃないですよね。

    でも、信じて思いっきりやってみたら、新たな自分に出会えました。まだ見ぬ何かが自分に潜んでいるのかも。この年齢になってもそんな風に思うことができるって、ものすごく幸せ!