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「名探偵コナン」と歩んで20年 声優・高山みなみが振り返る「私の3分の2は江戸川コナン」

「高山みなみの3分の2は江戸川コナンでできています」

昨年、声優生活30周年を迎えた高山みなみさん。「魔女の宅急便」のキキ、「忍たま乱太郎」の乱太郎など数多くのキャラクターに命を吹き込んできました。

毎年GWに公開している劇場版作品も2017年「から紅の恋歌(ラブレター)」で21作目。累計動員数450万人、興行収入58億円を超え(5月14日時点)、シリーズ最大ヒットとなった昨年の「純黒の悪夢(ナイトメア)」の63億円を超える勢いで動員を伸ばしています。

20年かけて名実ともに国民的アニメに成長し、今なおファンの裾野を広げる「名探偵コナン」。一番間近で見てきた高山さんにとって「コナン」はどんな存在か、声優という仕事とどう向き合ってきたか――。

BuzzFeed Newsは、ある日のTVシリーズのアフレコ収録を終えた高山さんにお話を聞きました。

「高山みなみの3分の2は江戸川コナン」

――劇場版も今年で21作目。プロデューサーのみなさんは「原点回帰」と語っていましたが、高山さんの中では何か特別な思いはありましたか?

「再スタート」という気持ちは、特別言葉を交わさなくとも、キャストやスタッフのあいだで共通の意識としてあった気がします。5と10の倍数の数字は、節目として毎回意識しています。

しかし、劇場版を20本以上続けるって、本当にすごいことですよね……。あまり意識してしまうとプレッシャーになるので、あくまで区切りと考えてはいましたが、あらためてありがたいことだと感じています。

昨年、声優デビューから30周年を迎えたのですが、そのうち20年以上を「名探偵コナン」と共に過ごしてきたことになるんです。

名実ともに「高山みなみの3分の2は江戸川コナンでできています」――ですね! 切っても切れない、自分の中で生きている存在です。

はじまりは「青山先生との口約束」

――コナン役に決まった時のこと、覚えていらっしゃいますか?

実は、オーディション等ではなく、青山(剛昌)先生との口約束だったんです(笑)。「剣勇伝説YAIBA」(注:青山先生の前作。高山さんはTVアニメで主人公・鉄刃を演じていた)の打ち上げだったかな。

もう「週刊少年サンデー」ではコナンの連載が始まっていて、私も読んでいたんです。先生に、「探偵もの、いいですね! おもしろいです〜」と話していたら「コナンは刃のモノローグのイメージで描いているんだよ」と言ってくださったんです。

「じゃあ、アニメ化したら、やりたいなぁ!」「やってくれる?」「もっちろん! 待ってる!」という感じで……(笑)。

でも、それから何年か後に本当に出来るとは思いませんでした。 コナンとしての産声は、サンデーのテレビCMでした。その時は蝶ネクタイが黄色でしたね。

――当時はまだアニメ化の予定はなく。

だと思います。でもCMに取り上げられたんだから、そろそろかな? と。漫画は読みながら――今もそうですが――、つい声が出ちゃったり(笑)。

内心、本当に自分のところに来るか不安はありましたが、逆に、絶対誰にも演らせない! なんて思っていました(笑)。

20年で変わったもの、変わらないもの

――20年のなかで、「江戸川コナン」への向き合い方が変わった瞬間はありますか?

変わった瞬間、と聞かれると、正直ないですね。ずっと素というか、自身みたいなものなので。

時間をかけて寄り添ってきたとか、距離が近づいたわけでもなく、最初からずっと変わらないです。

だから「コナンくんかっこいい!」なんて言われると、自分が言われているように思えて照れちゃいます(笑)。「コナンくんのどこが好きですか?」という質問も困っちゃうんです。自分の好きなところを聞かれても、答えるのって難しいですよね?

——「かわいいコナンくんとかっこいいコナンくん、どっちがお好きですか?」という質問、聞きにくくなりました(笑)。

そうそう、かわいいとかかっこいいとか、自分から引き離して考えられない(笑)。

――高山さんご自身がコナンくんに影響されている部分はありますか?

……都合の悪い時に「あれれ~」とか「わかんな~い」って(笑)。子どもっぽくごまかす技を会得しました。

最初の夢は声優ではなく…

――高山さんのキャリアをもう少し遡ってよいでしょうか。どんなきっかけでこのお仕事を始めたのですか?

声優の仕事を始めたきっかけは、入ったのが声優さんのマネージメントをしている事務所だったからです(笑)。

――つまり、もともと違うものを目指していたのでしょうか?

そうですね、最初はラジオのDJになりたかったんですよ。学生の頃、ラジオが好きで、しゃべる仕事っておもしろそうだなぁ、と。

児童劇団にいたこともあったので、演技することも好きだったのですが、自由なトークに魅力を感じていました。

とはいえ、芸能界でやっていけるかどうかはわからない。子供の頃から「警察官になりたい」という夢があったので、その夢に向かって勉強するか、不確実だけど“もしかしたら”自分に向いているかもしれない新たな夢を追うか、ずっと悩んでいました。

当時知り合ったマネージャーさんに「声の仕事をしたいんだったらうちに来れば?」と言っていただいて。それが今の事務所でした。その頃すでに警察官になるにはギリギリの年齢でしたから、声優業界でデビューできるか否か、人生どっちに転ぶんだろう、という感じでしたね。

事務所に入った時、マネージャーからは「3年間は新人として売り込むが、2年で芽が出なければ諦めた方がいい」と言われて「じゃあ、1年で結果を出そう」と、自分の中で区切りを決めました。思いっきりやってみて、芽が出なかったら諦めようと。

――デビュー作は「ミスター味っ子」(1987年)の主人公・味吉陽一でした。

新人の女性声優なので、初めはヒロイン役でオーディションに呼ばれていたのですが、どんなに頑張ってかわいらしく読んでも「もうちょっと女の子らしくしてみようか」と、違う音響監督さんに立て続けに言われてしまって。

3回連続でオーディションに落ちて「これは……ヒロインは無理なのかもしれない」と、マネージャーに相談したんです。「もしかしたら、男の子の方が向いているかもしれないです」と。

それから男の子の役を回して頂くようになり、3つめに受けたオーディションが「ミスター味っ子」でした。

――その時点で、声優のお仕事に対してはどう感じていたのでしょうか。

まだそれほど場数も踏んでいなかったのですが、オーディションを受けている時でも、すごく楽しかったんです。「ミスター味っ子」が始まってすぐに「向いてる」と確信しました。「これは天職だ」と。

年齢も性別も関係なく役を演じられる、現実にないものを演じることができる。声だけで「何にでもなれる」ことに魅力を感じました。画面の中の二次元の世界に、声の力で空間を生み出せるなんて、面白い仕事だと思いました。

目と目を合わせて“声”をつかむ

――少年少女から母親まで、多くの役を演じてきていますが、それぞれの演じ分けはどんな風に考えていらっしゃいますか?

「演じ分け」ということではないですね。そのキャラクターとして、その人生を生きよう、という感じが近いかな。顔を見た瞬間、キャラクターと一体化するんです。

初めて演じるキャラクターに対しては、役者さんによっていろいろなアプローチがあると思いますが、自分の場合、本当に出たとこ勝負。マイクに向かってセリフを読む、その瞬間にパッと出るのがそのキャラクターの“声”なんです。

オーディションの時などは、キャラクターと対面した時に、アイコンタクトで「君の声はここにあるでしょ!?」と語りかけます。「ないよ~」と言われてフラれることもありますが(笑)。

声を作るという風には考えたことないです。なので、演じ分けというよりも、キャラクターによって変わるというだけ、ですね。

――コナンくんもそうでしたか?

そうですね。CM劇場で動いた時に決まりました。何も考えずとも出てきた声です。

20年以上経っても同じですね、構える部分はまったくなく、特段苦労したり迷ったりしたことはありません。ただ、キャラクターの顏や等身がビミョーに変化すると、そこに寄っていっちゃうのですが(笑)。

環境的にも、周りの役者さんとの関係が近づいたことで変化した面はあると思います。

コナンファミリーの“羊飼い”

――キャストやスタッフを束ねるリーダーでもあると思いますが、心がけていることは?

そんな立派な役割じゃないですよ。「羊飼い」みたいな感じかな。先頭に立って「やるぞ!」というタイプではないので、後ろの方から誘導しています。

――羊飼い! そんな“座長”が現場でみなさんに接する時に、何か意識していることはありますか?

収録現場で絶対に孤立させないこと。ゲストでいらした方とも、ご挨拶以外にもお話をしますね。うちのメンバーは、みんながそうしていると思います。

画面の中でも同じところにいて、同じものを見ているのですから、一体感を大事にしたいんです。みんなで一緒にひとつのものを作る上で、とても重要なことだと思います。現場の空気は画面にあらわれるので、よい現場がよい作品にしてくれているのだと思います。

もちろん、私一人ではなく、キャストもスタッフも同じように感じているからできることなんですけどね。

――舞台挨拶やイベントを拝見していると、みなさんの仲の良さが本当に伝わってきます。

(C)2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

舞台挨拶でもキャスト陣は軽快なトークで客席を盛り上げる。上列左から宮村優子さん(遠山和葉役)、堀川りょうさん(服部平次役)、高山みなみさん(江戸川コナン役)、山崎和佳奈さん(毛利蘭役)、小山力也さん(毛利小五郎役)。下段左からゲスト声優の吉岡里帆さん、宮川大輔さんと、主題歌を担当した倉木麻衣さん

そうですねぇ、実際に仲良いですからね。 今日は出番が無かった和佳ちゃん(山崎和佳奈さん、毛利蘭役)と収録前に恐竜を観てランチしてました(笑)。

メインキャストとスタッフで、春にはお花見、秋にはバーベキュー、年に一度は旅行に行きますね。収録が何回かお休みになると、さみしくてさみしくて(笑)。本当にファミリーなんです。

劇場版やスペシャルの時は、親戚一同が集まっているような感じになりますよ。誕生日には、スタジオでお祝いもしますしね!

「やめたいと思ったこと、一度もないですね」

――「声優になりたいです、どうしたらいいですか」と質問されたら、どう答えますか?

どうしたらいいかと聞かれたら、正直お答えはできません。今現在のシステムがわからないですし、そもそも「こうしたらなれるよ」という答えを知らないので。どの業界も同じですが、平等にチャンスがあるわけではないし、プロとして生活できるかどうかは誰にもわからない。

それでも「なりたい」という人にアドバイスするなら「いろんなものを見て、いろんなものに触れるといいよ」ですね。映画も本も音楽も、学校での勉強も日常生活も、吸収したものが何も無駄にならないのがこの仕事だと思います。

声の演技をする、声で表現をする役者を声優と言うのだと思います。なので、まずはお芝居ができなければなりません。体の動きを理解できなければアクションの声をつけられないし、心の動きを理解できないと声で表現しようがない。

例えば私の場合、劇場版でスケボーアクションや走るシーンが多いと、翌日は本当に筋肉痛になるんです。湿布を貼って寝ますけど(笑)。

実際に身体は動かさなくても、脳は動きを認識しているから、身体に力が入っているし、筋肉も疲労する。声を出すだけではなく、声で動きまで表現するのが仕事なんです。そういうところがおもしろくて、大好きですね。

――高山さんの考える、声優という仕事のよさはなんですか?

定年もないですし、自分で引き際を決められるところがいいですね。それはつまり、ずっと上を目指し続けられるということです。

自分の親世代の大先輩とお仕事することもありますし、とにかく刺激が多いです。尊敬する先輩方にお会いする時は、今でも緊張しますよ。30年やってきても、ずっと気持ちはひよっこのままなんです。世代を問わず、素晴らしい皆さんと一緒にお仕事することで、まだまだだなぁ……といつでも初心に返れますね。

アニメに限らず、これからもなんでもやっていきたいです。年齢を重ねないとできない仕事もたくさんありますから。

――ここまで長く続けてこられた秘けつはなんでしょう。

楽しいから! 役を演じるのはもちろん、ナレーションもおもしろい。1本1本、日々挑戦の楽しい仕事なんです。

嫌だな、やめたいな、と思ったことはただの一度もないですね。ずっと楽しく仕事ができていて、本当に幸運だと思います。


独占インタビューに続き、Twitterで「#高山みなみさんに聞きたい」としてファンの方から募集した質問もたっぷり聞いてきました。こちらの記事も合わせてどうぞ!

【コナンファンの皆様へ】江戸川コナン役・高山みなみさんへの独占インタビューが決定!とっても貴重なチャンスなので、ファンのみなさんから質問をどしどし募集したいと思います。「#高山みなみさんに聞きたい」のハッシュタグでお寄せください。… https://t.co/PofsPMkNPz


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