この熱狂、ぜひ映画館の大きなスクリーンで体験してほしい…!
本国インドでは公開されるやいなや爆発的な大ヒットを記録し、ハリウッドでもメジャー大作を超える動員となったインド映画『RRR』がついに日本に上陸しました。
激しくダイナミックなアクション、CGをフル活用した壮大な世界観、インド映画らしい華やかなダンスシーン、そして2人の男性の熱い友情――と見どころ盛りだくさんの超大作。
とにかくテンションがブチ上がるシーンが多く、インド映画未経験の人にもぜひぜひおすすめしたい一作です。この爽快感、ぜひ味わってほしい!
100億円以上の製作費をかけたという今作は、日本でも熱狂的なファンを多数生み出したあの『バーフバリ』シリーズのS.S.ラージャマウリ監督の最新作なのですが、実は監督、家族ぐるみで作品を作り上げているのだそう。
今作も妻・ラーマ・ラージャマウリさん(以下、ラーマ)は衣装デザイナー、息子・S.S.カールティケーヤさん(以下、カールティケーヤ)はラインプロデューサーを担当しています。
超大作を家族で作るってどんな感じ…? BuzzFeedは来日したラージャマウリファミリーを直撃しました。
夕食の席で作品作りのディスカッション
――ファミリーで作品を支えていると聞いて驚きました。インドではよくあることなのでしょうか?
ラージャマウリ監督:私たちのように家族全員が同じ作品に関わるというのはそれほどあることではないですが、同じ業界や仕事に携わるのは珍しくないですね。
日本でもきっと、例えば両親が医療系の仕事をしているおうちでは子どもの頃から仕事の話を聞くことも多いだろうし、身近で、憧れるでしょう?そういう延長じゃないでしょうか。
インドは家族をとても大事にする文化なので、家族や親戚で情報を共有したり、お互い助け合ったりが当たり前です。
ファミリービジネスというわけではないですが、結果として同じ仕事につく人は多いと思います。
――作品について、夕食の席で話すこともありますか?仕事とプライベートはわけるタイプですか?
監督:もちろん、たくさん話します。妻は私のアイデアをいつも一番に聞いてくれる人ですし、撮影中もいろいろ相談します。
――そうなんですね。時にはちょっとピリピリすることも…?
ラーマ(妻、衣装デザイナー):真剣にディスカッションはするけど、喧嘩はしないですよ!
――家族として、監督として、接する時の印象は違いますか?
ラーマ:私は、彼を「映画監督」だと思って接したことは一度もありません。常に「夫」ですね。
カールティケーヤ(息子、ラインプロデューサー):私ははっきり分けています。家の中では父、外では監督。
――お父さんとしてのラージャマウリ監督はどんな人?
カールティケーヤ:父というより、お兄ちゃんみたいな存在です。明るくて気さくで。友達のような関係です。
――ではお母さんは?
カールティケーヤ:母は……「シヴァガミ」ですね。家ではあんな感じでずっと怒鳴っていますよ!(笑)
監督、ラーマ:(爆笑)
カッタッパの衣装秘話
――ラージャマウリ監督の作品は世界観が壮大で、エキストラの人数も多いですよね。衣装はどんな風に固めていくのでしょうか?
ラーマ:すべての根本は、やはり監督の頭の中にあるストーリーです。
私は、彼の思いついたことをおそらく一番はじめに聞く一人ですが、彼が語る細々した話の中からキャラクターやシーンを理解し、どんな見た目を欲しているのか想像します。
彼が語ることの中にヒントがあって、そこからスタートですね。
たまに私が完全に読み違えることもあって、リハーサルの段階になって「全然違う!」とダメ出しされたことも……。
――そんな時は?
ラーマ:やり直しです、全部ゼロから。すべてできあがっていても、監督の意向に従うしかないです!(笑)『バーフバリ』ではそれがあって大変でしたね。
監督:妻は実用性を重視しながら、見た目のよい衣装を作るのが得意なので、とても信頼しています。
激しいアクションも多いですし、いくら見た目がよくても、要求される動きを俳優ができなければ衣装として成立しません。彼女はそのあたりの機微を熟知しているんです。
『バーフバリ』では、カッタッパの衣装が、当初はもっとガッチリ固くて動きにくかったので、素材を全部変えてもらいました。
ラーマ:鎖がついている鎧のように見えますが、実はあれは布なんです。厚地の布を使って、メタルのような質感に仕上げています。
監督:この衣装のおかげで、アクションシーンも問題なく撮ることができました。
地味に苦労した「長いターバン」
――『RRR』の衣装はどうでしたか?
ラーマ:苦労したものは正直そんなにないです。
最初から監督のイメージと私のアイデアがあっていたので、大きな変更はありませんでした。
『バーフバリ』の方がすべてがチャレンジングだったなあ……(笑)
監督:シーンで言うと、あそこは時間がかかったね。
ラーマ:デリーのね!
監督:そうそう!1920年代のデリーでは、頭に巻くターバンがすごく長くて、8〜10メートルくらいあったそうなんですね。
100人以上いるキャスト全員にターバンを巻いてアクションをしてもらうのは現実的ではなかったんですけど……10人も衣装係をつけて、キャストみんなに並んでもらって一生懸命巻いていきました。
でも、それだけ人数がいると、一番後ろの人が終わる頃には最初の人のターバンがちょっと崩れちゃっているんですよ!(笑)
待ってる間に頭を触ったりするでしょ?
ラーマ:また巻き直しているうちに今度が別の人が落ちてきてる!ってね。これはもう時間がかかって仕方がありませんでした。
砂ぼこりと戦った「ナートゥ・ダンス」
――主演のお二人が劇中で披露する「ナートゥ・ナートゥ・ダンス」は12日間かけて撮影し、すべての動きをシンクロさせるという監督の指導があった、と語っていました。スタッフとしてのお二人にもそのこだわりは届いていましたか?
カールティケーヤ:主演のNTR Jr.とラーム・チャラン、2人はそれぞれ素晴らしいダンサーだけど、シンクロさせるにはあれくらい徹底してやる必要があったと思います。
やりすぎってことは全然なかったし、だからこそ素晴らしいシーンになりましたよ!
監督:ナートゥのダンスはあの人数の衣装を準備するのも一苦労でした。あとは、何しろ砂ぼこりがものすごかったんです。映画を観ていただいた方はご存知かと思いますが!
本当は室内でワルツを踊るようなドレスやタキシードですから、汚れると使えない。長丁場の撮影でしたし、衣装部はかなりピリピリしていた記憶があります。
ラーマ:そうでしたね(笑)
監督:あの一連のシーンはウクライナ・キーウで撮影したんですよね。
スタッフとキャスト、全員分の飛行機もホテルもブッキングしてあって、この期間内に絶対に撮り終わらないと……というプレッシャーはありました。
監督には「何も変わってほしくない!」
――無事に映画が完成した今だから言える、監督に次回は変えてほしいところ、直してほしいところはありますか?
カールティケーヤ:いや、むしろ何も変わってほしくない。監督の想像力と、クオリティを追求する姿勢がすべてだから。
……いや、でも、その場の思いつきでどんどん変わっていくことがよくあってそれは直してほしいかな。一度言ったことは守ってほしい(笑)
ラーマ:それは本当にそう!
――いかがでしょう?
監督:ごめん!うーん…でもちょっとそれは…難しいかも!(笑)