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少女、キャバ嬢、レズビアン、妊婦…直木賞作家が描くすべての“女の子”を救う物語

誰かの何気ない一言で、世界は変わる。

少女、ファッションモデル、キャバクラ嬢、レズビアン、妊婦……年齢も職業もさまざまな女性たちの悩みや葛藤を描いた、全8編の短編集です。

帯に躍る言葉は「あなたを救ってくれる言葉が、この世界にありますように。」

発売に先駆けておこなわれた「おまじない試読会」で西さんが作品に込めた思いを聞きました。

あなたを救う魔法の言葉

これまで長編を中心に描いてきた西さんは、今回短編にチャレンジした理由を「一生作家で居続けるために、もっと筆力を上げていかなくてはいけないと思ったから」と説明します。

それぞれの物語に共通する要素はこの3つ。

  • 主人公を女の子にしよう
  • 何か一言で世界が変わるお話にしよう
  • その「おまじない」をくれるのは、いわゆる“おじさん”にしよう


「女の子を応援したい、彼女たちの辛さや生きにくさを軽減してあげたいという気持ちは私自身の中に強くあります」

「でも、それだけにするときっとないがしろにされる部分がある。『私たちだけで頑張ろう』と完結してしまうのも、何か違うかなと思ったんです」

「忌み嫌われがちな“おじさん”という存在が、女の子を助けてくれることがあってもいいと思いました」

すべての女の子に伝えたいこと

ずっと、ずぼんを穿いていた。

裾にフリルがついたものやリボン模様のもの、いかにも女の子用の可愛らしいずぼんは嫌だった。私が穿きたかったのは、そして本当に穿いていたのは、年の離れたふたりのお兄ちゃんのお下がりだった。

最初の短編「燃やす」の主人公は、小学生の女の子。

男の子の格好をしたがる彼女と「女の子らしさ」を求めるおばあちゃん。大きくなるにつれ「可愛いね」と言われることが増えてきた彼女にある事件が起きる。

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「自分もお兄ちゃんのお古を着ていたし『北斗の拳』が好きだったし、小さい時は男になりたかった。『女の子らしくしなさい』という言葉、変わっていく周りの目。ある時に急に“女の子市場”に放り込まれた気がして悲しかったのをよく覚えています」

「スカート穿こうかな。」

ある日そう言った私を、お母さんはじっと見た。身構えたけれど、お母さんはあの「嫌な顔」をしなかった。

「おばあちゃんに見せてあげたいんだね?」

スカートは紺色のシンプルなものにした。やっぱりいかにも「女の子用」を穿くことは恥ずかしかったから。

「このお話を書きたくて、短編を書き始めたと言っていいくらい。すべての女の子に伝えたいメッセージを込めました」

「24かぁ、もう若くないけどな。」

どのストーリーも心臓がぎゅっとする、いつかどこかで味わったざらついた感覚が蘇るのですが、個人的にはキャバクラ嬢のある夜を描く「あねご」に震えた。すごかった。

17歳で初めてお酒を飲んでから、誰よりも飲んで、誰よりも酔っぱらって、誰よりも吐いてきた。“そういうキャラ”で大学時代を過ごした彼女はいつしか「あねご」と呼ばれるようになる。

新入社員歓迎飲み会で、私は早速『あねご』と呼ばれていた過去を明かした。一杯目のビールを一気に飲み干すと、みんなが拍手してくれたから、次のビールも一気に飲んだ。開始早々酔っぱらった。

『あねごもそんなんじゃ彼氏出来ないだろう!』

そう上司に言われて、『うるせぇ!』と返した。私が失礼なことを言うと、みんなが盛り上がった。

キャバクラの面接で「ブスだなぁ」と言われた。

「ひどーい! 人間だぞ!」

そうおどけると、店長が噴き出した。

「まあ、キャラ的にはありかもなぁ。」

それで決まりだった。

「24かぁ、もう若くないけどな。」

私はお笑い担当のおばさんキャラでいくことになった。

先回りして自分で自分を貶めて小さな傷をつけることで、何かもっと大きなものから身を守ろうという防衛本能(というのだろうか?)。男女問わず、身に覚えがある人は少なくないんじゃないだろうか。

ダイレクトに自分の体験と重なるわけじゃなくても、どこかで背筋がひやっとする。

お酒があって良かった。私がここにいられるのは、お酒のおかげだ。

そう言い聞かせる「あねご」が出会う「おまじない」は、正直言って、人によってはあまり救いの言葉に感じないかもしれない。

でも彼女にとっては、魔法の言葉なんだろう。大事に抱えて生きていくもの。そういう言葉、きっと誰にでもあると思う。

大人になったら傷つかないふりできる、けどね…

西さんが最後に力強く言った言葉が印象的だった。

「みんな、大人になったら上手いこと振る舞えるし、傷つかないふりできるんですよね。でも、自分のこれまでを1ページずつめくっていくと、傷ついてきたことってたっくさんある」

「おこがましいですが、そんな風に傷ついてきた人たち、今傷ついている人たちを抱きしめるようなものを書きたい、と思っていました」

発売より少し早く読んだのだけど、一気に読まないでじわじわ身体に染み込ませていきたい一冊だった。全8編、毎日寝る前にひとつずつ読み進めるのがおすすめです。

物語のどこかに自分を探しながら、私の「おまじない」はなんだろう? って考えるだけで、明日を少し強く生きられる気がする。

BuzzFeed JapanNews