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「2.5次元」からスーパースターは生まれるか? 細分化する“芸能界”のこれから

誰もが知ってる「スーパースター」はどこから生まれるか?

「2.5次元」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

2次元と3次元のあいだ、を示すこの言葉。つまり、マンガ・アニメ・ゲームを原作とした舞台作品のことを指す。役者が“2次元”のキャラクターを演じることで“3次元”にあらわれる……という意味だ。

「テニスの王子様」「NARUTO」「弱虫ペダル」などの人気漫画から、「刀剣乱舞-ONLINE-」「ダンガンロンパ」などのゲーム発作品、「セーラームーン」「忍たま乱太郎」など往年の人気コンテンツまで、「2.5次元」作品は続々と増えている。

人気作ともなると、全国数万人規模で動員し、海外公演も実施、千秋楽は全国の映画館でライブビューイングをする演目も少なくない。

出演する俳優の注目度も高く、アイドル並みのファンを抱える人も。テレビを中心とした既存の「芸能界」とは違った市場を拡大している。

対して、ネットの世界の「リアル」といえば、動画の生配信サービス。YouTuberやゲーム実況主など熱狂的なファンを抱え、配信やファンイベントで生計を立てているパフォーマーも多いが、こちらもまだ世間的な知名度は高いとは言い難い。

「2.5次元」と「配信者」……どちらも若者層を中心に人気を広げているとはいえ、まだまだ「知る人ぞ知る」ニッチな世界だ。

ミュージカル 『テニスの王子様』(以下テニミュ)、ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」など多くの2.5次元ミュージカルを手がけるネルケプランニングの松田誠会長と、“ギフティング”という形でパフォーマーを金銭的に支援できる特長を持つライブ配信サービス「SHOWROOM」を運営する前田裕二社長と考えた。

「スーパースターを生みたいとは思っていません」「努力である程度まで、必ずいける時代」「“スターの民主化”はこれからも進むはず」

エンタメ全般のこれからについて、話は広がった。


「テニミュ」が新人を起用し続ける理由

――今日は「次世代のスターはどう生まれるか?」についておふたりと考えていきたいと思います。これからの「スター」はどうやって見出され、活躍していくのか? という観点です。

ネルケプランニング 松田誠会長(以下、松田):個人的には「スター」という言葉の定義がもうずいぶん変わってきていると思います。国民全員が知ってる人だけがスターだけじゃないですよね、今は。

SHOWROOM 前田裕二社長(以下、前田):ああ、僕もまったく同じことを考えていました。価値観自体が揺らいでるのが今ですよね。

――早速核心に近い話が。順を追って聞いていきたいと思います。

――松田さんがこれまで手掛けた舞台の中でも特に存在感があるのはやはり「テニミュ」です。10年以上続く中で、斎藤工さん、城田優さん、宮野真守さんなど、多くの役者や声優を輩出しています。

ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン青学vs六角© 許斐 剛/集英社・NAS・新テニスの王子様プロジェクト © 許斐 剛/集英社・テニミュ製作委員会

2003年にスタートした「テニミュ」。キャストを入れ替えながら続いている

松田:そうですね、ここまで続くなんて、最初はまったく考えていなかったです。

初期から今までずっとキャストには新人を起用し続けているんですが、「テニミュ出身」の卒業生は約300人になりました。

――この演目で次世代の俳優を育てたいという意識が最初からあったんでしょうか。

松田:いやいや、全然! そこはもっと実際的な理由で、漫画を原作にしたものである以上「キャラクターがスター」だと思ってるからです。

役者の個性は必要ない。まだ色がない無名な新人を使った方が性質として向いている。最初から「有名人を起用してお客さんを引っ張ろう」という発想はありませんでした。漫画の世界とキャラクターを魅力的に見せることこそが重要なので。

――ネット生配信も、無名の新人がファンを獲得していくという意味では似ていますね。

前田:そうですね。プラットフォームとして大きくなる中でいわゆる有名人に使ってもらう機会も増えてきましたが、それは結果。

芸能事務所でもないですし、最初から1万人に一人のすごい才能を、誰もが知ってる大スターを生み出すことが目標ではありません。

なので、最も大事にしているのは、変わらず一般ユーザーです。彼らにチャンスをつかんでもらいたい、「エンタメで食べられる人を増やしたい」が根本にあります。当然、これまでの「スター」を発掘する価値観とはまったく異なるわけですが……。

松田:そうだよね。さっきの定義の話で言うと、今は一人で何億も稼げる存在だけが「スター」じゃないんだと思う。

努力でどこまでいける?

――無名の新人俳優や一般人となると、スタートは横並びの「素人」だと思いますが、人気を獲得していく人たちに共通点はあるんでしょうか。

前田:平たく言うと、つながっている感覚をどれだけちゃんと持てるかですよね。画面の向こうの誰かとちゃんとコミュニケーションしようと試行錯誤できること。

これは断言できるんですが、SHOWROOMでは努力で確実にある程度までいけます。頻度高く、丁寧に会話しながら配信を続けることで着実にファンはつく。従来の芸能界と違って、入り口で運や才能が必要なわけではありません。

その傾向はエンタメの世界だけでなくて、例えば、爆発的に流行ってるフリマアプリ「メルカリ」もそうですよね。ユーザーは単にものの売り買いよりもコミュニケーションを求めているんだと思います。

松田:そう、やっぱり「スター」の再定義が必要だよね。今まではテレビの中の人、手が届かない虚構の上に生きている人だったけど、もっと人間味やリアルを求める時代になっている。

前田:そうなんです。ネットから次のスターは生まれるか? という問いに答えるには、じゃあスターとは何か? を考えなければいけないと思います。

アイドルの夢をもう一度

――前田さんが「SHOWROOMから生まれたスター」として思い浮かぶユーザーはいますか。

前田:すごいなぁと思ったのは、ちづるさんという40代後半の女性です。この方は若い頃に抱いていた「アイドルになりたい」という夢をもう一度叶えようと配信活動を始めて、今や芸能事務所にも所属するまでになりました。

なんですが、彼女の熱いファンって300人くらいなんですよ。……これ、少ないって思いますよね? でもそれで食べていけているし、アイドルとして生きていきたいという夢はある意味叶ってる。ブログを見ると分かるんですけど、ファンミーティングと称してお茶会をしたり……。

松田:ファンの人たちにとってはちゃんとアイドルなんだよね。若さや可愛さとは別の軸で好きになってもらえてるのもいい。

やっぱりそれってコミュニケーションの密度なんだろうな。矢沢永吉さんやビートルズさんを生み出せるかどうかは運だけど、第2のちづるさんはこれからもどんどん生まれそうだよね。

前田:そう、インターネットが強いのはそこだと思うんですよね。数百人のファンを抱える“小宇宙”がたくさんあるイメージ。

テレビで大活躍する人気者、という従来の意味でスターではないですが、このくらいの規模でエンタメを生業にできる人がきっとどんどん増えていくと思います。みんなで盛り上げて、誰かを支える……つまり「スターの民主化」なんだと思います。

松田:「スターの民主化」! 2.5次元ミュージカルに出ている俳優も、世間的には名前は売れているわけでなくても、熱いファンがついて、稼ぎ頭になっているケースがいくつもあります。

――松田さんの考える「2.5次元ミュージカル」から生まれたスターはどなたですか。



Haruna Yamazakiに連絡する メールアドレス:haruna.yamazaki@buzzfeed.com.

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