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友達に自慢したくなる一冊 ありそうでなかった「ななめリングノート」はどう生まれた?

おしゃれで使いやすくて書きやすい。たったひとつの工夫でこんなに魅力的に。

記者の仕事をしていると、他人がどんなノートを使っているかつい気になってしまう。

何かの席で知人が使っているのを見て「え、それほしい!」となったのが、この「ななめリングノート」だった。

普通のノートと違い、リング部分があるのはすみっこの一箇所のみ。書きながら右手がリングにぶつかってしまうこともなく、片手でもめくりやすい。

立ってメモする時や、PCに向き合いながら手元でパラパラめくる時にも便利そうだ。革のような高級感のある真っ黒な見た目に金色のリングもかっこいい。

リング部分がななめなだけで、「ほしい!」という気持ちがむくむく生まれてくる。このありそうでなかったノートを生み出したのは一体……?

販売元は、印刷加工連。なんだか堅苦しい名前だ。一体どういう団体なんだろう。

若手職人のアイデアで作る文具

印刷加工連は、東京・江東区の篠原紙工の篠原慶丞さんが中心となり、デザインや印刷、製本に関わる6社が集まった“プロ集団”だ。

若手の職人同士でアイデアを出し合い、技術とデザインが融合した紙の文具を製作・販売している。

「印刷会社って、一見同じに見えても、得意分野がまったく違うんです。工場にあるのが同じ機材だったとしてても、使う側のスタンスで大きく変わる」(篠原さん)

印刷加工連が活動を始めたのは2012年の春。所属する企業組合のノベルティを若手職人3人で作ったのがきっかけだった。

ページをめくると文具が顔をのぞかせる本の形のノベルティは内外に好評。試行錯誤して作る中で、似ているようで違う各社の個性をぶつけて商品を作る楽しさを感じたと言う。

当初はノベルティ作りのための集まりだったが「きっと面白いことができる、続けよう」と決めた。仕事の合間を縫って定期的に集まり、商品のアイデアを広げ、試作づくりを重ねた。

“素人発想”と実行力

2012年9月、印刷加工連として初めてブックフェアで商品を販売した。特に反響が大きかったのは、箔押しで装飾した封筒と一筆箋だった。

細い罫線は、一本ずつが箔押し。キラリと光るラインは高級感がある。上品な見た目と「箔押しをこんな風に使うとは」という意外性が好評で「予想以上に売れた」。

本来、箔押しは表紙や背表紙にポイント的に使われることが多い。この細さでまっすぐ均等にプレスできる高い技術力を、メンバーの一社が持っていたからこそ生まれた製品だ。しかし、そもそもは「技術を生かそう」が出発点ではなかったという。

印刷加工連のメンバーの1人、北條舞さん(ALL RIGHT)の本業はグラフィックデザイナー。印刷のプロフェッショナルではないが、商品作りではそれが功を奏したという。

「この機械でどんなことができるのか、この印刷物にはどんな技術が使われているのか――各社の特徴をひとつずつ説明してもらいながら、『じゃあ、こういうのもできますか?』と会話する中で生まれた商品でした」

「現場を知らない素人として、デザインの視点を持ちながら、自由に思いつきを投げるのが私の役目。みなさん実行力があるので、安心して無茶を言えました。そもそもどこが無茶なのかわかってない」

篠原さんもこう話す。

「北條さんに『えええ〜〜??』って思わされたこと、1度や2度じゃないです(笑)。まぁ、じゃあやってみるか、と思って試してみると『これ、かっこよくない?』と盛り上がって。普段仕事をしていると、いかに先入観を持っているか気付かされました」

ななめリングノートはどう生まれた?

「ななめリングノート」も、そんな「とにかく試してみる」スタンスから生まれた商品だ。

「最初は、斜めのリングって見ないよね、かっこいいかもね、くらいで。めくりやすい、使いやすい、は試作品を触って初めてわかったことでした」(北條さん)

「実際形になってみないとわからないことってたくさんありますよね。とにかく手を動かして、次の回には何かしら試作品を持ってくるフットワークの軽さが、僕らの集まりのいいところ」(篠原さん)

2013年に発売し、「こういうノートがほしかった!」と一気に人気商品になった。商品ラインナップを拡充し、現在はメモサイズの小さなものも販売している。

国内の本屋やセレクトショップにとどまらず、欧米のバイヤーからも注文がある。「メイド・イン・ジャパンの文具として海外流通は今後広げていきたい」(篠原さん)。

商品ラインアップは、しばらくは増やす予定はない。人気商品のカラー展開や、無地以外の紙のデザインを増やすなど、ユーザーから寄せられる要望に応えていく予定だ。

“普通”のものをもっと魅力的に

篠原紙工は、父の代から続く会社で、篠原さんは2代目。「子どもの頃は継ぎたいなんて全然思ってなかった。製本なんてみんな知らない仕事、嫌だな……って」と苦笑する。

「文具として愛してもらう先に、印刷や製本にも興味を持ってもらえたらな、という思いもあります」

「この仕事の面白さは、土台となる技術は同じでも工夫やアイデア次第で新鮮なものを作れるところ。本もパンフレットも文具も、普通のものをもっと魅力的に見せる工夫が、きっとまだまだいろいろできるんです」

バズフィード・ジャパン ニュース記者

Haruna Yamazakiに連絡する メールアドレス:haruna.yamazaki@buzzfeed.com.

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