ゲイの高校生と、周りの友人たちの“正しい”だけじゃない感情。青春マンガ『向井くんはすごい!』がすごい

    誰もが完璧な善人でも悪人でもない、高校生たちの青春群像劇。作者のももせしゅうへいさんにお話を聞きました。


    高校1年生の向井くん。入学早々、悪意ある誰かによってゲイであることがクラス中にアウティングされてしまいます。

    『向井くんはすごい!』(ももせしゅうへい/KADOKAWA)

    ショックを受けて塞ぎ込むわけでも、いじめられるわけでもなく……なんとむしろクラスの人気者に!?

    「向井くんはゲイ」は周知の事実となりますが、理解や連帯を示す友人もいる一方で、どす黒い感情を抱く人もいます。

    小さな教室の中で少しずつ変わっていく彼らの関係。暴かれていく心の内。

    Web連載中からSNSで話題沸騰だった『向井くんはすごい!』の単行本(上下2巻)が刊行されました。

    KADOKAWA / Via amazon.co.jp, KADOKAWA / Via amazon.co.jp

    『向井くんはすごい!』(ももせしゅうへい)/全2巻、各定価847円(本体770円+税)

    イケメンで運動ができて頭もよくてインフルエンサー、誰もが認める「すごい」ゲイの男の子、向井くん。

    『向井くんはすごい!』(ももせしゅうへい/KADOKAWA)

    向井くんと違って、みんなにはゲイであることは隠している森谷くん。

    『向井くんはすごい!』(ももせしゅうへい/KADOKAWA)

    向井くんがゲイだと知られてしまう要因を作った意地悪ないじめっ子、寺西くん。

    『向井くんはすごい!』(ももせしゅうへい/KADOKAWA)
    「私たちが向井くんを守ってあげる!」「せっかくLGBTの友達ができた」と張り切る宮坂さん。

    口では理解を示しながら、心の底ではなかなか受け入れられない中学時代からの友人、斎藤くん。

    『向井くんはすごい!』(ももせしゅうへい/KADOKAWA)

    誰もが完璧な善人でも、一方的な悪人でもなく、すっきりきれいな大団円を迎えるわけでもない――。

    もし自分がこのクラスにいたら、どうしているだろうか? 誰と近い立場にいるだろうか?

    LGBTという言葉が普及してきた今、「多様性の尊重」「性的マイノリティの理解」なんて言葉は毎日のようにニュースで見るようになりました。

    でも、それって結局どういうことなんだっけ? かわいくて読みやすい絵柄で、根本的なところを考えさせられる作品です。

    「向井くんはすごい!」めーちゃ面白かった。考え方のアップデートってつまり成長だから青春ものと相性抜群なんだなーと。群像劇としても最高。痛々しいしみんな可愛いすぎ。NHKでドラマにしてほしいです。

    Twitter: @ssmtmt

    『向井くんはすごい!』 ゲイの高校生を取り巻くリアルな今の青春群像劇。たとえば『セックス・エデュケーション』のように海外の青春ドラマには進んだ作品がたくさんあるけど日本は……という状況に満を持してドロップされた一作で、何ならエポックメイキングだと言ってしまっても良いと思う。

    Twitter: @shintarawl

    #向井くんはすごい!、これはすばらしかった… ゲイであることをオープンにしてクラスカーストの頂点に君臨している向井くんと、その仲間たちと、クラスのモブたちの思わぬ接触を描くお話。 こんなに多種多様な動き方をする人たちを、一切時代的な陳腐さを感じさせずに操り切る作者さんの手腕に脱帽

    Twitter: @issa_freely

    作者のももせしゅうへいさんは、自身もゲイ当事者の漫画家。制作秘話を聞きました。

    「同じ『ゲイ』でも格差がある」

    ――作品の構想はどんなふうに生まれたのでしょうか?

    noteで連載していた「CUMCUM BOY」(「性」をテーマにももせさんの幼少期〜青年期の思い出を描いた作品)を見た、前任の編集者の方から「ももせさんの描く男の子同士の話を読んでみたい」と声をかけてもらったのがきっかけです。

    最初に声をかけてくれた編集の方や自分の身内、友人にプロットやネームを見せながら話を練っていきました。

    自分のしたいこと、やりたいテーマをそのまま描くというより、最初に読んでくれる編集者や友人に楽しんでもらえることを意識しました。

    『向井くんはすごい!』(ももせしゅうへい/KADOKAWA)

    「友にも恵まれ男にもモテて 俺は無敵だ…!」いわゆる“陽キャ”の向井くん

    ――誰もが完璧ではなく、それぞれの悩みがあり、裏表もある。キャラクターたちはどんなふうに作っていきましたか?

    「複数のゲイの男の子たち。しかし同じ『ゲイ』と言っても格差がある

    という題材を描く上で、それぞれの格差が浮かび上がりやすい人物配置を選びました。

    キャラクターたちには、最初からそれぞれ役割と立ち位置が決まっていて外見も性格もそこから逆算して決めています。

    キャラクターたちは勝手に動くというより『作者の僕が取り決めたルールの中で、細かく設定された登場人物たちをコントールしながら交わらせつつ物語を決めていく』という感じです。

    なのでキャラクターを作り上げるのと物語を構成していくのは、ほぼ同時進行でした。

    『向井くんはすごい!』(ももせしゅうへい/KADOKAWA)

    ――狭い教室の中で、少しずつ関係性が変わっていきますよね。簡単に仲良くなれる、和解できるわけでもなさそうだし、どうなるんだろう!? とハラハラしました。

    みんなの思いが通じ合う瞬間は美しいですよね。でも一致団結したところでそれは続くわけではなく……。

    詳しく言うとネタバレになってしまいますが、作者としてもアップダウンがある箇所は描いていて爽快でした。リアリティとフィクションとしてのちょうど良い塩梅を意識して、物語の着地点を描いてみました。

    ――「今の時代、忌避され蔑まれるのはどっちだと思う? ゲイをバラされた少年とその秘密をバラした少年」というセリフは、今の空気を切り取っていて本当にそうだな…と思いました。

    『向井くんはすごい!』(ももせしゅうへい/KADOKAWA)

    ももせさん自身「CUMCUM BOY」でゲイとしての目覚めや気づきを描かれていますが、自分が育った頃とは空気感は変わっていると感じますか?

    情報や知識は広まりつつあって、みんな優しくなってるけど、法や制度はそんなに変わってないので、空気感が変わったのかどうか、僕にはよくわからないです。

    「空気だけ変わって根っこはそのまま」って感じでしょうか。

    例えば、ゲイであることが損か得かで言ったら、僕は「損」だと思います。良し悪しで言えばハッピーなことはたくさんあっても損得で考えると社会で生活したり働いたりする上で損なことがたくさんあると感じます。

    でも、『向井くんはすごい!』のような複雑なテーマの漫画がこうやって多くの人に関心を持ってもらえたりすることは、一つの時代の変わり目なのかもしれません。僕は希望や未来を信じています。

    令和生まれの青春群像劇❗️『向井くんはすごい!』のあらすじ紹介漫画です🌈🌈🌈 ツリーに試し読みもあります🙋‍♂️

    Twitter: @busshiiiiii