高畑充希が、どんなに忙しくなっても劇場で舞台に立ち続ける理由

    映画にドラマに引っ張りだこの女優、高畑充希の原点と、これから。

    「彼女には……なんか怒られたくなるんだよね」

    犬童一心監督は、そう笑った。確かに気持ちはわかる気がする。

    まっすぐな目、キリリとした口元、ピンと伸びた背筋。高畑充希には、見ているこちらまで居住まいが正されるような高潔さがある。

    なかむらしんたろう

    8月30日公開の映画『引っ越し大名!』で高畑が演じるのは、星野源演じる片桐春之介を支える於蘭(おらん)。現実には10歳の年の差がある星野の「姉さん女房」だ。

    「普段の私は、しっかりしてないです」

    時は江戸時代、舞台は幕府に九州への国替え……つまり“引っ越し”を命じられた姫路藩。

    ⓒ2019「引っ越し大名!」製作委員会

    「引っ越し奉行」に任命された春之介(星野)を中心に、家財を減らし、人をリストラし、600キロ離れた場所に国をまるごと移す超難関プロジェクトが動き出す。

    国単位の“引っ越し”は、江戸時代に実際にあった話。史実を元に、ポップでコミカルな娯楽時代劇に仕上げている。

    ⓒ2019「引っ越し大名!」製作委員会

    高畑演じる於蘭は、前任の引っ越し奉行の娘。男たちの中で父が遺した引っ越し指南書を手に奮闘する姿は、現代の働く女性たちの姿、そしてしっかりとした高畑のイメージにも重なる。

    「普段の私は全然しっかりしてないです! 近くなればなるほどバレちゃうタイプ。監督は私に怒られたいっておっしゃっていたんですよね? 怒ってくれって言われたら怒りますよ!(笑)」

    「しっかりはしてないですが、マイペースで我慢強くはあると思います。特に仕事に関しては」

    「高畑さんのことは10代の頃から知っているんですが、最初に会った時から『怒られたい』感じがあるんですよね(笑)。厳しそうとか怖そうって意味じゃなくて、本当の意味で芯がある人だって伝わってきて、こっちも背筋が伸びる」――犬童一心監督インタビューより

    なかむらしんたろう

    かわいいだけじゃない、現代的な女性を

    強くて優しい、そしてどこか現代的な女性像は犬童監督のこだわりであり、原作小説からは大きくキャラクターが変わっている。

    かわいらしいお嬢様ではなく、猛スピードで走る馬にまたがり颯爽と城に駆けつける一幕も。圧巻の格好良さだったが、実は……。

    ⓒ2019「引っ越し大名!」製作委員会

    「あの数秒は、正直ほぼ意識がない、半分気を失っていた感じです(笑)。よく無傷で終わったなと思います」

    事前に馬に乗る練習はしていたものの、お尻を上げた前傾姿勢、競馬の騎手のような体制で走ると決まったのはなんと本番直前だったという。

    「『馬のテンションがあがっているんで、今やります!』って言われて『え、今!?』ってなりました。普段おとなしい馬なのに走る気満々で今にも川に飛び込みそうな興奮状態で」

    「『無理です』と言える空気じゃなかったですね、ジェットコースターも苦手な自分がよく頑張ったと思います(笑)。一度だけ走った、奇跡のカットです」

    “女の武器”の格好よさ

    引っ越しプロジェクトの中で、紅一点として奮闘する於蘭。

    ⓒ2019「引っ越し大名!」製作委員会

    劇中では、疲れた藩士たちを労うために「ご苦労さま」と手を握りながらおにぎりを手渡すなど、“女の武器”を使って場をあたためる場面もある。於蘭に思いを寄せる春之介が、嫉妬とともに苦言を呈するのも微笑ましい。

    ⓒ2019「引っ越し大名!」製作委員会

    「当時は今よりさらに男社会だったわけで、その中でああいう役目を背負うのは、ある意味潔くて格好いいですよね。個人的には“女の武器”をうまく使うのは賛成です。笑顔だけでその場を幸せにできたらそれは素敵なことだなって」

    「といいつつ、私自身はうまく使えないタイプですね……。今ここでニコニコしておけばみんなハッピーなのに! って時に恥ずかしくなっちゃう。かわいげがないんです」

    なかむらしんたろう

    仕事仲間として一緒に過ごすうちに恋心が芽生えていく春之介と於蘭。プロポーズの瞬間は、なんともこの2人らしい、コミカルでかわいらしいシーンに仕上がっている。

    「源さんとは一緒のシーンが多かったですが、そこは特に楽しかったです。どんな感じになるのかあまり想像せずに撮影に向かったのですが、ほとんどテイクも重ねずに、自然にいい雰囲気が生まれました」

    「2人の仲睦まじい時間って、実はあんまりないんです。於蘭は仕事中、基本プリプリ怒っているし(笑)。撮影後、源さんと『こういう幸せなシーンもっと撮りたかったね』とお話したのを覚えています」

    なかむらしんたろう

    生の舞台は「ライフワーク」

    高畑の原点は、2007年から2012年まで6年間主役を務めたミュージカル「ピーターパン」。今や映画やドラマに引っ張りだこの彼女だが、忙しい合間を縫って舞台にも立ち続ける。

    4月には、10年前と5年前にヘレン・ケラー役で出演した「奇跡の人」にアニー・サリヴァン役として戻った。来春も「ミス・サイゴン」への出演が決まっている。

    「同じ物語に違う役で出演するのは面白かったです。ヘレンは体力的にキツいですが、サリヴァンはかなり気持ちが持っていかれる役。公演中は久しぶりに、仕事以外は何も手につかない状態になりました。ほかを削ぎ落とさないと集中力が持たなくて、質素な生活をしていました」

    やり直しのきかない生の舞台。連日数時間の公演を続けるのは体力的にも過酷だ。

    なかむらしんたろう

    「ねぇ、なんであんなに大変なのにやるんでしょう? なんだろうな、好き嫌いではなく、舞台に立たない人生を想定していない、というか……。劇場に入って深呼吸すると、生きているな、って思います。ライフワークと言っていいかもしれません」

    映像の仕事を始めた当初は、「知名度を上げて、舞台にお客さんを呼べる人になりたい」が一番のモチベーションだったという。「映画やドラマをきっかけに私を知って、舞台に足を運んでくださる方も多く、それは本当にうれしいですね」。

    「舞台をやめることはまずないと思いますし、その上で映像のお仕事も楽しくなってきました。役者として挑戦したいことは、まだまだたくさんあります」

    YouTubeでこの動画を見る

    youtube.com

    8月30日公開『引っ越し大名!』


    バズフィード・ジャパン ニュース記者

    Contact Haruna Yamazaki at haruna.yamazaki@buzzfeed.com.

    Got a confidential tip? Submit it here