通販サイト「ロコンド」が、配送メニューに「急ぎません。便」を追加した。翌日着の「お急ぎ便」よりも幅がある、翌日~3日後に発送するメニューだ。
背景には、ECニーズの増加で流通量が増えた結果、配送会社への負担が大きくなっている社会的な現状がある。
このオプションを導入した経緯、そしてユーザーの反応は? BuzzFeed Newsは田中裕輔社長に狙いを聞いた。
初日注文の20%が「急ぎません」
「急ぎません。便」は、他の新配送メニューとともに、9月14日にスタート。
新メニュー自体の認知が低い中、初日注文の約20%が「急ぎません。便」だったという。
「日時指定便」と同額の290円にも関わらず「ほぼ同水準の割合」(田中社長)で選ばれた。
「初日でここまでのご注文が入ったことにかなり驚きました。みなさん優しいな、とほっこり」
配送会社だけの問題じゃない
導入のきっかけは、配送側の負担増加。ヤマト運輸は、流通量増による現場のひっ迫を社会と顧客にうったえ、配送料の値上げにも踏み切った。
「構造的に負担を軽減するためには、ヤマトさんだけでなく、我々通販サイト、そしてお客様の三者が一体にならないと根本的な解決にならないと考えました」
そのために考えられるアプローチは3つ。
- 業務量の平準化
- 再配達の抑制
- 需要に合わせたキャパシティ (配達員、トラックなど) の拡大
この中で「急ぎません。便」は1つめのアプローチ。
日によって流通量がまちまちの中、「翌日以降に回していい」と明示することで、現場の忙しさに応じて対応してもらえるようにした。発送目安に翌日~3日後と幅があるのはそのためだ。
「誰しも『今日中に全部やって』という仕事と『忙しいなら明日に回していいよ』という仕事では、精神的ストレスが違います。業務量の平準化だけでなく、精神的負担の軽減にもなれば」
あくまでロコンド側が自主的に始めたサービスで、ヤマト運輸の正式なメニューではない(が、伝票には記載される)。
「我々が始めたことで他社も追随すれば、新しいムーブメントが生まれるかもしれない、と思っています」
本当に「最速、最安」が必要なのか?
最大手Amazonのサービスをベンチマークに成長してきた通販サイト業界。多くのサービスが、少しでも追いつこうと「より早く、より安く」を目指してきた。
しかし、同じ方向に競争するあまり、結果として配送会社にさまざまな負担を強いる状況になってしまった――田中社長は現状をこう分析する。
「もちろん、お客様からすれば、安ければうれしいし、早ければうれしいはず。でも、本当は誰かに極端な負担を強いてまで、最速・最安は求めていないのでは? 企業側が勝手に過剰な競争をしているだけなんじゃないか? そんなこともずっと頭にありました」
「ロコンドはまだ創業7年のベンチャーですし、我々一社がこの大きな問題に取り組んでも『焼け石に水』かもしれません。でも、こうやって取り組みが広がって大きなムーブメントになれば、日本はもっとよくなる! とマジで思ってます」