「抱っこしすぎると抱き癖がつく」
「3歳までは保育園に入れずに母親が子育てに専念すべき」
「離乳食はやっぱり手作りで」
……一昔前は信じられていたこれらの子育て知識。実はこれ全部、今の「常識」とは違うんです。
現役父母の世代と、祖父母の世代で違うことも多い子育ての「当たり前」。生活習慣や食べ物、病気やけがへの対応など、この数十年で考え方、やり方が変わったことはたくさんあります。
同じ気持ちで子育てに携わっていても親世代は「昔の常識でやらないで!」、祖父母世代は「よかれと思って手伝ってるのに」と思いはすれ違いがち。
その世代間ギャップを柔らかく埋める読み物「子育ての先輩へ!! 子育ての今」を長野県佐久医師会と佐久市による「教えて! ドクター」プロジェクトチームが公開しました。
イラスト満載で、ジャンル別に丁寧に書かれており「わかりやすくてありがたい!」「最初の子の時に義母に読ませたかった…」などの実感のこもった反響が集まっています。
BuzzFeed Newsでは全12ページの内容を紹介するとともに、制作にあたっての思いをプロジェクトチームの一人、佐久医療センター小児科医の坂本昌彦先生に聞きました。
「子育ての先輩へ。30年で子育て環境が大きく変わっています」
はちみつや刺身、ナッツ類やブドウ…事故が起こりやすい食べ物に注意!
現役世代から祖父母に子育てを頼む時に気をつけることは?「頭ごなしに『古い』『間違っている』と声高に伝えると、価値観を否定されたと感じてしまうかも」
30年前は「頭の形がよくなる」と推奨されていたうつぶせ寝は今はNG! 乳幼児突然死症候群のリスクがあります。
授乳や離乳食の常識も変わっています。「離乳食はすべて手作りである必要はない」「取るべきなのはダシより睡眠」!
水ぼうそうにかかった方がちゃんと免疫がつく? いいえ、後遺症の危険があるのでしっかり予防接種を受けましょう。
子どもはよく熱を出すもの。日常的な発熱時の対応でも、意外に価値観が違うことも。
食物アレルギーの研究もこの数十年でずいぶん進みました。「アレルギーの発症を心配して離乳食開始を遅らせる必要はない」
Webサイトには印刷して配布できるA4版3枚セットも用意されています。
押し付けた表現にならないように
「教えて!ドクター」プロジェクトの一人、小児科医の坂本昌彦先生によると、制作のきっかけは佐久市からの提案。
4人の子どもの父親でもある佐久市長をはじめとする意見として「祖父母向けの子育て資料」があるといいのでは? という声があり、市の子育て支援課を通じて「教えて!ドクター」チームに制作依頼があったそうです。
祖父母世代と子育て世代のギャップがSNSで話題になる時、少なからずお互いに対して「今の子育てをわかってない!」「役に立ちたいと思ってるのに!」というコミュニケーションエラーが起こりがち。
お互いの思いを汲み取れるよう、押し付けているようにならないように。細かい表現までチームで何度も相談し、推敲を重ねたと言います。
「子育ての考え方は、その人の人生の価値観の一部だと思っています。『それは古い!』と言われたら事実でもモヤッとするのが人間です」
「でもやはり、今の医学的根拠に基づいた子育てに繋げたい。一方、子育て世代がそれを直接口に出すことで関係がギクシャクするんじゃないかという難しさもあります。口に出せずにモヤモヤしている方もいると思います」
「両者がお互いに参考にできる資料があれば、祖父母世代も今のやり方を抵抗感無く受け入れ、子育て世代もストレスなく子育てできるのでは、と思って制作しました。この資料が皆さんの子育ての安心に少しでもお役に立てればと願っています」