死を前にしてなお漫画の可能性に挑戦し続けた人。「孤独のグルメ」谷口ジロー、未完の遺作

    「たったひとりでもいい 何度も 何度も 本がボロボロになるまで読まれる漫画を描きたい」

    「孤独のグルメ」などで知られる、今年2月に69歳で亡くなった漫画家・谷口ジローさんの遺稿をまとめた単行本2冊が12月8日に発売される。

    (c)谷口ジロー/小学館

    「光年の森」「いざなうもの」(ともに小学館)

    横長のオールカラーという新しいスタイルで描かれた「光年の森」。ルイ・ヴィトンからの依頼によって描いた作品「トラベルブック ベネチア」をきっかけに生まれた表現だ。

    (c) パピエ

    実際の原画

    B4の原稿を横に2枚つなげることで、視界いっぱいに埋める大パノラマになる。

    (c)谷口ジロー/小学館

    「光年の森」より

    「風景が持つ感情がある。僕は風景を単なる背景としてでなく、登場人物の一人のように、感情を語らせたいんだ」――谷口氏は生前こんな風に語っていたという。

    (c) パピエ
    (c) パピエ

    当初の構想では全5章完結予定だったが、第1章を完成させ第2章の下書きを終えたところで、クライマックスを描くことなく、亡くなった。病に侵されながら、死の直前まで新作の執筆を続けていた。

    単行本では第1章と第2章の下書きの一部を収録。担当編集者の小田基行さん(ビッグコミックオリジナル)、関川夏央さん、久住昌之さん、夢枕獏さんが谷口氏に捧げる言葉を寄せている。

    「いざなうもの その壱 花火」は一転、モノクロの表現。内田百閒の連作短編集「冥土」の中の一編「花火」を原作としている。2015年夏ごろから2017年1月上旬まで断続的に執筆が続けられた。

    (c) パピエ

    大きな特徴は作画技法。これまでの作品と大きく異なり、スクリーントーンを使わず、薄墨、鉛筆、ホワイト(修正液)で主に描かれている。

    (c) パピエ

    一コマ目の背景は薄墨、花火の部分はホワイト

    「印刷技術の進化で微妙な濃淡も表現できるようになった近年。常に新しい表現を追い求める先生にとって、触発されるものがあったのではないでしょうか」(担当編集者 小田さん)

    (c) パピエ

    全30枚の予定が執筆が進められたが完成したのは20ページまで。21ページ以降は下書きの段階で掲載されている。

    日本だけでなく海外、特にフランスで絶大な人気を誇る谷口氏。12月9日〜22日に日仏会館ギャラリーで原画展「描くひと 谷口ジローの世界」が開催される。

    (c)パピエ / Via gengaten.info

    上の2作をはじめ、これまでの作品から原画約70点を展示する。

    Stephane De Sakutin / AFP=時事

    2015年、フランスで撮影された谷口氏。“Japanese manga legend”と紹介がある

    「いざなうもの」に収録された谷口氏の直筆

    (c)谷口ジロー/小学館

    たったひとりでもいい

    何度も 何度も 本がボロボロになるまで読まれる漫画を描きたい。

    あきることなく何度も開いて絵を見たくなるマンガを描きたい。

    それが私のたったひとつの小さな望み。

    そんなマンガが描けたかどうか疑問はあるが、今、頭の中で妄想している物語 その世界と絵はなんとなく見えているのだが これを ひとつの形にするのは難しく骨の折れる作業となる。

    それでも苦痛を乗り超えた楽しさがあるのもまちがいのないことだ。

    BuzzFeed JapanNews