Updated on 2020年8月5日. Posted on 2020年8月5日

    「死者が出ないのが不思議」「緊急事態宣言中も呼び出し」コロナ禍で働く官僚たちの悲鳴

    外出自粛でも議員に呼びつけられる、対面のやりとりが前提の決裁、テレワークするにもインフラに不備が――コロナ禍でも非効率な働き方が続く官僚たちのリアルな声。

    コロナ禍、官僚の働き方は変わったのか――。ワーク・ライフバランスは8月4日、厚生労働省や文部科学省、内閣府、経済産業省などで働く国家公務員480人へのアンケート結果を発表した。

    時事通信

    連日続く過重労働、なかなか進まないオンライン化など、通常時から省庁が抱える課題がよりいっそう浮き彫りになっている。

    約4割が「月100時間以上」残業

    「2020年3〜5月で最も忙しかった月の残業時間」は、回答者の約4割にあたる176人が「100時間以上」と回答。

    うち、「200〜299時間」は20人(厚生労働省9人、文部科学省5人、内閣府3人、経済産業省1人、その他省庁2人)、「300時間以上」は5人(厚生労働省4人、法務省1人)。

    過労死ラインを大幅に超える時間外労働が横行していることがわかった。

    「なぜ厚労省で死者が出ないのか不思議」

    官僚の主な仕事の一つが、大臣や与野党の議員に、政策について説明する「レク」。

    これまでは紙、対面ベースだったが、コロナ禍でオンライン化は進んだのだろうか?

    「議員とのやり取りで、官僚の働き方の質を高めるための配慮を感じる変化が起きたか」という質問には、9割以上が「そう思わない」と回答。

    「意識する議員としない議員で二極化」(内閣府30代)、「3密の状態でのレクが常であった」(財務省20代)などの声のほか、「レクに行ったらマスクを外させられた」(厚生労働省40代ほか)など、非常時でも感染防止への配慮がうかがえないことへの怒りも見られた。

    議員が配慮している様が全く見えてこない。不要不急のレクを設定してきたり、地元支援者への特例措置を求めてくるなど。(法務省30代)

    緊急事態宣言が出ていても党の会議で平然と役所を呼びつける感覚などは信じがたい。(文部科学省40代)

    緊急時に、関心が高まるのは分かるがその資料要求、レク要求がより行政を逼迫させている認識がなさ過ぎる。多少面倒でも自分でHPを調べて。FAQに載っていることを聞いてこないで。時間内に聞ききれない量の質問を通告してこないで。部下も鬱になったし私ももう来たくない。なぜ厚労省で死者が出ないのか不思議なくらいです。(厚生労働省30代)

    政策を考える時間を最も阻害したのが、議員対応であった。最も詳しい者が対応にあたることを求められると、政策の検討ができない。電話ですむ内容のために呼ばれることや、数時間待ちぼうけを余儀なくされることもあった。(厚生労働省40代)

    レクに行ったらマスクを外させられた。(厚生労働省40代、防衛省30代、など複数同趣旨のコメントあり)

    変わらない「メールよりFAX」

    「レクが電話やオンラインに移行した」「FAXからメールに移行した」の2点については、いずれも8割以上が「そう思わない(=オンライン化していない)」と回答。議員とのやり取りは、テレワークを阻む大きな壁になっているようだ。

    省内、省庁間、民間とのやりとりのほぼ全てがオンラインに移行した中で、議員レクや党の会議や国会だけが相変わらず対面を前提としたもので強い違和感を感じた。(経済産業省30代)

    メールで議員事務所に送ったものと同じ資料をFAXで再度送るように言われた。こちらとしては手間が増えるだけ。(農林水産省30代)

    時事通信

    新型コロナ対応にあたる厚生労働省の職員にカップ麺や栄養ドリンクを差し入れる自民党の岸田文雄政調会長(2月10日)

    「メール1通送るのに30分」「ハンコのために出勤」

    業務自体のテレワークは少しずつ進みつつあるが、インフラ面での課題も。

    ネットワーク環境やシステムの不備、紙の書類やハンコへの執着などが多くあがった。

    省内決裁は相変わらず紙、対面、押印。幹部がテレビ会議システムを使う気がない。(厚生労働省30代)

    省庁間で会議システムが異なり、省庁を跨いだテレワーク会議が難しい。省庁共通のシステムを導入すべき。(経済産業省30代)

    幹部にオンラインレクに反対の方がおり、その場合必ず登庁しなくてはならなかった。(財務省20代)

    契約書類等は全て紙なので、出勤しないと仕事ができなかった。(内閣府30代)

    省内職員の多くが同時にテレワークしているからか、テレワーク時の通信環境が劣悪。ひどいときは1通メールを送るのに30分近くかかる。(自宅は光回線)(総務省20代)

    私物ルータが通信速度制限を食らったので職場からルータを借りたところ、5~10分に1回動作が停止してしまって仕事にならなかった(結局自腹で別途レンタルルータを借りた)。(文部科学省20代)

    職場ではバージョンが古いスカイプしか使えず、議員がオンラインレクにしてくれても、通信が切れたり、うまくいかないことが多い。(厚生労働省40代)

    初めて平日に家族と夕食が取れた……テレワークで「家族との時間が増えた」

    業務を円滑に進める上での課題は山積みだが、テレワークを実施した回答者のうち71.4%が「家族との時間が増えた」と答えた。

    通勤時間がなくなり心身が休まった、家事分担が進んだ、家族や子どもと触れ合う時間が増えた――など健康面、生活面へのポジティブな評価が多く見られた。

    同時に、「職員の家族の犠牲の上に成り立つ霞ヶ関の働き方を再認識した」(厚生労働省30代)という声に代表されるように、普段どれだけ過酷な長時間労働を強いられているかもうかがえる結果となった。

    Kohei_hara / Getty Images

    ※イメージ写真

    明らかに心身のストレスが減り、よく眠れるようになった。(文部科学省20代)

    通勤時間にとられていた時間や昼休憩の時間を洗濯などの家事に充てることができ、夫婦間の家事分担が進んだ。(農林水産省40代)

    家族との時間が圧倒的に増えた。通常の働き方では、平日は子供の寝顔しか見ることができなかったが、離乳食や風呂など、業務時間外の触れ合いが増えた。(環境省30代)

    入省してから初めて平日に家族と夕食を取ることができた。(国土交通省20代)

    息子に「初めてお父さんと一緒に夜ご飯が食べれて嬉しい」と言われ、今まで人並みの親らしい事をしてあげられなくて、申し訳ない気分になり泣いてしまった。職員の家族の犠牲の上に成り立つ霞ヶ関の働き方を再認識した。(厚生労働省30代)

    アンケート結果まとめの全文はこちら

    (サムネイル画像:RUNSTUDIO / Getty Images)