「愛ってなんですかね?」村瀬歩&内山昂輝、デビルマン衝撃のラストを振り返る

    「演者の一人としても、視聴者としても楽しい時代が来るんじゃないかな」

    Netflixで世界配信中の「DEVILMAN Crybaby」。永井豪による漫画「デビルマン」を湯浅政明監督が“完全アニメ化”した全10話だ。

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    年始の配信から2カ月以上が経ち、国内ならず海外からも反響が続々寄せられている。

    BuzzFeed Newsは、湯浅監督に続き、主演声優の二人にインタビュー。

    飛鳥了役・村瀬歩さん、不動明役・内山昂輝さんに、アフレコ時のエピソード、衝撃的なラストをどう見たか、今後挑戦したい役などを聞いた。

    <※ 以下、ストーリーに関する重大なネタバレを含みます>

    「友人から熱い長文LINEが届きました」

    ――配信開始から数週間が経ちました。周りの反響はいかがですか?

    村瀬:一般の方はもちろんですが、業界的な注目度を特に感じますね。普段はそれほどよくお話をするわけではない先輩からも「面白かった」とわざわざ言っていただいて、会話のきっかけになっています。

    内山:配信が始まってすぐに、一般の友達から熱い長文LINEが届きました。

    意外だったのは、予想以上に多くの方が全10話を一気に見てくれていること。1カ月、2カ月経ってゆるやかに感想が出てくるのかな? と想像していたのですが全然違いましたね。

    年始早々に配信と聞いた時には「お正月休みだと話題になりにくそう」と思っていたのですが、むしろ休暇中だとイッキ見しやすかったんだな、と納得しました。

    ――実際、完成した作品をご覧になられていかがでしたか?

    内山:もう一言で「やべえなあ」。

    村瀬:ね、やばかった(笑)。普段からアフレコの時には完成イメージを持つようにしているのですが、今回は想像と違った部分も多かったです。

    もっとおどろおどろしく、怖さを煽る感じになるのかと思ったら、ポップなシーンも多くて。音楽でガラッと雰囲気が変わるので、演者としても発見がありました。

    内山:OPの曲も映像もカッコよくて、9話の特別なEDにぐっときて。一視聴者として楽しめました。

    「飛鳥了の英語」を求めて

    ――アフレコで苦労した部分はどこですか?

    村瀬:僕はやっぱり英語ですね。

    内山:そんなに難しかった? 難航している感じはなかったけど。

    村瀬:英語自体というより「飛鳥了の英語」が難しかったです。喋ることはできても、演技をするのはまた別なので。

    了くらい頭がいいと、結論まで迷わずに、抑揚なくつらつらと話すと思うのですが、英語だと語学的にアクセントがどうしてもついてしまうじゃないですか。

    英語で芝居をすること自体にまず慣れていないので、日本語ほどコントロールできないですし、自分の中で正しさの判断基準もなかったので探り探りでした。

    あと、最終回(第10話「泣き虫」)のラスト。あの“慟哭”のシーンは何度もやり直しました。細かいニュアンスを変えて10回以上は録ったんじゃないでしょうか。

    内山:何度もテイクを繰り返したところというと、僕はシレーヌ回(第5話「シレーヌ、君は美しい」)の「俺には、愛に見えた」ですかね。

    メロディのように「ここで上げてここで下げて」と音程の指示を受けながら何度も試して。100回くらいやった気がします。

    村瀬:いやいや、100回は言い過ぎでしょ(笑)。

    ――特に終盤は衝撃的なシーンが多いですが、印象に残っている箇所はありますか?

    内山:ミーコの最期は、アフレコの時点でもすごくいいシーンだなと思っていました。美樹へのアンビバレントな感情も伝えた上で、暴力的な人間たちに向かってああいう言葉をぶつける。

    感動なのかなんなのか……。見ていて感情がぐちゃぐちゃにされる感じがとても印象的でした。

    湯浅監督と以前ご一緒した「ピンポン THE ANIMATION」に出てくる「アクマ」も好きなのですが、コンプレックスを抱えたキャラクターには物語がありますよね。

    村瀬:僕は8話のたろちゃん(牧村太郎。美樹の弟)のシーンが本当にしんどかったです。悪魔になってしまった彼が、食欲を抑えられずにお母さんを食べてしまって、それをお父さんが目撃する……。

    お父さんの絞り出すような嗚咽も、人間の心を失っているはずのたろちゃんがそれに呼応して目に涙をためるのも、絵の力もあって辛いシーンだなって……。アニメーターの方の熱量も含めて印象的でした。

    衝撃のラストの裏にある普遍的なテーマ

    ――了と明の劇的な結末、お二人はどう感じましたか?

    村瀬:どうなんだろうね……。結局、明、死んじゃっているし。

    内山:最後、状況としては虚空に話しているだけだからね。悲しいよね。

    村瀬:僕は「虚しい」が強かったです。人間じゃない存在が人間と分かりあえた気がしたけど、全部失っちゃう。一瞬幸せを手にしたように見えて、つかめていない。

    内山:人間と非人間がどう生きていくか、彼らに愛や感情はあるのか。物語に流れるテーマは普遍的ですよね。SFやロボットに置き換えてもいけるな、と村瀬くんの話を聞いていて思いました。スティーヴン・スピルバーグ監督の『A.I.』とか。

    ――湯浅監督も「これは愛の物語」とおっしゃっていました。

    内山:愛ね〜……。愛って何ですかね? 俺には縁遠い言葉だなって……。

    村瀬:どうしたの、急に(笑)。愛とは何か? 悪魔に愛はあるのか? も含めて、観る人によって解釈も受け取り方も変わる作品ですよね。

    僕は「虚しい」と感じましたが、了を許せない人も、かわいそうに思う人もいると思います。

    ――村瀬さんは、今回湯浅監督とのお仕事は初めてですよね。どんな方でしたか?

    村瀬:ええと、飲み会が楽しい人(笑)。口数が多いわけではないのですが、いろいろな面がある愉快な方なんだなと感じました。

    みんなで飲みに行った時に「内山くん、こっち来なよ〜」って楽しげに呼び寄せていて、内山くんのことがめちゃくちゃ好きなんだなって……(笑)。あの時、しばらく監督と牛尾さん(音楽を担当した牛尾憲輔)に挟まれていたよね。

    内山:僕も一緒にハイテンションになりたかったんだけど、アフレコで大絶叫したあとで喉も疲れ果てていたし、あんまり飲まなかったんですよね。

    村瀬:酔ったお二人に囲まれて、酔えてなかったよね(笑)。そんな感じの、いい雰囲気の現場でした。

    ネット配信はアニメ業界を盛り上げるか?

    ――常にお仕事が絶えないお二人ですが、この作品を経て感じたことを教えてください。

    内山:まず、ネット配信作品という新しい取り組みに参加できたことがうれしかったです。

    アニメを作るのってやっぱりお金が必要ですし、今の流行とか時代の流れとか、売るための何かに作品が動かされる局面もあると思うんですよ。

    今回は「『デビルマン』という伝説的な原作がある、それに負けない面白いアニメを作ろうよ!」という純粋なクリエイティブ意識が常に現場にあった気がして、その雰囲気がすごくいいなと思っていました。

    配信されてすぐによい反響が多く届いたのは、その熱量が伝わったからでしょうし、関わった一人としてとてもうれしいです。

    村瀬:限りなく自由に作れる環境こそ、監督のセンスや作り手の熱意が問われるんだ、とは僕も感じました。今回こうして湯浅監督と最高の原作とお仕事ができてよかったです。

    内山:ネット配信にはTVアニメとまた違った可能性があると思いますし、アニメ業界全体が盛り上がってほしいです。この波が続いていけば、演者の一人としても、視聴者としても楽しい時代が来るんじゃないかな、と期待しています。

    ――これから挑戦したい役はありますか?

    村瀬:僕、演じる役に1年ごとくらいに傾向があって、デビルマンをやっている頃、ちょうど人間じゃない役や普通の生理リズムから外れている役が多かったんですよ。

    だからこう……まっとうに悩んで、まっとうに成長する、人間的な役をやりたいです(笑)。ド直球の学園ものとか恋愛ものとか、実はほとんどやったことないんですよね。1回くらいやってみたいな〜。

    内山:あ、それ僕もやりたいです(笑)。

    村瀬:やっぱやりたいよね? 人の生き死にに関わるものが多かったから、そろそろ殺伐としていないやつを……。

    ――(笑)。今後学園ものでお二人が共演する可能性があれば「あの時言っていたお仕事が!」と思うことにしますね。

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    BuzzFeed JapanNews