完全に90年代の原宿じゃん…!“あの頃”を完全再現したストリートスナップが超エモい

    ギャルと個性派がバチバチ言わせてたあの頃。

    「めちゃくちゃ90年代の原宿じゃん!」

    でんぱ組.incの新アーティスト写真が「あの頃」を感じて懐かしすぎるとネットで話題を呼んでいます。

    でんぱ組の新ビジュアルが90s原宿オマージュでFRUiTSしぐさに関しては完コピの域(もらいもの、とかリメイクしたとか6%DOKIDOKIとか卓矢文字数)で良すぢるんだけど、こんなにも早く始まった自分のリアルタイム回顧枠入りに心が追いつかない。早くGIRL LOVES BOYで髪を赤くしなきゃ、ネクタイを蝶々結

    原宿の路上で撮られた、ストリートスナップ風のカット。「ギャル」「デコラ」「ヴィヴィ子」などの当時のファッションを連想する個性的なスタイル。あるあるネタが仕込まれたアイテムクレジット……。細かいところまで凝りに凝った仕上がりになっています。

    特定の世代のハートを直撃するこのノスタルジックでエモいビジュアル、一体どんな風に作られたんですか?

    プロデューサーのもふくちゃんこと福嶋麻衣子さん、ディレクターのYGQこと山岸直人さん、スタイリストの佐野夏水さんに聞きました。

    「90年代への愛があふれすぎた結果」

    ――細部まで気合が入ったこのビジュアル、どんな経緯で生まれたんでしょうか?

    もふくちゃん:気合というか……私たちの90年代ファッションへの愛があふれすぎた結果だよね。

    YGQ:そうですね。もともと、この衣装でアー写を撮る予定なかったんですよ。ある媒体の取材用のスタイリングを決めてて、「90年代風とかよくない?」「いいね~!」くらいの軽い気持ちで考え始めたんです。

    もふくちゃん:でんぱ組.incの今年のテーマが「90年代風の近未来パラレルワールド」。ガングロギャル風のMVを撮ったあとだったのもあって90年代のリアルを思い出し始めたんです。

    YouTubeでこの動画を見る

    youtube.com

    6月26日リリース「いのちのよろこび」はガングロギャル

    YGQ:「いろんなブランドあったね、beauty:beast(ビューティービースト)とか」「卓矢エンジェルとか」ってあの頃を思い出してたら、話が盛り上がりまして。

    もふくちゃん:「スーパーラヴァーズ! 20471120(通称トゥオーフォーセブン)!ヒョーマくん!」ってどんどん記憶の蓋が開いてね。山岸さん(YGQ)と8年近く仕事してるけど、一番“通じた”感あったよ(笑)。

    2人でギャーギャー盛り上がったテンションで周りの同世代に「ね~!懐かしくない!?」って聞いたら誰も知らなくてびっくりしちゃった。「え、私たちしか知らない?」「集団幻覚?」みたいな……。

    <※beauty:beast、卓矢エンジェル、スーパーラヴァーズ、 20471120:いずれも90年代の原宿を席巻したブランド。>

    <※ヒョーマくん:「20471120」のマスコットキャラクター「HYOMA」の通称。>

    90年代のこのテイストやるなら負ける気がしないよね!エンジェラーもデコラもヴィヴィ子もギャルもみーんな愛してた…… #子丑寅卯辰巳0525

    CUTiE、Zipperに憧れ 恵比寿のみるくに高校生から潜入 FRUiTS創刊号から買い アウフォトに投稿し eggも買う 安室ちゃん好きと同時にかせきさいだぁさんもP-FUNKも好きで 90年代謳歌 雑食キッズだった私… アイドルP始めて、今年で12年。干支が一回りしました… #子丑寅卯辰巳0525

    YGQ:ネットが普及する前だし、今検索してもほとんど情報がないんですよね。90年代のメインカルチャーとして認識されてるのはギャル文化や、エイプなどの裏原系ファッションですけど、同時代のコアな原宿ストリートファッションが表に出てくることってあんまりないと思うんです。

    もふくちゃん:あの頃の渋谷と原宿って、完全に人種が違ったんだよね。歩いて20分なのに別世界。ギャルも個性派もお互いうっすらバカにしあっていて(笑)日々戦争だった。あのヒリヒリ感が好きだったな~。

    YGQ:渋谷のギャルに比べて、原宿の個性派ってジャンルが細分化していたし、ストーリーが複雑だったからうまくアーカイブされてないんじゃないかなと思っています。一言で、1つのスタイルで説明できない。

    もふくちゃん:だから、でんぱ組.incのメンバー6人にいろんな要素を散りばめられたのはすごくよかったよね。

    当時の渋谷と原宿が“水と油”だったからこそ、今回のスタイリングではあえて渋谷と原宿、今と昔の要素を混ぜてみたんです。

    ギャルやアムラーのアイコンも使ったし、当時の服装を完コピじゃなくて今っぽいアイテムも入っています。

    YGQ:2人で話が盛り上がったところで、「なっちゃん(佐野さん)は絶対わかってくれるはず!」とスタイリングをお願いしました。

    でんぱ組.incの新アー写のスタイリングをしました。ファッションに興味を持って、雑誌をボロボロになるまで読んで、見よう見まねで洋服を作ったりしていた時代の青春そのもののような洋服たちなので個人的に胸が熱いスタイリングになりました。

    ――佐野さんもこの時代のストリートカルチャーに触れていた世代なんですね。

    佐野:もちろんです、でも雑誌で見て憧れていた感じですね。どのアイテムも結構高くて、当時はなかなか手が出せなかったんです。

    YGQ:平気で10万とかしたもんね。

    佐野:そうですよね。あの頃手が届かなかった憧れを目一杯込めてスタイリングしました。

    記憶の中にある“あの頃の原宿ファッション”をベースに、山岸さんが参考に送ってくれた当時の「FRUiTS」を読んで細かい「あるある」を思い出して。「そうだ、こんな感じに前髪にピン留めてた」とか。

    細かいスタイリングは、本人のキャラクターを意識して固めていきました。

    みりんちゃん(古川未鈴)は絶対ヴィヴィアン・ウエストウッド、りさちゃん(相沢梨紗)は卓矢エンジェル着てそう、えいたそちゃん(成瀬瑛美)はデコラでしょ、とか。

    もふくちゃん:えいたそは絶対デコラ! と私も思ってた!

    みりんちゃんは亥ヴィヴィ子、りさちゃんは未エンジェラー、えいたそちゃんは酉デコラ、ピンちゃんは寅ストリート、ねもちゃんは子サイバー、ぺろりんちゃんは戌ギャルです。 キャプションも当時の雑誌を意識して考えたのでぜひみてほしいです。青春.。oO

    <※デコラ:ファッションスタイルのデコラティブの略。派手な色使いが過剰な装飾が特徴。>

    メルカリがつなぐ90年代と今

    ――それぞれの写真に不思議な既視感がありすぎるんですが、このアイテムたちまだ手に入るんだ!? と一番に思いました。

    もふくちゃん:本当にね!メルカリありがとう!

    ――まさかのメルカリ!

    佐野:メルカリには今回かなり助けられました。このアルバローザのコートとか。

    YGQ:当時ギャルだった人が売ったんだろうね。これもだよね、卓矢エンジェルの脚カバー。

    もふくちゃん:脚カバーって存在がもう懐かしすぎるよ。

    佐野:出品してくれた人に思いを馳せちゃいますよね。エンジェラー(卓矢エンジェルのファッションを愛する人のこと)だったのかな……。

    ――卓矢エンジェルって、ブランド自体はまだあるんですか?

    もふくちゃん:もちろんありますよ!海外とかでも人気ですからね。

    ――本当だ!しかもあの頃の雰囲気を残している……!

    佐野:この「20471120」のパーカーもメルカリで買ったんですけど、送られてきたのが……正直かなり汚くて(笑)。「さすがにこれは着せられない!」と思って、ロゴだけ切り取って別のパーカーに縫い付けました。

    もふくちゃん:でもそれがめちゃくちゃ当時っぽいよね!? リメイク! してたー! それがカッコよかったー!

    ――「リメイクした」のアイテムキャプションも最高ですね。

    YGQ:キャプションは、なっちゃんが全部書いてくれました。このちょっとテキトーな感じとかいいですよね。スタイリストの本来の業務を超えた、クオリティ高すぎる仕事ですね。

    もふくちゃん:「もらいもの」「家にあった」「友達の」……どれも見覚えがありすぎて。

    YGQ:なんか、当時は頑張ってない感じがカッコよかったんですよね。ふらっとなんとなく着てきたやつがすごいオシャレ~っていう。

    佐野:「友達のを借りただけでそんなオシャレなんだ! すごい!」って。

    今回のキャプションはあくまで当時憧れていた90年代の雑誌オマージュなので、フィクションも交えています。

    ――ロッキンホース バレリーナも懐かしいです。そうそう、この靴

    佐野:私、スタイリストとして独立して初めてのお給料で買ったのがロッキンホースなんです。若い時、高くて買えなかったけどずっと憧れていたこの靴がどうしてもほしくて。お洋服への情熱の原点として。

    もふくちゃん:いい話すぎない?

    YGQ:うん、この話ホント泣けるよね。

    佐野:今も自分のサイズに合うロッキンホースに出会うとつい買っちゃうんですよね。ほとんど履かずに、思い出として保存しています。今回履いてもらったのも私の私物でした。

    ロリータもパンクも隣にあった

    ――写真そのものにも絶妙に「あの頃のストスナ」感がありますよね。

    YGQ:カメラマンの田口まきさんは、当時ストリートスナップを撮っていたそうで。上のみりんちゃん(ヴィヴィ子)の写真とか「後ろに標識、入れたほうがいいですよね?」って聞かれて、「絶対入れよう!わかってるね!!」ってなりました。完全にバイブスが合ってましたね。

    ――確かに標識がある路上感、絶妙にそれっぽい……!

    もふくちゃん:デジタルとフィルム両方で撮ったけど、結局フィルム写真ばかり残しました。やっぱり色の感じが比べると全然違った。

    ――今回のスタイリング、ファン以外からもかなり反響があったんじゃないでしょうか。

    もふくちゃん:「こんなに同志たちが!」と思ってうれしかったです。あの頃インスタがあればな~!

    YGQ:それぞれ個々の思い出の中にしかなかったものを、この写真をもとに語り合ってもらえてうれしかったです。数十年温めていたものを一緒に爆発させられたような。

    佐野:当時現役でストリートにいたのって、私たちよりちょっと年上だから……きっと今40代くらいの人たちですよね。あの20471120のよれよれのパーカーの持ち主もそうかもしれないと思うとグッときますね。

    もふくちゃん:みんな、あの頃の遺産をメルカリに出品してほしい! 買うから! お金持って買えるようになった私たちが!

    ――90年代ファッションカルチャーシリーズ、今後も可能性はありますか?

    もふくちゃん:次やるならロリータ、パンク路線も取り入れたいですね。ベイビー(BABY, THE STARS SHINE BRIGHT)とかまだなかったよね。

    佐野:MILKとか、Jane Marpleとか。

    もふくちゃん:いいね、いいね。私、この撮影をやって、でんぱ組.incがやるべきスタイリングってこれなんだなって飲み込めたの。

    ただオシャレじゃなくて、そのファッション自体に背景がある、情報量の多い衣装をまとうべきなんだって。

    彼女たちを通してカルチャーや歴史を感じられるスタイリングであるべきだし、それがでんぱ組.incの本質なんだって気付きました。

    こちらの写真を使った特別ZINEがヴィレッジヴァンガードTOY’S STOREで販売中。