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あの頃、ポケモンに熱狂したあなたへ。20年目の今「サトシとピカチュウの出会い」をもう一度描く理由

大人になったポケモンマスターのみなさん。今年の映画は、観るべきです。

20作目を迎えるポケモン映画の最新作『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』が7月15日に公開された。

10歳のサトシがピカチュウと出会い、世界一のポケモンマスターを目指してマサラタウンから旅立つところから始まる。

過去のTVアニメシリーズを連想させるシーンもありながら、完全オリジナルストーリーでふたりの友情を描く。

初代ゲームソフト『ポケットモンスター 赤・緑』が発売したのは1996年2月、TVアニメがスタートしたのは1997年4月。

その後20年にわたり、数年ごとに新作ゲームがリリースされ、TVアニメと劇場版は常に新作が作られている。

世代と国境を超え、広がるポケモンワールド。

愛され続ける秘密を、『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』のエグゼクティブプロデューサーを務める、小学館の岡本順哉さん、株式会社ポケモンの宮原俊雄常務に聞いた。

“サトピカ”の出会いをもう一度「そこに手をつけるのか!」

――20周年という節目で「原点回帰」という思いがあったのでしょうか?

岡本:いや、実は意識的に仕掛けたわけではないのです。結果的に、あの頃ポケモンに夢中になった大人の皆さんにぜひ見てほしい作品になりましたが、「初期のファンのために」という思いありきで生まれた企画ではありません。

――そうなんですね。『ポケモン GO』のヒットを踏まえて、新たにポケモンに出会う人のための入門編、という狙いもあるのかと想像していました。

岡本:映画の企画は『GO』のリリース前から動いていたので直接の関係はないのですが、予備知識がなくても楽しめるストーリーなので、入門編の側面は十分にあると思います。

「サトシとピカチュウの出会い」をテーマにしたのは、湯山邦彦監督のアイデアで、むしろ僕らも「……え、それどうするんですか!?」と驚きました。

(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku (C)Pokemon (C)2017 ピカチュウプロジェクト

ピカチュウとともにマサラタウンを旅立つサトシ。TVアニメ第1話をなぞるようにストーリーは進行する

だって、すでにやっているわけですからね、一度。そこに手をつけるのか、と。でも、監督の中では、最初から構想は見えていたのだと思います。

宮原:この取材のために、あらためて当時の企画書を読み直してきたのですが、監督の中でやりたかったこと、本質的なことはぶれていないなと思いました。

湯山監督は、TVアニメの初期を作り上げ、劇場版20作すべての作品を手がけてきた人。今回の作品に対しても、リメイクでもリブートでもなくリファインという言い方をしていますが、これまでの歩みをずっと見てきたからこその、ある意味“決定版”のようなものを作りたかったのだと思います。

岡本:そうですね。「クリエイター、湯山邦彦がポケモンアニメ&映画20年目に出した回答」を僕自身見たかったですし、だからこそ、このアイデアが心に響きました。

「もう、来年で終わりかも」ブームの後の難しさ

――岡本さんが関わり始めたのは5作目『水の都の護神 ラティアスとラティオス』(2002年)とのことですが、当時はすでに「鉄板のメガヒットコンテンツ」だったのでしょうか。

岡本:客観的に見るとむしろ、当たりきってピークアウトしていたタイミング、だと思います。

当時僕は入社2年目だったのですが、初めて製作委員会に出席した時「あれ、もしかしてこれ、来年で終わるのかな」と思いました。

――え!? そうなんですか?

岡本:興行的なことも、ポケモン自体もよくわかっていなかったのですが、それでもなんとなくそんな空気を感じたんですよね……。

でも、次の年『七夜の願い星 ジラーチ』が大ヒットするんですよ(興行収入45億円)。

2002年11月にゲームの新作『ルビー・サファイア』が出たことが大きかった。『赤・緑』で初代ポケモンに出会った子たちが夢中になったように、少し下の世代の子どもたちがそこでポケモンに出会ったんです。

その時の僕の予想を遥かに超える人気、見たことがないくらい子どもたちが熱狂している様子が今も本当に心に残っていて。1年前に「もうダメかも」と頭をよぎったものに、こんなに強いパワーがあったんだ、ということを身体で知りました。ポケモンすげえな、と。

子どもたちの一番であり続けるために

――そこから10年以上。ついに20作目を迎えましたが、どこかで軌道に乗った感覚はあるのでしょうか。

宮原:いつもギリギリですよ、正直(笑)。来年があるかわからない。毎年全力です。

岡本:「長く続けられる秘けつは」とよく聞かれますが、毎回全力で走って、目の前のことだけ考えてここまできた感じなので……常に綱渡りです。

外からは「毎年それなりにヒットしてるし、ルーティーンでいいんじゃ」と見えるかもしれませんが、ポケモンの映画に関わる人にそういう考えの人、全然いないですね。常に新しいチャレンジをしていく気概は強くあると思います。

(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku (C)Pokemon (C)2017 ピカチュウプロジェクト

サトシが旅の途中で出会うソウジとマコト。リメイクではなくリファインということで、キャラクターも異なる

――今も、常にメインの層は入れ替わっているという感覚なんでしょうか?

宮原:初期はそういう部分もあったと思いますが、今は感覚的には「世代が広がっている」という印象です。

そもそもポケモン自体「子ども向け」として作ってないんですよ、最初から。あくまで目指しているのは、誰でも楽しめること。ゲームも映画も、世代を超えて楽しんでもらいたいと思っています。

2009年に『ハートゴールド・ソウルシルバー』を発売した時、1999年発売の『金・銀』のリメイクだったこともあって、小さい頃にポケモンに親しんだ大学生層がかなり遊んでくれたんですよね。

ポケモンセンター(ポケモングッズ専門店)にもその年代のお客様が多くて、そのあたりから世代の広がりはさらに強く意識するようになった気がします。

岡本:もちろん、子どもたちのあいだで「一番」ではあり続けたいですけどね。小学生の「クラスで流行ってる」って、何かひとつ圧倒的に人気があるものだと思うんですよ。

娯楽もコンテンツも増える中で、ポケモンが存在感を持ち続けるにはTVアニメや映画で何をしてあげればいいのかな、とは常に考えていますし、悩みます。

「ポケモン、やっぱすげえ!」にみんなが気付いた

――『ポケモン GO』の大ヒットで、これまでポケモンに触れたことがない人にも一気に身近な存在になったように感じました。

宮原:初代ゲームから変わらない、ポケモンの本質的な強さを改めて感じました。

クリエイターが作り出した世界観、誰でも楽しめる遊び方、そしてポケモンたちそれぞれの魅力……。現実にいそうだけどファンタジーな距離感も、スマホとの組み合わせでますます魅力的に見えましたね。

ポケモンをずっと好きでいてくれた人、子どもの頃は遊んでいたけどご無沙汰していた人、これまで知らなかった人、いろいろな立場で世界中の人に触れていただいているのはとてもすごいことだと率直に感じます。

その広がりが、これからまた新しい動きを作っていくだろうと感じた1年でした。

――私は『赤・緑』ド真ん中の世代なのでポケモンが街中にいるだけでうれしかったです。ずっと大事に思ってきたポケモンが、世代を超えてこんなにたくさんの人に愛されていることに本当に感動しました……。

岡本:その感覚、自分が子供のころにはきっと自覚なかったですよね? 景色が一変しましたよね?「みんなポケモンやってる」の衝撃って、僕が2003年に体験したものと同じだと思うんですよ。

ポケモンを愛して20〜30代になったみなさんが『GO』の登場で「ポケモン、やっぱすげえ」「なんかすごいことが起こってる」を再確認したのだとしたら、これからがすごく楽しみです。

――ファンとしてだけでなく、ゲームやアニメや映画の作り手としても、自分自身がポケモンで育ってきた世代が関わりはじめていますもんね。

岡本:そうです。ポケモンの強さを改めて知った彼らが、実感と誇りを持って、次に何をどうしていくのかなって。

僕はこの20周年のタイミングにたまたま立ち会えているわけですが、ぶっちゃけ社内の人事異動でいつどうなるかもわからない(笑)。でも、ここでこの仕事をしているうちは、お世話になったポケモンに、恩返ししたいですよね。

宮原:20年前に10歳だった子は、今や30歳の大人。子どもがいる人も少なくないかもしれません。

おじいちゃんおばあちゃんと、ポケモン世代の彼らと、自分の子ども、親子3世代で映画館に足を運んでくれる人もいるかもしれません。そんな存在に近づいているのであればうれしいですね。


Haruna Yamazakiに連絡する メールアドレス:haruna.yamazaki@buzzfeed.com.

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