法務省がウェブサイトで公開している学習教材「うんこ人権ドリル」。
小学生に人気の学習教材「うんこドリル」とコラボレーションし、子どもに人権を分かりやすく考えてほしいという意図から作成されたものだ。
一方で、「『人権』という概念を見下しているんじゃないか」「(人権ではなく)道徳の教科書みたいな内容」など、教材のコンセプトや内容に対してTwitterでは一部批判も上がった。なぜなのか。
「うんこ人権ドリル」どんな内容?

うんこドリルは2017年、小学生向けの漢字学習教材として文響社から発売された。問題や例文に「うんこ」という言葉が盛り込まれているのが特徴で、楽しく勉強できると人気に火がつき、シリーズの発行部数は累計950万部を超えている。
こうした人気を受け、国土交通省や金融庁、東京都など多くの省庁や自治体もうんこドリルと次々にコラボし、反響を呼んできた。
法務省の教材は2021年3月にウェブサイトに公開されたもの。3択の問題3つを解きながら、人権について学んでいくという内容だ。「うんこ先生」や「うんこいぬ」などのキャラクターが登場し、設問にも「うんこ」というワードが含まれている。
たとえば、1問目はこのような内容になっている。
(問題)一人だけ ちがう色のうんこを持っている子が、会話に入れてもらえないで悲しんでいるよ。こんなとき、キミならどうする?
(選択肢)仲間はずれにする。同じ色にぬってあげる。いっしょに話そうと声をかける。
その上で、「『もし自分がされたらどう思うか?』をよく考えて行動できたら、みんながなかよく、楽しく生活することができるぞい!」などと設問に対する解説されている。
法務省人権擁護局人権啓発課の担当者は、BuzzFeed Newsの取材に対して、教材の意図を「小学校低学年や幼稚園児に、人権について、分かりやすく、身近に考えてもらうきっかけにしたいと考え、人気のうんこドリルとコラボした」と話す。
Twitterでは批判の声も

一方でTwitter上では、今年12月に入り、一部で批判の声があがった。大きく2つの点からだ。
1つは、人権を「うんこ」という題材で学ぶというコンセプトに対するもの。
「人権にうんこはないだろう」「人権という重要なテーマを、人によっては嫌悪を感じる『うんこ』のキャラに語らせるところに違和感を感じる」などの意見があった。
もう1つは、教材内の設問内容に対しての指摘だ。
「うんこドリルで親しみもってもらうのは良いけど、人権が思いやりとか『みんな仲良く』って話じゃない事はおさえてほしい」「人権が『なかよく』『やさしく』『思いやり』程度の概念に矮小化されている」など、教材のアプローチには一定の評価しつつ、内容が人権教育ではなく道徳教育になっているとする指摘が見られた。
これらの指摘の中には、法務省の外局である出入国在留管理庁の収容施設内で死亡事案や入管職員の暴力を訴える動きが後を絶たないことを持ち出し、同省の人権認識を問う声もあった。
法務省によると、ウェブサイトで公開した2021年3月以降、教材に対する批判の声は届いていなかった。「削除されるのでは」という指摘もあるが、本件への対応は現時点では特に検討しておらず、「今後も子どもに対する人権啓発活動には力を入れていきたい」としている。
なお、利用規約によると、ウェブサイトに公開されている教材は、2023年3月末まで利用可能で、それ以降は削除される予定だ。「人権権啓発活動など公益性があると考えられる目的で使用する場合に限って」利用可能としており、商用目的での利用はできない。