裁判の“打ち合わせ“と称して…「ハラスメント撲滅」訴えていた弁護士がセクハラ、女性が提訴

    被告は、演劇や映画界のハラスメント問題に取り組んできた弁護士の馬奈木厳太郎氏。自身のブログでハラスメントを公表し、「卑劣な、人として許されない行為」などと謝罪していました。

    ハラスメント問題に取り組んできたはずの弁護士から、継続的なセクハラ行為を受けたーー。

    舞台俳優の知乃さん(25)が3月2日、演劇や映画界でのハラスメント問題に取り組んできた男性弁護士を相手取り、慰謝料など1100万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

    男性弁護士は、別の裁判で知乃さんの代理人を務めたことがあり、知乃さんが代表の「演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会」(なくす会)で顧問もしていた。

    知乃さんは会見で、「一生、弁護士として仕事をしてほしくない。私は悲しんでいるのではなく、非常に怒っています」と憤った。

    ハラスメントや原発訴訟に取り組んできた弁護士

    セクハラ行為を行ったとして知乃さんに訴えられた男性弁護士は、馬奈木厳太郎(まなぎ・いずたろう)氏(47)。

    馬奈木氏は、演劇や映画界のハラスメント問題に取り組んできたほか、東京電力福島第一原発事故で避難した住民らによる集団訴訟では弁護団事務長を務めた。

    なくす会では、設立当初から顧問となり、企業でハラスメント予防の講師もしていたという。

    女性の代理人弁護士としても活動

    馬奈木氏がなくす会の顧問に就任したのは、知乃さんが過去に受けたセクハラ被害がきっかけだった。

    知乃さんは2017年12月、高校生の時に演出家の男性からセクハラ被害を受けたことを公表した。その際、知人から「頼れる弁護士がいる」と、馬奈木氏を紹介されたという。

    馬奈木氏は損害賠償請求の交渉などを担い、知乃さんは18年4月、演出家の男性と和解。その後、示談金をもとになくす会を設立し、馬奈木氏が会の顧問に就任した。

    なくす会の発信がきっかけで知乃さんらが名誉毀損で提訴された時も、馬奈木氏が代理人弁護士を務めた。

    「負けたらお金払うだけじゃ済まないよ」

    しかし訴状などによると、馬奈木氏はこの頃から知乃さんに対してセクハラ行為を行っていた。

    会見した知乃さんによると、馬奈木氏は「打ち合わせ」と称して呼び出した上、体を触ったり、卑猥な言葉を言ったりしてきた。また、執拗に性的な関係を求めてきて、断るとLINEで責めたてたという。

    例えば、知乃さんは昨年2月5日、LINEで「2人だけで会って、そのたびにキスとか求められるのは嫌です。そういうことがなかった前の関係に戻りたい」と伝えた。

    すると、馬奈木氏から次のようなメッセージが大量に送られてきたという。

    「裁判だって、なんかお任せって思ってるのかな、ひょっとして」

    「負けたらお金払うだけじゃ済まないよ。会見開いて、会の活動への嫌がらせだって大見えきって、反訴予定って書面にも書いて、それで次の期日の対応を考えないといけない決断をして、折り返すって言って、何もなしはどうなんだろ」

    「環境と立場を利用された」

    弁護団は3日に開かれた会見で、馬奈木氏が知乃さんの訴訟代理人だったことや、なくす会の顧問だったことなどを利用し、セクハラをエスカレートさせたと指摘。

    知乃さんは、馬奈木氏との関係が悪化すれば、なくす会や舞台俳優の活動に悪影響が出ると感じていたため、頻繁で強引な誘いを強く拒否しにくい状況に置かれていたという。

    また、誘いを断るため、「夫に関係を疑われている」と伝えたこともあったが、馬奈木氏は「裁判も反訴とかしなくていいんじゃない?」「なくす会も僕は抜けた方がいいって話になるよ」と高圧的にメッセージを返してきた。

    知乃さんは昨年1月31日、このような状況から馬奈木氏と性行為に及んでしまったが、これによって強い精神的苦痛を受け、精神疾患が悪化した。

    知乃さんは会見で、「歳が離れていること、(馬奈木氏が)演劇界で権威を持っていたこと、私が当時『演劇界で絶対売れたい』という上昇欲求を持っていたこと。こうした環境と立場を利用されたと思っています」と述べた。

    馬奈木氏は今回の件で、一定の金額を示した上で示談を提案してきたが、事実をつまびらかにしないまま解決してしまうとハラスメントを引き起こす演劇界の構造的な問題が解決されないなどと考え、提訴を決めたという。

    また、知乃さんは馬奈木氏が「生涯弁護士として活動しないことを求めたい」として、昨年11月に所属する弁護士会に同氏の懲戒請求もしている。

    馬奈木氏「卑劣な、人として許されない行為」

    一方、馬奈木氏は3月1日、自身のブログに文書を公開し、謝罪した。

    文書によると、馬奈木氏は知乃さんに好意を抱き、相手も好意を寄せていると思い込んで、「身体に触れたり、身体の部位に言及したメッセージを送ったり、性的関係を誘うメッセージを送ったり」した。

    女性からは拒まれたが、「自分の都合のよい方向に解釈し、性的関係を迫る言動を続け、依頼を受けていた裁判の対応にまで言及して、追い込み苦しめてしまった」という。

    そして、「卑劣な、人として許されない行為」と謝罪し、「被害者の方への謝罪と、被害弁償などにより少しでも被害回復に繋がるよう、誠実に対応して参ります」とした。

    今後についても、「ハラスメント講習の講師やハラスメント問題に関する取材を受けるといった資格がありませんので、今後はこれらの活動を一切行いません」と言及した。