エクセルで男性を管理、プロフ写真はプロに依頼…アプリ恋活・婚活のリアルとは

    新たな出会いの手段として急速に浸透するマッチングアプリ。18歳~49歳の「マッチングアプリの利用経験がある」Yahoo! JAPANユーザー1000人へのアンケートを通して、アプリの恋活・婚活のリアルな実態を探りました。

    新たな出会いの手段として急速にユーザーを増やしている「マッチングアプリ」。

    小さなスマホ画面の向こう側で、どんな恋の駆け引きが繰り広げられているのか。

    BuzzFeed Japanは4月6日〜7日、Yahoo!ニュースと共同で「マッチングアプリの利用経験がある」18歳から49歳の1000人を対象に、アンケート調査を行った。

    アプリでパートナーを探したことのある人や専門家にも取材し、アプリの恋活・婚活の「リアル」を探った。

    20代の3人に1人がアプリを利用。「出会いの機会を」

    三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2021年に発表した「マッチングアプリの動向整理」によると、アプリを過去3年以内に利用したことがある20代は28.9%。およそ3人に1人にアプリが浸透していることが分かる。

    なぜアプリを使うのか。

    BuzzFeed JapanがYahoo!ニュースと実施したアンケートでアプリを使う理由を尋ねたところ、「出会いの機会を増やせるから」が最も多く、50.5%を占めた。

     続いて、「普段の生活では縁のない人と出会えるから」が28.2%、「希望する条件で相手を探せるから」が25.0%、「気軽に出会えるから」が19.5%だった。

    アプリを5年ほど使ったことがあるという女性(30)は、手軽さに魅力を感じたという。

    「社会人の自然な出会いというと職場が最も多いですが、付き合ってることを社内に知られるのが嫌だし、別れたときも面倒だから、あまり好きじゃない。合コンは調整に時間がかかるし、紹介は紹介者に多少なりとも気を遣う。最初から条件をある程度絞った上で、さくっと1対1で会えるアプリは効率がいい」

    アプリの多くで、女性は無料だ。一方で男性は有料会員にならないと「いいね」やメッセージが送れないことが多い。

    それでも、「コスパの良さ」を感じてアプリを利用している男性(33)もいる。

    「合コンだと男性が女性より多めに払うので、一晩で2万円以上飛んでしまうこともある。それに比べると安価で、好みの女性に直接アプローチできるし、リーズナブルだと思った」と話す。

    アンケートで課金額を聞いたところ、55%が「無課金」で、12.7%が「〜4千円」、9.3%が「〜1万円」だった。中には「50万」と答えた人もいた。

    「勝負」の写真、“プロ”に頼むアラサー男性も

    アプリでは、気になった相手に「いいね」を送り、相手が「いいね」を返してくれたらマッチングが成立する。

    アンケートで「いいねを多くもらったり、理想の相手を見つけたりするために、工夫したことがあるか」と尋ねたところ、最も多かったのが写真に関する工夫だった。

    「写真映えが良くなるよう、服装を変えたりカラコンをしたりする」「自分がカッコよく見える顔の角度を研究した」といった工夫の声が寄せられた。

    写真は実際に、アプリでの相手選びで最も重視されている要素だ。マッチングアプリで相手を探すときに重視することを聞くと、「見た目」が最多で53.4%だった。

    マッチングアプリ用の写真を専門に撮影をするフォトグラファーの佐藤美香子さんは、写真の重要性をこう話す。

    「アプリでは、写真で好感を持ってもらって初めて、詳しいプロフィールを見てもらえる。最終的にマッチングするかどうかはプロフィールの内容次第ですが、写真が悪いと、スタートラインに立てない」

    悪い写真の代表例は「ドアップの自撮り写真」だという。

    佐藤さんは2018年以降、約2万5千人の写真を撮影してきた。依頼者の大部分が20代後半〜30代前半の男性だ。金額は1回1万5千円。

    「依頼者の半分が、いざアプリを始めようとしたら自分の写真がなかったという人。男性は自分の写真を撮る習慣がない人が多く、手元にあったのが変顔や5年以上前に撮影した写真だけだったという人もいる。残りの半分が、現在の写真でマッチングしにくい、もらえる『いいね』を増やしたいなどという人からの依頼」

    目を大きく、髭をなくし肌を綺麗にしてほしいなど、加工の要望も多い。コロナ禍が始まってからは、その方が「盛れる」からと、マスクを着用したまま撮影する人もいるという。

    一方、価値観や趣味のアピール、メッセージの際の会話の糸口として、写真を使う人もいる。

    旅行が趣味の男性(34)は、南米のマチュピチュ遺跡やアフリカのマサイ族の村を訪れた際の写真を載せた。

    「同じく旅行好きの女性と知り合いたかったため、『どこで撮ったの?』と突っ込まれやすそうな写真をピックアップしていた」と話す。

    定型文に、エクセル表…100人以上とデートし、結婚

    晴れてマッチングが成立すると、アプリ内のメッセージやビデオ通話で相手と会話することができる。その後、気が合えば、食事やお茶などのデートへと進む。

    アンケートで「アプリを通じて実際に何人と会ったか」を尋ねたところ、最多が「1〜3人」で34.9%。続いて、「0人」で33.1%、「4〜6人」が10.7%だった。

    さらに「どの段階まで交際が発展したか」を聞いた質問では、「交際」まで進んだ人が8.6%、「婚約・結婚」した人が4.4%いた。

    アプリで出会った人と結婚した女性(30)は「アプリでは相手の一面しか知ることができないので、好きという気持ちが盛り上がりにくい。短期間でたくさんの人に会って一番悪くなかった人とまずは付き合ってみるというやり方をした」と「戦略」を語る。

    そのため、何人もの男性とのやりとりが同時並行で進んだ。

    効率よくやりとりをするため、メッセージを打つのが楽なパソコンでアプリを使い、初回のメッセージなど内容が決まっているものは「定型文」として登録した。メッセージ交わすなかで知った、出身大学や地元、職場など相手の情報は、後々メッセージを遡らなくてもいいようにエクセルシートで管理したという。

    2016年からアプリを利用し始め、100人以上と実際のデートをし、4人と付き合った。そのなかで、こんな気づきもあったという。

    「アプリでは、出会いからデートまで全員が同じ手順を踏むからこそ、それぞれの場面でどのように振る舞うかに相手の人間性が見える。メッセージの頻度や分量、初デートではどのように待ち合わせるか、お店は事前に予約するかしないかなど、一つ一つの振る舞いを観察するようにしていた」

    最終的に現在のパートナーと結婚した理由について、女性はこう話す。

    「最初のメッセージのやりとりから丁寧な人だなという印象があった。付き合ってからもその印象は変わらず、いわゆるデートテクではなく、人柄として親切で思いやりのある人なんだなと分かり、惹かれていった」

    アプリでのトラブル、「写真と実物の顔や体型などの見た目が大きく違っていた」が最多で24.9%

    こうした成功談の一方で、アプリには負の側面もある。

    アンケートで「嫌な思いをしたり、トラブルになったりした経験」を尋ねたところ、「プロフィールの写真と実物の顔や体型などの見た目が大きく違っていた」が最多で、24.9%だった。4人に1人の計算だ。

    その次に、「理想の相手となかなか出会えなかった」(18.5%)や「突然、相手からの連絡が途絶えた」(14%)が続いた。「同意しない性行為を強要された」(2.6%)、「恋人や配偶者の存在を隠していた」(3.2%)など、極めて悪質な被害に遭った人もいた。

    こうしたトラブルに対して、アプリの運営事業者も様々な対策を施している。

    大手事業者の多くが、公的な身分証明書での本人確認や、トラブルがあった際の通報システムの設置や不正ユーザーの強制退去、24時間体制でのメッセージや写真の監視などを行っている。

    国内最大手の「ペアーズ」を運営するエウレカは2020年、国内の事業者では初めて、なりすましや身分証の偽造などが見抜ける顔認証による本人確認サービス「eKYC」を導入した。

    「選べない・選ばれない」という新たな課題も

    アプリの普及は、恋活や婚活の風景を大きく変えた。

    リクルートブライダル総研の落合歩所長は「アプリの登場で出会いのハードルがぐんと下がり、結婚や家庭など価値観のすり合わせも早くなった。結婚したいが出会いがないという悩みを抱えてきた人にとって、アプリは一つのインフラになりつつある」と分析する。

    一方で、マッチングアプリの専門メディア「マッチアップ」編集長の伊藤早紀さんは、「選べる相手の選択肢が一気に増えたことで、相手の小さな欠点が目につきやすくなり、選べない・選ばれないという新たな課題も生まれている」と指摘。

    「今後の恋活・婚活サービスでは、AIなども活用し、あえて選択肢を減らしたり、その人にぴったりの人を提示したりする『恋愛のパーソナライズ化』も進化していくだろう」と話す。

    アンケートの回答者について

    回答者の内訳は、世代別では10代が1%、20代が13%、30代が32%、40代が54%で、性別では女性が37%、男性が60%だった。

    使用状況については、「現在使用していないが、過去4年以上前に使用したことがある」が26.3%と最も多く、「現在使用している」(24.2%)、「現在使用していないが、過去1年以内に使用したことがある」(15.5%)が続いた。

    使用した期間は、「覚えていない」を除くと、「1カ月未満」が最多で21.4%。続いて、「1カ月〜2カ月」が11.7%で、「2〜3カ月」が9.8%だった。

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    この記事は、BuzzFeed JapanとYahooニュースによる共同連携企画です。