「板チョコレートが年々小さくなっており、2015・18・21年で重さが違う」とする情報がSNS上で拡散している。
チョコレートの国内市場シェア93%を占める上位7社のうち、板チョコレートを販売しているのは「明治」「森永製菓」「ロッテ」だけだ。3社ともに、2015年以降に板チョコレートの重さが減っているという事実はない。
ツイートには根拠も示されていないうえ、投稿者もその後、「値段あたりのグラム数低下」との誤認の可能性を示唆している。
こうしたことから、ツイートは「誤り」であると言える。BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。
Twitterで拡散しているのは、1月16日午後の以下のようなツイート。
バレンタインの時期だから注意喚起!! ネットにある手作りチョコ菓子レシピで【板チョコ1枚】と書いてあるやつは、2015年、2018年、2021年ですべて重さが違うから気をつけろ!!! そう、年々板チョコが小さくなっているせいで!!年々板チョコが!!!小さくなっているせいで!!
板チョコレートが「年々小さくなっている」とし、2015年から3年ごとにすべて重さが違うと指摘。
菓子レシピの材料に「板チョコレート1枚」と書いてある場合は気をつけるようにと注意喚起している。
投稿は23日9時時点で、2.9万リツイート、7.3万いいねされており600万回以上表示されている。
ツイートには「素晴らしい注意喚起、ありがたい」「こんなところにまで価格上昇のしわ寄せがっっ!!」などの反応が寄せられている。
しかし、実際に重さが減っているとするメーカーやブランド名などのデータは一切示されていない。そのため、疑問を呈する声もあがっていた。
大手3社の回答は
BuzzFeed Newsは、板チョコレートの重さについて、大手菓子メーカーに取材をした。
取材対象としたメーカーは、富士経済グループの「マーケットシェアデータ(2021年)」より、チョコレートの市場シェア93%を占める上位7社のうち、板チョコレートを販売している3社。
対象とする商品は、一般的に菓子レシピなどで「板チョコレート」として使用される、ミルクチョコレート、ブラックチョコレート、ホワイトチョコレートとした。その他のフレーバーや生地にナッツやパフなどが含まれるものは除外している。
商品一覧と、現在の重さは以下の通り。
・明治 「明治ミルクチョコレート」「明治ブラックチョコレート」(50グラム)「明治ホワイトチョコレート」(40グラム)
・森永製菓 「森永ミルクチョコレート」(50グラム)
・ロッテ 「ガーナミルク」「ガーナブラック」(50グラム)「ガーナホワイト」(45グラム)
取材の結果、いずれの商品もツイートで指摘されている2015年以降、重さには変化がなかったことが明らかになった。
直近の減少は2013年。「明治ミルクチョコレート」「明治ブラックチョコレート」「森永ミルクチョコレート」「ガーナミルク」「ガーナブラック」が55グラムから50グラムに減少している。
Twitter上で拡散した「板チョコレートが年々小さくなり、2015・18・21年で重さが違う」という情報は、流通量の多くを占める国内3社の商品に関しては該当しないということだ。
この3社以外のメーカーが、板チョコレートの重さを減らしている可能性はあるが、前述の通り、チョコレートの国内シェア9割を占める上位7社のうち、板チョコレートを販売しているのはこの3社だけ。
菓子レシピなどに利用される板チョコレートの重さが総じて減っていると読み取れるような当該ツイートは誤っていると言える。
値上げはしているが…
ツイートの投稿者はその後、1枚当たりの重さではなく、「値段あたりのグラム数の低下」を誤認した可能性を示唆している。
実際、2015年以降に重さの変更はなかったが、原材料価格の高騰などから価格の引き上げは実施されている。
「板チョコレートが年々小さく」なっているわけではないものの、「グラムあたりの価格」が上がっていた事実はあるということだ。
・明治 「明治ミルクチョコレート」「明治ブラックチョコレート」「明治ホワイトチョコレート」
2015年7月、参考小売価格を100円(税別)から110円(税別)に引き上げ。22年現在はオープン価格。
・森永製菓 「森永ミルクチョコレート」
2015年7月、出荷価格を約10%引き上げ
・ロッテ 「ガーナミルク」「ガーナブラック」「ガーナホワイト」
2015年7月、想定小売価格を100円(税別)から110円(税別)に引き上げ。22年7月、出荷価格を約3~9%引き上げ
エネルギーや原材料価格の高騰を背景に、各商品の内容量の見直しや値上げのニュースも増えている。SNSなどでこうした情報が目にすると、つい鵜呑みにしてしまいがちだ。
しかし、誤っている情報や根拠がはっきりしない情報もある。拡散には注意が必要だ。
BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。
ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知しました。
また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。
- 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
- ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
- ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
- 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
- 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい
- 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
- 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である
- 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
- 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。