女性ディレクターとして男性中心のワイン業界で奮闘 彼女はそれでも仕事が好き

    好きな仕事を追求し、ポルトガルから米カリフォルニアへ

    最初に言っておくが、ワインの世界は男性中心の社会だ。

    Forgotten Man Films

    プロのソムリエから、ワイン用ぶどう農園の経営者まで、世界のワイン産業は主に男性が支配している。これはまぎれもない事実だ。カリフォルニア州にある3400以上のワイナリーを対象にしたサンタクララ大学の調査では、現在でもワインの作り手として中心的な立場にある女性は全体の1割にすぎないことがわかっている。

    こうした圧倒的に男性優位のワインの世界で、奮闘している女性たちがいる。

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    そんな女性の一人が、アナ・ディオゴ・ドレイパーさんだ。カリフォルニア州ナパバレーのアーテッサ・ワイナリーでワイン作りのディレクターを務めている。

    Ana Diogo Draper, @artesawinery via Instagram

    ポルトガル出身のドレイパーさんはカリフォルニアでワイン作りを学んだ。2人の男の子の母親でもある。

    @chiquinamerica via Instagram

    ワイナリーでの実習生からディレクターになるまでの道のりや、男性中心社会で働く女性としての思い、好きな仕事と家庭との両立などについて、ドレイパーさんに話を聞いた。

    Jenny Chang/BuzzFeed

    ワインの世界との出会いについて聞かせてください。ワイン作りをしたいと思った理由は何でしょうか?

    ドレイパーさん: 私はポルトガル出身ですが、ワイン作りの文化に囲まれて育ちました。家族や友人の家がワイン作りをしていて、毎年、ぶどうを収穫して搾るのを手伝っていたんです。

    私はこの作業が大好きで、将来はいずれ農業にかかわる仕事がしたいと思っていました。でも、具体的にどんな仕事をしたいかまでは見つけることはできていませんでした。

    大学で農業工学を学んでいたときに、これだ、と気づく転機がありました。

    ワイン醸造の授業を取っていたのですが、担当の教授が腕利きのワインの作り手で、学ぶことが多く、影響を受けました。この授業でワインづくりに夢中になりました。

    ワイン製造の基本になる体系的な考え方と、その中にある創造性に惹かれたんです。

    Ana Diogo Draper

    ワイン作りのディレクターとしての、普段のお仕事について聞かせてください。平均的な1日の仕事はどんな感じですか?

    ドレイパーさん: ワイナリーでは、ワインの試飲と分析をします。それぞれのロットを吟味して、状態を知ることで、最高のブレンドを決めることができます。

    毎日、今後のプランを立てたり、進行中のプロジェクトを進めたり、やることはたくさんあります。一方、仕事を持つ母親でもあるので、ぶどうの収穫期を除いては毎日自分で子どもを学校へ連れて行くようにもしています。

    私の仕事で大きな部分を占めるのが、ぶどう農園に足を運ぶことです。大好きな仕事です。

    アーテッサ・ワイナリーには150エーカーのぶどう畑があるのでこれが中心になりますが、他の農園のぶどうも使用しています。

    ぶどう栽培農家との共同作業は楽しいですね。個人的な交流がすごく好きですし、そこからたくさんのものを学ぶことができます。

    ワイナリーの外での仕事も結構あります。トレーニングをしたり、テイスティングの案内をしたり、同業者とのネットワーク作りをしたり。ぼんやりしている暇はありません。

    Rutherford Hill Winery

    ポルトガルのご出身で、現在は米カリフォルニアのナパバレーでお仕事をされています。ここまでのいきさつを教えてください。

    ドレイパーさん:ナパバレーへ来たのは2004年で、ラザフォード・ヒル・ワイナリーで収穫の実習生として働くために来ました。

    学びたい気持ちが強くあったので、ナパバレーに来たのは自然な流れでした。世界でも有数のワインの産地ですから。

    このときの体験はすばらしいものでした。このとき、カリフォルニアという土地が有するものすべてに惹かれたんです。好機を引き寄せるセンスや、「カリフォルニア的知性」とでもいうべき独自の哲学といったものです。

    能力があって努力すれば、ここでは何だってできます。当時、ヨーロッパのワインの世界では、女性にそれと同等のチャンスは開かれていませんでした。ワイン作りに携わる家に生まれた女性でない限りは。

    実習を終えてポルトガルへ戻りましたが、その年の終わりにラザフォード・ヒル・ワイナリーから研究室(ラボ)で働かないかと誘いがありました。そのオファーにすぐさま飛びつきました。

    2、3年くらいいるつもりでしたが、こうしてここに根を下ろして今に至ります。

    Ana Diogo Draper

    最初はワイナリーの実習生から始めて、今は別のワイナリーでワイン作りのディレクターを務めています。どのようにしてキャリアを積んできたのでしょうか。

    ドレイパーさん: ラザフォード・ヒル・ワイナリーではまず研究室に勤めて、のちにアシスタントの醸造家になりました。そこまでに8年かかりましたが、異なる立場をいくつか経験したことで、ワイン作りのさまざまな側面を知り、製造工程の全体を理解できるようになりました。

    2013年に今のアーテッサ・ワイナリーへ移って、シャルドネとピノ・ノワール作りをやらせてもらいました。スパークリングワインを手がけたり、ポルトガルでなじんでいた単独品種のワインにも取り組むようになりました。

    アルバリーニョ、テンプラニーリョ、グラシアノ、ガルナッチャなどです。2年後、ディレクターの職に就きました。

    Jenny Chang/BuzzFeed
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    サンタクララ大学の調べでは、3400以上あるカリフォルニアのワイナリーで、ワインの作り手として中心的な立場にある女性は全体の1割だそうです。それだけ男性中心の業界で、女性としてやっていくというのはどういうことなのか、お聞かせください。

    ドレイパーさん: ワイン業界で女性としてやっていくのは、他の業界で女性としてやっていくのと同じです。自分が今のポジションにふさわしい人間だと証明するには、2倍努力しなくてはいけません。

    男女による賃金格差の問題は、残念ながらワインの世界でも現実にありますし、もっと問題にされてしかるべきなのですがあまり取り上げられていません。

    女性だからということで感じる場合もある偏見は、逆に利用して、よろいに替えてしまいます。それを身にまとうことでより強くなれ、目指すものを達成しようという気持ちを強くしてくれます。

    私はとても恵まれていたと思います。芯が強くて才能のある女性に育てられて、自分は何だってできるんだということを教えてもらいました。母は仕事と母親業をみごとに両立していて、私もそうありたいと努力しています。

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    妻でありまだ小さい二人の子の母親でもあります。家庭での役割と、タフな仕事とのバランスをどうとっていますか?

    ドレイパーさん:母親でいることは大切ですし大好きですが、ワインの作り手でいることも同じく大切で大好きです。

    ディレクターの立場になったのは、次男の妊娠7か月のときでした。子どもたちはごく小さいときから私にくっついてぶどう畑やワイナリーに来ています。

    夫もワインの仕事をしていてとても協力的で、夫婦でチームとしてとてもうまくまわっています。

    先日、学校の先生から、息子が私の仕事についてとても誇らしげに話していたと聞きました。教室のみんなの前で「僕のお母さんはワインを作っていて、たくさんの人を幸せにしています」と言ったそうです。

    実に誇らしく思えた瞬間でした。息子たちには、男でも女でも、家族、仕事、友人、コミュニティをすべて大切にすることはできるんだとわかる人になってほしい、そう思って育てているつもりです。

    c/o Ana Diogo Draper

    ワインとぶどう栽培の世界で働きたいと考えている若い女性に向けて、アドバイスをお願いします。

    ドレイパーさん: いくつかあります。

    1)ぶどうの収穫の時期に自分の手を汚して収穫作業をしてみること。きらびやかな仕事ではありませんが、ワインやぶどう栽培の世界に入るなら、それから30年は切っても切り離せない仕事になります。だから好きになった方がいいですよね。

    2)自分にとって情熱を注ぐ対象はワインだと気づいたら、とにかく粘り強く続けて、一生懸命にやって、あきらめないこと。自分を信じてください。男性も女性も、同じ夢を持つ人はたくさんいます。でもそうした確固とした意志を持っていることは計り知れない強みになります。

    3)とにかくたくさん試飲すること。新しい品種を果敢に試してみる。それからまた試飲する。

    4)好奇心を持つこと。ワインやぶどう栽培、世界のワイン産地について、調べ、学ぶこと。

    5)できれば世界を旅してみること。世界各地をぶどうの収穫時期に訪ねてみるとたくさんのことを学べます。同時にとても楽しいですし。

    6)最後に、自分の直感に従うこと。だいたいの場合、それが正しい方向につながると思います。

    Jenny Chang/BuzzFeed

    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:石垣賀子 / 編集:BuzzFeed Japan