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「自分よりも小さい子が、ひどい扱いを受けている」。小学6年生がクラファンを始めた理由

ある小学生が、難民キャンプで暮らすロヒンギャの人びとのために、募金活動を始めました。遠い国の彼らに届けたい思いを、取材しました。

小学6年生が、クラウドファンディングを立ち上げた。

8月25日。群馬県館林市の、ある小学生がプロジェクトを始めた。

僕たち私たちにできること」。ミャンマーの故郷を追われ、隣国バングラデシュにある難民キャンプで暮らすロヒンギャの人びとのために、募金活動を始めたのだ。

小学6年生の彼はなぜ、日本から遠く離れた地の人々のために、活動を始めたのか。

小学6年生の鈴木聡真さん(12)は、小学校入学を機に、家族と共に東京から群馬県の館林市に引っ越してきた。

「クラスメートは、サッカーが上手い子や頭いい子が、いっぱいいます。クラスには、外国人の子も2人います」

群馬県館林市は、人口の3.4%(2020年8月時点)が外国籍。外国人が多く住む市としても知られる。

その中には、ロヒンギャの人々も含まれる。ロヒンギャとは、ミャンマーの少数民族の一つ。ミャンマーの多数派は仏教徒だ。一方、ロヒンギャはイスラム教を信仰していることもあり、長らく差別の対象とされてきた。政府はロヒンギャの人々にミャンマーの国籍を認めておらず、多くは無国籍となっている。

館林市に暮らすロヒンギャの多くは、90年代や2000年初頭にミャンマーでの迫害から逃れ、日本に難民として渡った人々と、その家族だ。その数は約260人。日本にいるロヒンギャの総数の9割近くに及ぶ。

「(館林市に)外国人がいるなとは思ってたけど、以前は気にしてませんでした。たまに見かけると気付くくらいで。『あの人、○○人だな』とか気にしたことはなかったです」

同じ街に暮らす、ロヒンギャの人との出会い。

今年6月に初めて「ロヒンギャ」という言葉を知った鈴木さんは、その現状を知るため、館林に住むロヒンギャのアウンティンさんという男性を訪ねた。

アウンティンさんは館林に暮らし、バングラデシュにある難民キャンプの子ども達のために、学校を運営している。鈴木さんは、アウンティンさんからキャンプ内の状況を聞いた。

「今、ロヒンギャの難民キャンプで何が起こっているのかを聞きました。困っていることとか、なんで学校を作ったのかとか。アウンティンさんが、(動画で)キャンプ内の学校を見せてくれたんですよ。僕たちが通っているような学校じゃなくて、パネルのようなものを貼り付けて作ったような学校で、驚きました」

「自分よりも小さい子が、ひどい扱いを受けている」

「(動画内では)自分よりも小さい子が、ひどい扱いを受けていて。服を着ていない子とかもいて。なんか、『自分がめちゃくちゃいい生活を送っているんだな』という気持ちになりました」

キャンプ内の子ども達を映した動画を見た鈴木さんは、今まで当たり前だと思っていた自分の周りの環境が、恵まれていたのだと自覚するようになった。そして、もし自分がロヒンギャと同じ状況だったらと、想像するようになったという。

「もし自分がロヒンギャの人たちと同じ、ひどい扱いを受けていたら、すぐ逃げていたと思います。動画で、『家族が死んじゃった』とか話しているのを見て、これは自分だけの問題じゃないし、みんなの問題だと思って助けたいと思いました」

アウンティンさんとの出会いをきっかけに、さらにロヒンギャについて知りたいと感じた鈴木さんは、YouTubeや新聞記事、講演会への参加などを通じて知識を得ていった。

「(問題を知っていくうちに)自分が持っていた疑問が少し解けてきて。最初に何も知らない状態で動画を見たときよりも、もっと難民のことが可哀想になりました」

宿題をしていて見つけた、「僕たち私たちにできること」

「みんなに知ってもらうことで、難民っていうのを助ける人が増えるといいなと思って。力を借りたいなって思いました」

そんな時、鈴木さんは「100歳の男性が募金で44億円を集めた」という内容の新聞記事を見つけたという。新聞の中から、気になるニュースを集めて感想を書くという宿題をしていた時だった。

「これなら、僕にもできるかもしれないと思いました」

クラウドファンディング開始日、8月25日に込められた思い。

8月25日。この日をクラウドファンディングの開始日に設定したのにも、理由があった。

3年前のこの日は、多くのロヒンギャが国外に逃れるきっかけとなった、武力衝突が起きた日なのだ。

ミャンマーのラカイン州で起きたこの衝突をきっかけに、「民族浄化」とも称される、ミャンマー軍によるロヒンギャ掃討作戦が開始された。現在も、約90万人が国外避難民として周辺国に逃れている。

「自分たちが頑張ったとしても、難民全員は助けられないじゃないですか。だから自分たちだけじゃなくて、助けたいと思っている世の中の人の力を借りたいなと思って。あと(問題について)みんなに知ってもらうことで、もっと難民を助ける人が増えるといいなと思いました」

夢はプロサッカー選手。「差別をしないで、人を助けられるような人になりたい」

鈴木さんの将来の夢は、プロサッカー選手になることだという。

「そこまで上手くないですけど。1年半くらいやってます」

はにかんだ笑顔を浮かべながら、プロサッカー選手になりたい理由を話した。

「プロサッカー選手になったら、著名人にも(支援を)呼びかけられるし、ファンが同じように助けてくれるかもしれない。お金持ちになったとしても、差別とかをしないで、人を助けられる人になりたいです」

クラウドファンディングの目標金額は100,000円。

なお、鈴木さん自身は小学生ということもあり、金銭の管理や法的責任を伴うことは、保護者が代行している。

集められた寄付金はアウンティンさんを介して現地に送られ、キャンプ内の学校で必要な文房具などの購入にあてられる。

「難民の人たちは、ここにいたくているわけじゃないし、ここに生まれたくて生まれたわけじゃないから。早く助けてあげたいです」

クラウドファンディングへの協力はこちらから。