亡くなった大切な人との記憶。忘れるのは恐いこと?
身近な人を亡くし、その人の記憶が薄れてしまうことに恐怖を抱いたことのある人もいるのではないだろうか。
そんな死との向き合い方にヒントをくれるような、ある美大生の卒業制作がTwitter上で話題を呼んでいる。
卒業制作「Phantom」

BuzzFeed Newsは制作者の倉本大豪さんを取材した。

薄れることのない「簡単に消えていく記憶への恐怖」
「ショックか自己防衛の一種だとおもう」と、記憶を思い返せなくなった当初を振り返る倉本さん。その後記憶は戻ったが「簡単に消えていく記憶への恐怖」が薄れることはなかった。
「時間が経つにつれて徐々に薄らいでいく記憶は、親友を忘れたくない自分にとって恐怖でした」倉本さんは、卒業制作を始めるまでの約2年半の間、悩み続けた。
その後「どのようにこの消えていく記憶と対峙するべきなのか」と考えるようになった倉本さん。「作品制作のなかで答えを見つけようと思い」、卒業制作で亡くした親友の記憶と向き合うことを決意した。
作品に込めたのは「消えていく記憶を受け入れる」というメッセージ

新型コロナウイルスの影響で中止となってしまった卒業展示。しかし制作者の思いは変わらない。
親友に作品を観て、どう感じてほしいかという質問に「『卒業制作お疲れ様』って言ってくれたらそれでいいです」と答える倉本さん。
親友のお母さんも来てくれる予定だったという卒業展示は、新型コロナウイルスの影響で中止となってしまった。
倉本さんは「この作品を観ていただきたかった方から感想をいただけなかったことが一番悲しかった」としながらも、Twitterでの反響にこう応えた。
「200件近いご感想をいただきました。涙を流してくれてた方や、悩んでいたけど心が落ち着いたと教えてくれる方がいて、本当に作って良かったと思いました」
「僕と同じように薄れていく記憶に恐怖を抱いている方がたくさんいると思うのですが、作品のメッセージにしていた『脆さ、儚さの美しさ』や『消えていく記憶を受け入れる』ということを感じていただけたら。そして観ていただいた方自身の死の解釈の手掛かりになれたら嬉しいです」