2020年4月1日

    亡き親友の記憶を形に……ある美大生の卒業制作がネット上で感動を呼んだ

    新型コロナの影響で中止になってしまった卒業展示。しかし、ある美大生が卒業制作に込めた思いを投稿し、Twitterで話題を呼んでいます。

    亡くなった大切な人との記憶。忘れるのは恐いこと?

    身近な人を亡くし、その人の記憶が薄れてしまうことに恐怖を抱いたことのある人もいるのではないだろうか。

    そんな死との向き合い方にヒントをくれるような、ある美大生の卒業制作がTwitter上で話題を呼んでいる。

    卒業制作「Phantom」

    倉本大豪さん(@kuramotolian)提供

    「3年前に親友を亡くした。消えていく親友の記憶をそのまま形にした。人間にとって記憶はとても脆く曖昧なもので、どんなに大切な記憶でもいつかは触れられなくなってしまうのかもしれない。でも、それでいいと思った。私は、消えていくこの記憶を愛そうと思う」

    そんなコメントと共に投稿されたこちらの作品。大きな一枚の白い布に、黒い手の影が浮かび上がっているように見える。

    投稿は1万1千以上リツイート、6万9千以上いいね(4月1日現在)を集め話題をよんだ。

    「亡くした親友の記憶」をテーマに大学最後の卒業制作を完成させるまでには、どんな経緯があったのだろうか。

    BuzzFeed Newsは制作者の倉本大豪さんを取材した。

    倉本大豪さん(@kuramotolian)提供

    3月に多摩美術大学グラフィックデザイン学科を卒業したばかりだという倉本さん。

    この作品が誕生するきっかけは、3年前の親友の死にあったという。「親友が亡くなってから3週間くらい、親友の顔、声、ついこの間交わした会話など、親友に関わる記憶が何も思い出せない時期がありました」と、倉本さんは当時を振り返る。

    薄れることのない「簡単に消えていく記憶への恐怖」

    「ショックか自己防衛の一種だとおもう」と、記憶を思い返せなくなった当初を振り返る倉本さん。その後記憶は戻ったが「簡単に消えていく記憶への恐怖」が薄れることはなかった。

    「時間が経つにつれて徐々に薄らいでいく記憶は、親友を忘れたくない自分にとって恐怖でした」倉本さんは、卒業制作を始めるまでの約2年半の間、悩み続けた。

    その後「どのようにこの消えていく記憶と対峙するべきなのか」と考えるようになった倉本さん。「作品制作のなかで答えを見つけようと思い」、卒業制作で亡くした親友の記憶と向き合うことを決意した。

    作品に込めたのは「消えていく記憶を受け入れる」というメッセージ

    倉本大豪さん(@kuramotolian)提供

    約4ヶ月という制作期間中には葛藤もあった。倉本さんは制作中の心境について「苦労したのは、制作期間中ずっと自分が怖いと思っている存在に目を向けないといけないということでした」と振り返る。

    こうして辿り着いたのは「脆さ、儚さの美しさ」や「消えていく記憶を受け入れる」という作品のメッセージだった。

    「手の形、布の種類、展示方法、空間の使い方、作品撮影まで気を配って制作し」、「あくまでも『言葉や感情をメディアを通して伝える方法』である、グラフィックデザインとして制作する」ことにもこだわった。

    「この作品を通して見る方にこの作品に込めたメッセージと感情をしっかりと受け取ってもらうという事を一番大事に制作をしていました」

    新型コロナウイルスの影響で中止となってしまった卒業展示。しかし制作者の思いは変わらない。

    親友に作品を観て、どう感じてほしいかという質問に「『卒業制作お疲れ様』って言ってくれたらそれでいいです」と答える倉本さん。

    親友のお母さんも来てくれる予定だったという卒業展示は、新型コロナウイルスの影響で中止となってしまった。

    倉本さんは「この作品を観ていただきたかった方から感想をいただけなかったことが一番悲しかった」としながらも、Twitterでの反響にこう応えた。

    「200件近いご感想をいただきました。涙を流してくれてた方や、悩んでいたけど心が落ち着いたと教えてくれる方がいて、本当に作って良かったと思いました」

    「僕と同じように薄れていく記憶に恐怖を抱いている方がたくさんいると思うのですが、作品のメッセージにしていた『脆さ、儚さの美しさ』や『消えていく記憶を受け入れる』ということを感じていただけたら。そして観ていただいた方自身の死の解釈の手掛かりになれたら嬉しいです」

    Contact Hana Shimada at hana.shimada@buzzfeed.com.

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