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「なんで黒人がいるんだ」。街中で突然投げかけられた言葉を胸に、彼女がビューティコンテストに出た理由。

コンゴと日本の架け橋となって、Beauty Japanに出場したある女性がいました。自身が日本で受けてきた差別やBlack Lives Matter運動への思いを胸に、彼女がコンテストのステージで語った言葉とは。

「普通の日本人ってなんなんだろう」

ブランディさん(@b_r_a_n_d_y_A)提供

23年間を日本に過ごしながら、そんな疑問を持ち続けてきた女性がいます。

外見を理由に差別を経験してきた彼女は、「Beauty Japan」のコンテストの大舞台で、自らの思いを訴えました。

自身が日本で受けてきた差別の経験や、今年5月に起きたアメリカでのジョージ・フロイドさん殺害事件への思い、そして彼女がコンテストのステージで語った言葉とは。

「なんで黒人がいるんだ」。街中で突然他人から投げかけられた言葉

ブランディあやかさん(24)は2018年3月、バンタンデザイン研究所を卒業後、企業勤務を1年経験したのち、現在はアーティストとして活動しています。

コンゴ人の父と日本人の母を持つブランディさんは、コンゴ民主共和国で生まれ生後2ヶ月で日本にきました。

23年間日本で育ち、日本国籍を持っているブランディさんですが、学生時代から、外見などが理由でいじめや差別を受けてきたといいます。

自身を「嫌なことなどは忘れたいタイプ」だと話し、楽観的な性格だと話すブランディさんですが、2019年12月30日に忘れられない出来事が起きました。

Dukai Photographer / Getty Images

「六本木の街を、同じく黒人のハーフの友人と歩いていたんです。クラブ街で他にも外国人の人が多くいる中、酔っ払っているおじさんが、通りがかりに『なんで冬なのに黒人がいるんだ』って言ってきたんです」

「季節って関係ないじゃないですか。私は23年間、年中日本で生きているわけで。なんでそんなこと言われなきゃいけないんだと思いましたし、周りの人がその人を止めなかったことにも憤りを感じました。そういう発言が黙認されてしまうのもおかしいと思いましたし、彼らがどういう価値観、人間性を持って生きてきたのか疑問に思いました」

この出来事が起こった当時の心情を、ブランディさんは自身のnoteにこう綴っています。

日本に住んでる普通って
なんなんだろう。
普通の日本人ってなんなんだろう。

髪が黒くて、さらさらで
色白だから日本人なのか?

そして日本語が鈍りなく喋れても
見た目が違ったら日本人じゃないのかな。
そして見た目が外国人だから
住む場所も制限されるのだろうか。
黒人の季節に合わないのなら
国に帰らなければ行けないのか。

そんなの、おかしいと思う。
一瞬、
人の外見を見ただけだと
その人が
どんなバックグラウンドで
育ったのかまでわからない。
それに
何かを犯したわけでもないのに
存在を否定されるのは違うと思う

ブランディさんがこうした差別を受けたのは、初めてではなかったといいます。

「会社員時代の時に、髪型をブレイズ(細かい三つ編みにする髪型)にしたい旨を伝えたら、上司に『ふざけている』と言われたこともありました。そういうのが重なって、自分の中でも、見た目で変な子だと思われないように気を使って生きてきた感じは自分の中であって。人から何か言われることに対して恐れや抵抗がありましたね」

noteより / Via note.com

幼い頃から差別に晒され、人からの視線や評価に恐れを抱いてきたというブランディさんは、この12月30日の出来事をきっかけに、自身の社会問題に対する思いをnoteを中心に積極的に発信するようになったといいます。

そのモチベーションとなったのは、「ヘアスプレー」や「ドリームガールズ」といった、社会問題を取り扱いながらも明るい気持ちにさせてくれる映画作品でした。

「社会問題を人々に伝えている作品に触れて、自分がやりたいのはこれなのではないかと思うようになりました。同時に、こうした映画作品の多くは10年以上前のものなのに、世界が変わっていないという現実がある。今もまだそういう問題を語らなければいけないという現実にとても憤りを感じて。それって自分たちが変えられなかったということじゃないですか」



「自分の子どもの世代に向けて、少しでも社会を変えるためにはアクションは必要だと思うようになりました。今までの自分だったら、問題意識を持っていても仲間内だけで終わっていた。でも、自分が黒人として生きてきた経験や、もう一つの母国コンゴの児童労働問題や女性のキャリア問題などを伝えたいと思ったんです」

Beauty Japanへの出場を決意。

ブランディさん(@b_r_a_n_d_y_A)提供

コンテストのSNS審査のために行なった写真撮影では、母国コンゴの布を使った帯と着物を着て、「2つの文化の架け橋」を体現した。

撮影は、ストリートでのファッションポートレートを中心に活動するカメラマンのえりこさんと、コンゴ布を使った洋服を扱ったアパレルブランド、Ayの協力で実現した。

差別を受けた経験から、発信活動を始めたブランディさん。キャリアに対する思いにも徐々に変化が生まれていました。

「これからの自分の活動の幅を広げるためには、自己肯定感をあげることが大事」と考えたブランディさんは、自分の発信力・表現力を向上し、人脈を広げるため、Beauty Japanという「社会で活躍し、社会に貢献する、魅力ある女性へ。応募者の活躍の機会を創出する」ことを目的にしたコンテストへの出場を決意しました。

「ともに母国であるコンゴと日本の架け橋になりたい」と、2ヶ国の文化を体現する投稿を心がけていたというブランディさん。そうした活動が功を奏し、神奈川大会では準グランプリを受賞、日本大会への進出が決まったのです。

ブランディさん(@b_r_a_n_d_y_A)提供

ランウェイでのブランディさん。

Black Lives Matter運動

2020年5月25日、アメリカのミネアポリスで、アフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドさん(46)が、警察官に首を膝で押さえつけられ死亡したことをきっかけに、「#BlackLivesMatter(黒人の命は大切だ)」(以下、BLM)と訴える抗議活動がアメリカをはじめ、全世界に広がりました。


ブランディさんも、日本で行われたBLMのデモに友人と参加したといいます。

「参加者は外国籍の方たちが多く、日本人の若者は少なかった印象でした。若者にとってはデモなどに参加すること自体、普通じゃないこと。自分の考えを主張したがらないのかなと思いました」

その時の心情をブランディさんは、自身のnoteにこう残しています。

アメリカの現状を見ながら
頭の中がひたすら悲しみと悔しさでいっぱいになった。



(途中略)

日常的に会話などで何気なく感じた偏見を心を押し殺してちゃんと向き合って来なかった。
私はよく人から繊細だ。って言われる
だから私がとった行動は忘れることだった。
傷ついた自分を認めたくなかったからだ。

「あの時期(BLMが起きた時期)は、今までの色んなことを思い出してしまって本当に辛かったんですけど、でもその中で、ハートがあってこれからも関わっていきたい人に出会えたりだとか、自分にとってのターニングポイントになりました」

Beauty Japanの選考中に起きたこの事件は、ブランディさんの気持ちを大きく揺れ動かしました。

日本大会に進出したブランディさんでしたが、地区大会とは異なり日本大会では、自分の発信内容やプレゼンだけでなく、チケットやパンフレットの販売数が評価に加味されるようになり、「大会が定める社会貢献や美しさとはそもそも何なのだろう?」と疑問を持つようになったといいます。

「辞退を幾度も考えましたが、他のファイナリストの方などに背中を押され、出場を続けることを決めました」

スピーチで訴えたのは、今まで押し殺してきた声。

日本大会の第1ラウンドを勝ち抜いたブランディさんは、第2ラウンドのスピーチで、BLMの運動や自身が経験してきた黒人差別について思いをぶつけました。

あいつまじ汚い

『それってあるあるだよね。
耐えて頑張ろうね。』

今まで何度この言葉を、

同じ境遇の人たち同士で掛け合い、
経験を飲み込んできたか分かりません。

生まれ育ったのが日本なのに
何度存在を否定されたでしょうか。

見た目だけで何度無理な期待をさせられたでしょうか?

私たちは傷を舐め合い、前に進む努力をしてきませんでした。
声を上げず、耐えることだけが正解だと思ってきました。

2020年5月25日。1人の黒人男性が命を落としました。
死因は窒息死です。
膝で首を8分間、押さえつけられました

それを機に世界的な”ムーブメント”が起こりました。

black lives matter!!

世界各国の人々が声を上げました。

私の経験談のブログや、
デモ参加によるテレビ出演、
そして高校生への講演を聞いた方々の感想は

こんな目に遭っている方がいるなんて知らなかった。というものでした。

デモ自体が、それだけの行動が社会を変える訳ではありません。

ですが
自分の人生も運命も社会も
口に出さないと、動かないと絶対ぜったい変わりません。

知ってもらう目に見えるアクションを起こし、
継続的に声を大にして発言すること。

それは確実に人々の意識を変え、
社会を変える、ポジティブな方法です。

私はやめません。
社会問題を語ることを。

私は無視しません。
無関心の反対は、愛です。

#blacklivesmatter

ブランディさん(@b_r_a_n_d_y_A)提供

ステージでは「自分らしさ」を大切に、個性派メイクをしたというブランディさん。

第2ラウンドの結果は、敗退。しかしブランディさんは悔しい思いを胸に、人生の次のステージに進んでいます。

ロールモデルはキング牧師。「自分を愛するってどういうことか」を伝えたい。

現在ブランディさんは、アーティストとしての活動の傍ら、ラジオやテレビへの出演に加え、若者にBLMや差別について知ってもらうために学校などでの講演会を行なっています。

そんなブランディさんが尊敬する人は、アフリカ系アメリカ人公民権運動の指導者として活躍したキング牧師だといいます。

「4年前にアメリカに行って、ワシントンにあるキング牧師の言葉が刻んである記念碑を見たんです。彼がいなかったら、もっと生きづらい社会だったのかなと思いました。今は、ジョージフロイドさんが亡くなった時と比べると(BLMについて)話す人が少なくなっていると思っています。だからこそ、私が教育機関などで講演するなどの活動を続けていきたいと思っています」

若者に向けて、BLMや差別についての講演をするときに、ブランディさんが伝えたいと思っているのは、高校生の時に出会い、資格を取得した小笠原流礼法の教えなのだといいます。

「小笠原流礼法には、相手に対する心を残して、おもてなしするという『残心』という教えがあるんです。差別って相手に対して敬意がなかったり、深い偏見があることで生まれると思うので、若い子に残心についてや、自分を愛することってどういうことかを伝えたいです」

「自分の可能性って無限だ」

ブランディさん(@b_r_a_n_d_y_A)提供

ブランディさんは今後も、今まで大切にしてきた「愛、個性、支援活動」の三本軸を胸に、アーティストの活動を続けていくといいます。

「自分の可能性って無限だって思っていて。SNSをはじめ色んな場所で、自分をどう見せるかも自分次第。表現の方法として、モデルやアーティストとして活躍していきたいです。またビジョンがあるのに、機会がなくて活躍できていない若者をサポートするための起業なども考えています。また、そういった人たちのモデルのような存在になっていけたらいいなと思います」

Contact Hana Shimada at hana.shimada@buzzfeed.com.

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