性別を超越した、美しいトランスジェンダーたちの写真

    「私たちは、西側世界がつくり上げた男女の役割に縛り付けられています。そこに微妙な差異や複雑さが入り込む余地はありません」

    Soraya Zaman

    「ケイデンは美しく崇高な魂の持ち主です。彼は驚くほど穏やかですが、決して内気ではありません」

    ソラヤ・ザマンは、オーストラリア生まれの写真家だ。作品には、ジェンダーやセクシュアリティをテーマにしたものが多い。クィアでノンバイナリーを自称し、自らの代名詞としてheでもsheでもなく、theyやthemを使うザマンの作品は、生命力にあふれている。そして、被写体やその物語との個人的なつながりを感じ取ることができる。

    そのザマンがこのほど出版した写真集『American Boys(アメリカン・ボーイズ)』は、流動的な状態、つまり、性別だけでなくライフスタイル、場所、精神における流動性を捉えたポートレートのコレクションだ。

    BuzzFeed Newsはザマンに取材を申し込み、この写真集がどのようにつくられたかについて話を聞いた。ノンバイナリーのコミュニティーが知られることの重要さも語られた。

    Soraya Zaman

    「チェロキー族のアオダンは、トランスジェンダーの男性を自称しています。ネイティブアメリカンの文化では“2つの魂”と言うそうです。米国に入植者がやって来る前の先住民の世界には、性別が一致しないという概念はなかったと、彼は私に教えてくれました」

    American Boys』はどのような本ですか?

    米国の大都市や小さな町に暮らすトランス・マスキュリン(男性寄りのトランスジェンダー)29人のポートレート集です。性別の移行に関しては、それぞれ異なる段階にあります。すべての写真に本人の言葉を添えています。撮影時の会話から抜粋したものです。

    写真を撮影するときは、被写体の人生の一部を垣間見ることができるよう意識しました。被写体の人柄や正直さ、美しさ、弱さ、強さなどです。それぞれを肯定する写真です。ジェンダーアイデンティティーは2つだけではないと伝え、その理解を拡大させるための写真集です。「そのほかのジェンダーアイデンティティー」は確かに存在するのです。

    American Boys』が目指しているのは、伝統的な男女の役割という人々の認識に異議を唱えることです。

    この写真集をつくろうと思ったきっかけは? 完成したと感じたのはいつですか?

    プロジェクトが始まったのは2016年夏。当時、私はトランスマスキュリンの表現方法を探っていました。私自身や私の気持ち、ジェンダーアイデンティティーの遍歴と、関連が深い事柄だったためです。

    私は間もなく、出会ったすべての人に敬意を払い、物語を共有し、受け入れ、一人一人を主人公にすること、肯定的な写真を撮影することが本当に重要だと気付きました。政治情勢が変化している今こそ、それらを実行すべきだと。

    トランスマスキュリンがメディアに露出することはあまりありません。私はこれらの重要な物語をオンラインから連れ出し、もっと永続的な存在にしたいと思いました。

    正直に言うと、このシリーズが完成したとは思っていません! トランスマスキュリンのコミュニティーは豊かで、深く、多様性に富み、29人では全体像を伝えることができません。言いたいことや共有したいことがまだたくさんあるため、2冊目の出版も視野に入れています。

    Soraya Zaman

    「チェラはアーティスト、作家、ストーリーテラー。トランスジェンダー、ノンバイナリー、クィアのコミュニティーでは、多くの人が手本にしています。彼は耳が不自由ですが、障害とは捉えていません」

    被写体たちとはどのようにして出会ったのですか?

    このプロジェクトに参加した全員が、Instagramで発見した人たちです。オンライン・プラットフォームを利用して、自分の人生に起きていることを興味深い方法で表現していた人たちです。私に言わせれば、彼らは生まれながらのストーリーテラーで、良いことも悪いことも共有したいという意欲に満ちていました。それが私の心に響いたのです。

    私は一人ひとりにダイレクトメッセージを送り、関心があるかどうかを確認しました。ニューヨークやロサンゼルスなど、クィアの中心地と広く考えられている都市の住人だけでなく、米国のあちこちに暮らすトランスマスキュリンを取り上げることも重要でした。小さな町では、コミュニティーや安全な場所を見つけるのが難しく、そうした町で生きて行くには並々ならぬ勇気が必要だからです。

    ノンバイナリーの代表者がメディアに露出することはどれくらい重要だと思いますか?

    私たちは長い間、「シスジェンダー(身体的性別とジェンダーアイデンティティーが一致していること)と異性愛」を唯一の規範とする世界観を強要されてきました。私が子供だったころ、メディアには、私から見た私と同じ存在はいませんでした。

    私たちは、西側世界がつくり上げた男女の役割に縛り付けられています。そこに微妙な差異や複雑さが入り込む余地はありません。性別を厳格に二分し、それぞれの役割を期待することは、トランスジェンダーやノンバイナリーにとって、危険で抑圧的で有害なことです。

    Soraya Zaman

    「ラザラスは“LGBTQ”のすべてに当てはまると笑い、今後はユニコーンを自称したいと言いました」

    私たちは、箱にぴったり収まることを期待されています。その箱には、私たちの多様さをすべて受け入れる余裕はありません。最近になってようやく、単なる建前と感じない形で、クィアやトランス、ノンバイナリーが表にでてくるようになりました。

    この作品への思い入れが強いのは、性役割の拡大に関する現在の議論の一部となり、プラスの影響を与えられる可能性があるためです。人々がありのままの自分を見せ、その姿に誇りを持つ。私が子供だったころにはあり得なかったことです。

    これらの写真を見た人に何を感じてほしいですか?

    このプロジェクトは意図的に、心の奥深くにある、ノスタルジックな米国の少年性に呼びかけています。男らしさはシスジェンダーの男性だけのものだという概念について考えてもらいたいのです。

    この作品が、ジェンダーアイデンティティーは出生時に割り当てられた性別と一致しなければならないという思い込みや、拘束的な分類から脱却する助けになればと思います。また、トランスマスキュリンというアイデンティティーに、肯定的な形で焦点を当てることも、このプロジェクトの狙いです。

    この本を手に取ってくれた人が、ただ写真を見るだけでなく、被写体の物語を読んでくれることが私の願いです。たとえ写真に自分自身を「見る」ことができなくても、物語に共通点を見いだすことはできるかもしれません。

    私は人々に、決して一人ではないことを知ってもらいたいと思っています。私たち全員がユニークなアイデンティティーをつくり上げ、全米、そして全世界で、私たち全員にとって最高の人生をつくり上げようとしているのです。そこには力があります。このプロジェクトをきっかけに、あらゆるアイデンティティーが受け入れられ、安全が約束される文化に近づくことを願っています。

    Soraya Zaman

    「ラッセルは心優しい人です。穏やかに振る舞っていましたが、いつも穏やかなわけではないと言っていました。以前は性同一性障害で心がボロボロになり、世間に怒りを感じ、小さなことで攻撃的になっていたそうです。しかしあるとき、まだ理想の自分になっていないと悩むより、心の安らぎを見いだし、物事を前向きに捉え、これまで成し遂げてきたことに集中した方がいいと思うようになったそうです」

    Soraya Zaman

    「ルフィオ! ボディービル好きの熊のような魅力に輝く人です! 生命力と元気に溢れています。また、根っからのフェミニストでもあります。白人男性の特権を体験したことが影響しているようです」

    Soraya Zaman

    「イライジャは優しく、思いやりがあり、物静かな成功者です。テキサス州南部の出身で、家族はバプテストでした。母親にカミングアウトしたとき、母親は、家族メンバーたちが、「聖書の教えではトランスジェンダーは神の意志に反する」と言って彼を攻撃するかもしれないと知っていました。そこで、彼と母親は聖書を学び直し、その主張が誤りであることを証明する一節を見つけ出しました」

    Soraya Zaman

    「私がジャスティンに会ったとき、彼はいろいろなことを始めたばかりでした。1週間前に乳房を切除し、大学入学も控えていました。高校までは自分の殻に閉じこもり、目立たないようにひっそりと暮らしていました。本当の自分ではなかったため、新しい人生が始まったことを喜んでいました。本当のジャスティンはとても面白く、話し上手の自信家です。クエーカーのコミュニティーと、バージニア州リッチモンドのLGBTQセンターの両方でリーダーを務め、有色人種のトランスジェンダーのグループも設立しました」

    Soraya Zaman

    「エメットは、トランスジェンダーのモルモン教徒で、反逆者を自称しています。信仰とジェンダーアイデンティティーを両立させることに苦労しているそうです」

    Soraya Zaman

    「ジェイミーは素晴らしいミュージシャンです。一緒に過ごしたとき、嫌みを言われた体験について話してくれました。人々は彼にこう言うそうです。“あなたセクシーね…トランスジェンダーの男にしては! あなただったらセックスしてもいいわ!”でも、彼は素直に喜ぶべきです。多くの人に魅力的だと思われているのですから」


    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan

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