
この記事は、私自身が(精神科医とセラピストの力を借りて)うつ病を克服するなかで感じたことをつづった個人的なストーリーだ。
私は医療の専門家ではないので、自分はうつ病だと思う人は、ぜひ医師に相談してほしい。ただ、気分障害に苦しんでいるかもしれないあなたや、あなたが知る誰かにとって、この記事が助けになることを祈っている。
つかみどころのないうつ病の謎が、少しでも解明できれば何よりだ。
1. うつ病について誤解している人は多い。うつ病と闘っている人はおそらく、何らかの思い違いをしている人に出くわすだろう。
「外に出て運動でもすれば?」――これは、気分障害としてのうつ病を十分に理解していない人が口にしそうな、数ある典型的なコメントのひとつにすぎない。うつ病についての大きな誤解には、強い意志をどれくらい持っているか、あるいは持っていないかがうつ病と関係しているというものがある。
意志の強さとうつ病に関係などないのだが、多くの人はそれを知らない。本人でさえ、うつ病に関して十分な知識がなく理解不足なのだと気づいて、驚きを覚えることがある。メンタルヘルスを話題にするときには、多くのスティグマ(負の烙印)が付きまとう。うつ病について話し合うことが重要だ。
2. うつ病の体験について話すことはおそらく、想像していたこととはかなり違うだろう。
私のようにBuzzFeedにメンタルヘルスについて投稿していたとしても、自分の体験を話すのは容易ではない。恥ずかしさを覚え、とりあえずは心のなかにしまっておきたいと思うかもしれない。うつ病と診断されたことを自分が受け入れられるまでは、ごくわずかの人にしか打ち明けたくないと思うかもしれない。
メンタルヘルスの問題を体験することは、身体的な健康問題を抱えることと「何ら変わりはない」。そうした問題を体験しているときに、自分がどんな反応をするのかは、自分でもわからないことが多い。
3. 他人の反応も、想像と違う可能性がある。
覚悟しよう。うつ病に苦しむ人でさえ、否定的な反応を見せることがある。いずれにせよ、他人の反応をフィルター代わりするといい。
そうすれば、「自分にとって良くない人」と距離を置き、自分を助けてくれる人と、努めて関係を築くことができる。
でもその前に、まずは自分を大事にして、心を満たすことが先だ。急ぐ必要はない。ときが経てば、すべてがいい方向に進むだろう。

4. うつ病は、もともと内向的な人の場合はとりわけ、見過ごされることがある。
うつ病に苦しむ人は、泣いたり、多くの時間をひとり静かに過ごしたり、ときには強い疲労感を覚えたりするかもしれないが、うつ病ではない人も、そういうときはある。うつ病を自己診断できる「症状のリスト」を見て、確認してみよう。
とはいえ、こうしたうつ病の症状が全部は出ない人もいれば、症状がそれほど顕著でない場合もある。もともと内向的だとか、引っ込み思案の人は、なおさらそうだ。
5. 助けを求める「必要」がある。でも、助けを求めるにはまず気力が必要だ。特に自分のアタマが違うことを告げるときには。
気分によっては、助けを求めようとさえ思わないかもしれない。それでも、お願いだから、誰かにすがってほしい。友だちやセラピストと話をしたり、全米自殺予防ライフラインに連絡したりするのもいいだろう。
「自分自身ではないような気がする」「本当の自分はこんなふうではない」自分が感じているそうした気持ちは、病気の症状だ。そういった状態に対処するための治療法がある。ほかの病気と同じように、うつ病も慢性化する。けれども、その状態から解放され、回復に向かうための治療法は存在する。
助けを求めるには、かなりの強さが必要だ。自分自身を助けたいという気持ちが湧かないときには、ますますそうだ。でも、どうにかして力を振り絞り、助けを求めよう。インフルエンザにかかったり骨折したりしたら、病院にかからなくてはならない。メンタルヘルスもそれと同じだ。
6. あなたも医者も、適切な治療法をなかなか見つけられないかもしれない。でも、効き始めればすぐにわかるし、効果的な治療法は絶対ある。
治療法にはいろいろな種類があり、処方してもらえる抗うつ薬もいくつかある。精神科医から処方された抗うつ薬が、1つめから効くこともあれば、何種類か試してようやく、自分に合ったものが見つかることもある。
ある友人は、薬を飲み始めたら、何もかもが一瞬で変わったと言っていた。私の場合は、1つめの薬はそんな効果がなかった。2つめも、3つめも違った。でも、いったん効果が発揮され始めたら、まさに瞬時に違いが現れた。
忘れてはならないのは、効き始めるまで4~6週間かそれ以上かかる抗うつ薬もあるということ。効果が現れ始めるまでにどのくらいかかるのかは、医師に確認してほしい。

7. うつ病の治療中でも、元気な日もあればまったくダメな日もある。
私が感じた最初の変化は、幸せで陽気だと思える日が増え始めたことだ。治療前は、仮に元気な日があったとしても、とても少なかった。
逆に、治療が順調にいっているときでも、ときには悲しく暗い気持ちになる日があるかもしれないことを覚えていてほしい。
大切なのは、自分の力になってくれている専門家たちと、十分にコミュニケーションをとることだ。意思の疎通が取れていれば、正常な心の浮き沈みとはどんなものなのか、それがいつ起きるのかを理解できる。良い日だと感じられるというのは本当に素晴らしいことだ。
8. 治療とは別に、セラピーで話をすることも役に立った。
私はライターを生業としているので、良くも悪くも、つね日ごろからものを書くことに慣れている。ところが、自分の感情や考えという抽象的なものごとについて語り、言葉で正確に表現しなくてはならなくなったときには、書くことへの意欲ががらりと変わってしまった。
そうした理由から、薬物療法と併せて、心理療法を受けることが欠かせないと気づいた。自分のなかには何もないと思っていても、話したり書いたり絵を描いたりすると、自分が表現できるかもしれない。
シルヴィア・プラスが書いた『ベル・ジャー』(邦訳:河出書房新社)を読んで、私は大いに助けられた。うつ病を体験した女性を主に描いたストーリーだ。この本は、私が抱いていた多くの感情を言葉にしてくれた。
9. うつ病のせいで、本当の自分を忘れている可能性がある。
治療の効果が現れ始めると、私にとってとても大切な4人の人たちが、「私が知っている本来のあなたに戻った」と言ってくれた。もちろん、それぞれ言い方は違ったが、4人全員の言葉に、私は心から感動した(おそらく彼らには、感動させるつもりはなかっただろう)。
私にとってのうつ病は、濃い霧のようなもので、日常生活だけでなく思い出までも、暗く覆ってしまう。私はいま、本当の自分を再発見しているところだ。自分がどんな人間だったのかをすっかり忘れてしまっていたような気がする。自分はどんな本を読むのが好きだったのだろうか。好きな音楽は? どんなことで笑っていたのだろうか。そうしたこと何もかもがちょっと新しく思えるし、セラピストや精神科医との会話が弾むようになった。

10. 人がみな違っているように、うつ病も人それぞれだ。同じケースは存在しない。
この記事は、私自身がうつ病と闘ってきた個人的な体験談だ。ほかの人も同じように苦しんでいると知ることが、少しでも励みになればいいと思っている。だからこうして書いている。助けを求めてほしい。きっとよくなるから。
この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan