お腹の中の我が子を失って。移民収容施設でケアを受けられなかった妊婦たち

    トランプ政権下で入国を拒否され移民収容施設に入れられた妊婦たちが、医療的ケアを受けられず、腹部を拘束され、虐待を受けたと訴えている。

    亡命を求めて米国に到着してから2週間目。アリゾナ州サンルイスにある収容施設にいる23歳のEは、ひどく出血しながら、施設のスタッフに必死で助けを求めていた。Eは妊娠4か月で、赤ちゃんを失うことになりそうだと感じていた。彼女はエルサルバドルから米国に来た。妊娠がわかって、より安全な場所で子どもを育てたいと願ってのことだった。

    その後、サンディエゴのオタイー・メサにある別の移民収容施設に移送されたEは、BuzzFeed Newsの取材に電話で応じ、次のように話した。「係員がやってきて、ここは病院ではないし、自分たちは医師ではないと言いました。彼らは私の面倒を見ようとはしませんでした。私は息子を失いかけていると気づきました。流れ出ているのは息子の命でした。私は何もかも汚していました。8日間ほど寝て過ごしました。食べることもできず、何もできなかった。泣いて泣いて泣き続けました」

    収容施設で足止めされ、赤ちゃんを失った。より安全な暮らしを求めて米国に来ようと思ったが、こんなことになると知っていたら来なかったのに、とEは言う。彼女は、収容施設内での影響や、本国にいる家族への影響を恐れ、名前は伏せてほしいと言った。

    「多くの妊婦がここへ来て、私のように子どもを失っています。誰にも助けてもらえない状況に、心が痛みます」とEは話した。

    BuzzFeed Newsの取材から1週間ほどして、Eは亡命を諦め、自主退去を受け入れて、エルサルバドルに送還された。

    ジェフ・セッションズ米司法長官は2018年5月、「ゼロ・トレランスな(一切の例外を認めない)」移民政策を導入。その結果、国境で子どもが親から引き離される事態を招いて国民の怒りを買い、トランプ大統領が大統領令を出すこととなった。

    国民の目は家族の引き離しに集中しているが、その5か月前にトランプ政権が密かに導入した米国土安全保障省(DHS)の別の政策が、母国での暴力から逃れてきた女性たちの状況を悲惨なものにしていた。その政策とは、妊娠後期に達していない女性を施設に収容、身柄を勾留するという内容だった。

    この大統領令は、トランプ政権が2018年3月に発表したが、それ以前の2017年12月から実行に移されていたものだ。それまでの移民・関税執行局(ICE)は、極端な状況を除いて、妊娠している女性を収容施設に入れない、あるいは比較的稀なケースではあるが、即時強制退去の対象にしないというオバマ政権時代の指示に従っていた。

    ICEの新しい指示の下では、妊娠後期に入った女性については勾留されないことになっている。さらに、「勾留された妊婦は、適切な医療処置を提供できる施設への移送の実施も含め、適切な医療ケアを受けられることを保証する」責任がICEにはある。

    だがBuzzFeed Newsは、こうした指示が実行されていない証拠を見つけている。それどころか、移民収容施設で勾留されている女性たちは、適切な医療ケアの提供を拒否されることが多い。どうしても必要な場合でさえ、施設間の移送の際には、腹部を締め付けられ、身体的にも精神的にも不当な扱いを受けていた。

    妊娠中にICEの収容施設や税関・国境警備局(CBP)の保護観察下に置かれていたEや他の4人の女性たちは、インタビューや宣誓供述書において、明らかに流産しかけているのに無視されたと語っている。また、CBPやICEが契約している看守は、医療が必要な緊急事態に対応したくない、あるいは、できないようだったと話している。妊婦だと知っているCBP職員による身体的虐待事件についても語られた。こうした証言は、5人の法的支援職員、4人の医療関係者、ICE施設で勾留されている者の支援をしている2人の擁護者のインタビューで裏づけられている。

    このような事件の発生は、ひとつの収容施設に限られたことではなかった。BuzzFeed Newsの取材に応じた医療関係者3人と法的支援ワーカー5人は口をそろえて、妊娠している女性が医療ケアを受けられなかったり拒否されたりした事例を、カリフォルニア、テキサス、ニューメキシコ、アリゾナの各州にある6つ以上の異なる施設で見たことがあると述べている。中には、それを文書にして残した者もいた。

    Refugee and Immigrant Center for Education and Legal Services(教育と法的支援のための難民移民センター、RAICES)で家族収容サービス担当ディレクターを務めるマノジュ・ゴビンダイアは、ICEが運営するテキサス州カーンズにある家族収容センターで自分たちが支援している妊婦の大多数は、自分たちに対して、ICEスタッフは外部から医療専門家を呼ぶと約束したが、その約束は守られなかったと話したと述べる。同じくカーンズの収容センターで働く無料弁護士のローレン・コンネルは、何人かの妊娠しているクライアントが求める医療ケアを受けられるよう、闘わなければならなかったことを認めた。

    Circle of Health International(サークル・オブ・ヘルス:COHI)の創設者であるセラ・ボンズ事務局長と、COHIの最高執行責任者(COO)を務め、団体が支援する女性の記録を残しているリア・リトルは、妊婦たちは、勾留中は医療ケアを受けられなかったと言っていることが多いと話す。2人は、テキサス州マッカレンにある彼らのクリニックで手当を受けた、ある女性の話をしてくれた。女性は妊娠8か月で、倒れて腹部を打ち付けたが、病院へは連れて行かれなかったという。

    カーンズのセンターに勾留された2人の妊婦は、書面による証言で、妊娠中に適切な医療ケアが提供されなかったと苦情を申し立てた(この書面は、RAICESが記録のために作成し、名前を再編集した上でBuzzFeed Newsに提供されたものだ。女性たちは、もし書面内容が事実と異なっていたら「偽証罪」に問われるという条件をのんで署名を行なっている)。

    その他にも、ある女性は、施設が提供した服が小さすぎて妊娠中のお腹が入らず「子宮が痛んだ」と語る。別の女性は、食品医薬品局(FDA)の推奨や、妊婦を対象としたCBPの方針に反して(ICEの方針ではない)、繰り返しレントゲン検査を受けさせられたと言う。「レントゲンの機械には、妊娠している女性はX線を浴びないほうがよいと書いてあった」と彼女は書いている。

    ICEは電子メールの中で、ウェブサイトに掲載している妊婦の勾留に関する方針に従っていると繰り返した。そして、ICEでは、犯罪歴や、逃亡する危険性、「わかる範囲での病歴」、さらに「公共の安全に危険を及ぼす可能性」の有無に基づいて、「ケースバイケース」で入国者を保護観察下に置く判断をしている、と書いた。さらに、妊婦が収容される施設を運営している民間の契約業者もまたこうした基準に従う義務があると付け加えながら、特定の施設についてのコメントは拒否した。

    声明にはこう書かれている。「すべての勾留者は、妊娠が確定したら、適切な教育、産前ならびに産後のケアを提供される。提供されるケアには、高リスク妊娠が示唆された場合は高リスク妊娠を専門とする医師への照会も含む」

    CBPはBuzzFeed Newsの取材に対して、国の基準を引き合いに出した。米国土安全保障省(DHS)は、個別の案件には答えられないとしてコメントを拒否した。

    Eが収容されているオタイー・メサの施設を所有している民間の拘置・矯正施設運営会社コアシビック(CoreCivic)の広報担当ディレクター、アマンダ・スラス・ギルクリストは、BuzzFeed Newsに宛てた声明の中で、コアシビックのスタッフは「医療あるいは精神衛生に関わる治療を決定する立場にない」と述べた。また、ICEや収容施設に配置された500人のスタッフは、「契約と人員配置、医療サービスならびに精神衛生サービスの監視・監督のみの責任を負う」と述べた。ギルクリストは、収容された人々は、「医療配慮を受けるための申し込みを、日常的に行うことができる」と付け加えた。

    移民の子供が親から引き離されているというニュースが報じられるわずか数週間前、DHSのキルスティン・ニールセン長官は5月に開催された米議会の公聴会で、勾留された妊婦に対してICEが提供するケアを列挙した。

    「私たちは、産前ケア、個室、専門家を提供します。どこかに行く必要があるときは、その場所に連れて行きます。さらに、カウンセリングも提供します」

    「彼らは施設内で適切なケアを受けられるだけでなく、身を隠しながら暮らすより、はるかに良いケアを受けられます」

    BuzzFeed Newsの取材に応じてくれた3人の女性にこのリストを伝えたところ、このようなケアは全く受けていないか、受けたとしてもせいぜい1つか2つであり、多くの場合は、悲惨な状況で長く待たされたと口をそろえた。

    2017年12月23日から2018年3月15日まで勾留されていたルビア・マベル・モラレス・アルファロ(28歳)は、「それは嘘です。彼らは何もしてくれませんでした」と話す。Eの反応も同様だった。「もし彼らがそのようなことをしてくれたら、私は息子を失わなかったでしょう。なぜ彼らが妊婦をケアしないのか、私には理解できません」

    勾留者と接している弁護士3人と医療従事者2人はBuzzFeed Newsの取材に対し、トランプ政権が成立するまでは、妊婦への対応はいまと大きく異なっていたと述べている。多くの場合、妊婦はほかの勾留者より早く、CBPの施設から釈放されていた。ICEが2016年8月、妊婦の勾留を、「特別な」事情がある場合と、強制勾留の場合のみに限定する方針を発表してからは特にそうだった。

    「ラス・アメリカス移民権利擁護センター」のリンダ・リバス事務局長はBuzzFeed Newsに対し、多くの場合、妊婦の仮釈放は電話1本で済んでいたと話す。ところが、トランプ政権が始まってからは、仮釈放が認められなくなったという。そして、新方針が発表されると、擁護者たちには仮釈放を求める理由がない状態になった。

    それでも、違法に国境を越えた後、あるいは亡命を求めた後に勾留された女性たちと接している5人の弁護士、医療従事者によれば、ICEは妊娠検査と妊婦用サプリメント(2人の情報では、必ずしも定期的ではない)、そしてときには、専門家でない医療従事者による入国標準試験を提供しているという。

    ある女性は、妊娠検査で陽性の結果が出たとき、ICEの施設スタッフから、IDに貼るための「健康に良い食事」ラベルを渡されたと振り返る。テキサス州西部で働く産科の看護師はBuzzFeed Newsの取材に対し、複数の妊婦が勾留中に検診を受けに来たが、妊娠中期と後期が大部分を占めていたと話している。一部(すべてではない)の収容施設は必ず、妊婦を2段ベッドの下段で寝させるようにしている。しかし、BuzzFeed Newsが取材した17人によれば、それ以上の特別待遇はないという。

    収容施設内で数十人の妊婦と接したことがある5人の法的支援ワーカーは、BuzzFeed Newsの取材に対し、ニールセン長官による議会での証言にもかかわらず、勾留された妊婦が個室を与えられた例は聞いたことがないと口をそろえている。

    RAICESのゴビンダイアは、「全くないと言い切ることはできませんが、個室は非現実的だと思います」と話す。

    「カトリック・リーガル・イミグレーション・ネットワーク(CLINIC)」で法的権利擁護のために働くルイス・ゲラは、「私は(収容施設)内部で、医療ネグレクトに関する恐ろしい話をいくつも耳にしています。ですから、妊婦は、釈放されるより勾留されていた方が幸せだというシナリオは理解すらできません」と述べている。

    ICEは7月、BuzzFeed Newsの取材に対し、最新のデータとして、2017年12月14日~2018年4月7日、合わせて590人の妊婦が勾留されたと述べた。2017年4月7日の時点では、約35人の妊婦が勾留されていたという。

    一方、BuzzFeed Newsの取材に応じてくれた権利擁護者たちは、妊婦の増加に気づいたのは2017年夏だと話している。当時のDHSの方針では、妊婦の勾留は禁止されていたにもかかわらずだ。そして、ICEによる逮捕、勾留が全米で増加するのに伴い、妊婦の数も増えていったという。勾留者が増加するにつれ、勾留者一人ひとりをケアする余裕も見られなくなっていったそうだ。

    ラス・アメリカス移民権利擁護センターのリバス事務局長は、トランプ政権が2017年12月に方針変更を発表するずいぶん前から、妊婦の勾留に変化が起きていることには気づいていたと話す。同センターがかかわる3つの収容施設、テキサス州の「エルパソ手続きセンター」と「西テキサス勾留センター」、ニューメキシコ州の「オテロ郡手続きセンター」では、2017年夏に妊婦が増加し始めたという。

    「最初は本当にショックでした。しかしその後、その数はどんどん増えていきました」とリバス事務局長は振り返る。「トランプ政権の望みを正確に反映していました。ただ公にされるのが遅かっただけです」

    CLINICのゲラとRAICESのゴビンダイアも、新方針が発表される以前から、テキサス州とカリフォルニア州では妊婦の勾留者が増えていたと話している。RAICES、「自由人権協会」、「米国移民評議会」などの移民権利擁護団体は2017年9月、DHSに対して苦情を申し立てた。この苦情は、新方針が発表される前に、テキサス、カリフォルニア、ニューメキシコ、ワシントンの各州で勾留された妊婦10人の主張を含んでおり、その多くがBuzzFeed Newsの取材に応じた女性たちと同様の体験を語っている。

    申し立ての中で引用された女性の一部は、治療を求めたとき、明らかな緊急事態または流産後であるにもかかわらず、施設スタッフに無視されたと証言している。さらには、10人全員が、勾留中に深刻な心理的・精神的ダメージを受け、妊娠への影響が心配だったと報告している。

    3人の医療従事者はBuzzFeed Newsの取材に対し、妊婦たちは多くの場合、国境にたどり着いたとき、高リスク妊娠の状態にあると述べている。

    テキサス州マッカレンの国境近くにある「サークル・オブ・ヘルス・インターナショナル」のクリニックで2年前からボランティアとして働く助産師兼看護師バージニア・スシラ・シュウェリンは、「彼らの旅は少なくとも2週間半続きます。多くの場合、十分な食事をとることもできず、想像を絶するストレスにさらされます。必要なときに排尿することも、妊娠中に必要な水分量を確保することもできません」と話す。同クリニックによれば、CBPの短期勾留から釈放されたばかりの移民を、1日当たり数百人は診察しており、妊婦も1週間に20人ほどいるという。

    ICEの元勾留者と接する機会がある3人の医療従事者は、女性たちはしばしば、国境にたどり着くまでに、心的外傷となるような出来事を体験すると口をそろえる。具体的には、性的暴行やパートナーとの別れで、これらも妊娠を脅かすことがある。

    「彼らは危険な状態で国境にやって来ます。そして、その多くが勾留中に病気になります。とても暖かい場所からとても寒い場所に移動してきた上、施設は人だらけで、密閉空間で空気が循環させられているのです」とシュウェリンは話す。「妊婦のニーズは極めて特殊で、高リスクのグループに属します。彼らを勾留することは人道に反すると思います」

    BuzzFeed Newsの取材に応じてくれた3人の女性はいずれも、サン・イシドロ国境検問所に到着し、米国の法律で認められている亡命を求めたとき、すでに妊娠していた。それでも、3人は拘束され、CBPの施設に入れられ、最初の数週間、医療ケアを拒絶されたという。3人はいずれも、勾留中に流産したと話している。

    3人は同じような体験を語っている。3人とも、勾留されてすぐに、CBP職員に対して妊娠中であることを伝えた。モラレスとジェニー・マリエル・パゴアダ・ロペス(24歳)は妊娠検査と超音波検査の結果を見せたが、Eと同様に、長期勾留施設に移るまで、治療を受けることはできないと言われたそうだ。

    モラレスは2017年12月、CBPに勾留されたとき、職員はモラレスを地面に押し倒し、「(自分の体を)振り回しました」と話している。モラレスは再び、妊娠中であることを伝えたという。「彼らは私を信じませんでした。彼らにとって重要なことではなく、無関係だと言いました」

    「私に権利はないと彼らは言いました。私は自分の国が危険なので、亡命を求めていると伝えました」とモラレスは振り返る。「しかし、彼らは嘘だと繰り返し、エルサルバドルは住みやすい国だと言いました」

    その後、モラレスは体調を崩し、「ほぼ毎日、嘔吐し続けました」。医師の診察を受けたいと頼んだが、拒否された。モラレスはCBPの施設に4日間勾留され、その後、サンディエゴの「オタイー・メサ勾留センター」に移された。

    パゴアダはBuzzFeed Newsの取材に対し、2017年7月23日、国境検問所に到着したときは妊娠4カ月で、すでに目まいと嘔吐の症状があったと語っている。ICEに勾留中、治療を求めたが、職員たちはスペイン語がわからないと答えたそうだ。パゴアダはその夜、腹部に激しい痛みを感じ、大量出血し始めた。同室に15人いた勾留者のひとりが、助けを求めるため、監視カメラに向かって叫び、手を振ったが、対応した職員たちはやはりケアを拒絶したという。 

    3人はいずれも、CBPによる勾留中に、手足と腹部を拘束されたと話している。主に、カリフォルニア州やアリゾナ州の国境にある短期勾留施設から、民間の長期勾留施設であるオタイー・メサに移送される間だ(Eは、カリフォルニア州に入ったあと、1週間以上たってから移送された)。

    米国政府によって勾留された者にとって、施設間を移送中に拘束されることは標準的な慣習だ。しかし、妊娠中期の女性がこのように拘束されたら、問題を生じる恐れがあると、医療従事者たちは口をそろえる。

    ICEの施設は、契約時期によって、勾留者のケアの基準が3通りに分かれている。ICE、CBPの最新の方針と議会指令では、拘束は禁止されている。

    「フィジシャンズ・フォー・リプロダクティブ・ヘルス」に所属する家庭医兼産科医アンジャ二・コラヒ博士はBuzzFeed Newsの取材に対し、「腹部を拘束されているとき、誰かにぶつかられたら、おなかの子供が影響を受ける恐れがあります。縛られていたら、腹部から転倒する可能性が高まるためです」と説明する。

    それにもかかわらず、勾留中の妊婦と接する機会がある看護師は、妊婦たちは「ほぼ例外なく」手足を拘束されており、ときには腹部も拘束されていると話す。テキサス工科大学が運営するクリニックとエル・パソ大学病院センターで働くこの看護師によれば、大学病院センターではここ数カ月で少なくとも2人が、出産まであと数時間の状況で拘束されていたという。

    「私たちは皆、大きなショックを受けました。そのような光景を見たことがなかったためです。(略)(出産後の)24~48時間は、大出血のリスクが最も高い時期です」。もし何かの合併症が生じていたら、拘束が原因で、医療チームの対応が遅れ、女性の健康が危険にさらされると、看護師は説明した。

    妊婦たちとその周辺で働く人々のさまざまな主張をコラヒ博士に伝えたところ、「いずれにせよ、米国のケア基準に合致していません」と断じた。「これは間違いなく、医療ネグレクトです。すべて(妊婦を勾留すること自体)が残酷で非人道的な行為です。女性(とその子供)に、不必要なリスクを負わせることになります」

    コアシビックのギルクリストは、「勾留者が私たちの施設に来る前に何が起きたかを話すことはできません」と前置きした上で、モラレスの場合、「レベル1に分類されていました。オタイー・メサでは、低いレベルの勾留者に相当します。そのため、拘束は行っていません」と述べた。


    3人の女性は全員、流産中も流産後も、適切なケアを受けられなかったと話している。3人はいずれも、民間収容施設グループのコアシビックが運営するオタイー・メサに移送された。BuzzFeed Newsをはじめとする複数の報道機関が伝えている通り、オタイー・メサは以前、ずさんな医療ケアを非難されたことがある。3人の女性は勾留中あるいは仮釈放後、法的支援者を通じてBuzzFeed Newsの取材に応じてくれた。インタビューはスペイン語で行われた。

    Eは、勾留されてから1カ月半以上、流産が始まってから2週間近く、診察を受けることができなかったと話している。パゴアダは大量出血が始まって5日後に、オタイー・メサに常駐する医療従事者の診察を受けたが、超音波検査は行われなかった。そして2日後、流産したことを知らされた。

    パゴアダによれば、その後も数日間、出血が止まらなかったという。「彼らは生理用ナプキンすら与えてくれませんでした。1日に30枚前後は必要でしたが、3枚しか支給されませんでした。もっと欲しければ売店で購入できると、彼らは言いました」。パゴアダは、2017年9月、DHSに苦情を申し立てた10人の女性のひとりだ。

    モラレスは、オタイー・メサに到着してすぐ出血が始まり、常駐医師の診察を受けた。しかし、医師はモラレスに、出血は正常なことだと伝えた。そして翌日、モラレスはカフェテリアで気絶。数時間後、シャープ・チュラビスタ医療センターの産婦人科に運ばれた。モラレスはそこで、赤ちゃんを失ったと知らされた。

    「診察してくれた医師は、流産の理由はいろいろあるが、私が置かれていた環境が原因である可能性が高いと言いました」

    BuzzFeed Newsはシャープ・チュラビスタ医療センターから、1月10日付の退院記録を入手した。そこには、モラレスが流産したと記載されていたが、原因は書かれていなかった。記録には、モラレスは退院後「1~2日以内に」産婦人科の「再診を受ける」べきであり、「症状が悪化した場合、体調が回復しない場合など、少しでも懸念があればERに戻る」べきだと記されている。シャープ・チュラビスタ医療センターに取材を申し込んだが、コメントは得られなかった。

    モラレスによれば、流産後しばらく体調が優れなかったが、収容施設のスタッフからは、何事もなかったかのように扱われたという。その後、うつ症状が現れ、食事や日常生活に支障を来たし始めた。体重も激減したが、医師の診察を受けることはできなかった。

    「赤ちゃんを失ったばかりで、体調が悪いと伝えましたが、彼らは“それは私の責任ではない。あなたの責任だ”と言うだけでした」

    コラヒ博士によれば、妊娠前期に自然流産しても、それほどリスクは高くないという。ただし、妊娠中期または後期に入っていた場合、数日にわたって出血が続く場合は、「一過性の症状で済まない可能性があるため、絶対に医師の診察を受けるべきです」

    Eとパゴアダは妊娠中期、モラレスは初期の終わりに流産した。

    モラレスが退院時に渡されたパンフレットには、流産したばかりの女性は「出血が増えたり、目まいがしたり、衰弱したり、気絶したり」した場合、「直ちに助けを求める」べきだと書かれている。3人の女性は全員、これらの症状を経験したが、すぐに助けてもらうことはできなかったと話している。

    流産の身体的な後遺症が治って数カ月経ったが、3人は、収容施設で受けた待遇の心理的・精神的な後遺症がいまだに残っていると口をそろえる。

    「彼らは、心的外傷を負わせる存在だということを知っておくべきです…あそこは誰にとっても良い場所ではありません。妊婦にとってはなおさらです」とモラレスは話す。モラレスは3月中旬に仮釈放されてから、抗うつ薬を飲み続けている。「あそこは心に大きな傷を残す場所です。あの扱いは決して忘れることができません」

    「安心できる時などありませんでした。毎日、死と隣り合わせでした…心身ともに病んでしまいます」とモラレスは続ける。「助けも支援もなく、とても大切なものを失う。言葉にできないほどの痛みです」

    Eは、エルサルバドルへの帰国に同意するわずか数日前に、こう語ってくれた。「笑顔のときもあれば、全く別の人間になってしまったように感じるときもあります。とにかく信じられないことが起きました」

    「私はこの痛みをずっと持ち続けることになるでしょう。自分のせいで息子を失ったのですから」とEは述べた。「息子と一緒にこの地にやって来て、安全な暮らしを送るという夢がありました。でも、いま起きていることはいったい何でしょう? あの夢はいったい何だったのでしょう? 本当につらいことです」

    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:藤原聡美、米井香織/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan