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世界でヴィーガンが増加中 肉の消費が環境に与える影響を懸念

気候変動を加速させる「牛のげっぷとおなら」を遺伝子組み替えで減らす研究も進められている。

Martinhosmart / Getty Images

毎年1月、一カ月にわたってヴィーガン(完全菜食)向けの食事をとり続けようと呼びかける国際キャンペーン「ヴィーガニュアリー(Veganuary:VeganとJanuaryの合成語)」が2014年から開催されている。
2019年1月の参加者としては、193カ国の約25万人が登録したと発表された。

ヴィーガニュアリーは英国発のキャンペーンで、参加者として登録すると、目標を達成するための食事計画や買い物ガイド、アドバイスなどのサポートが提供される。

2018年に参加したのは、世界全体で16万8000人。2017年と比べると、183%増加した。ヴィーガニュアリーのFacebookページのフォロワー数は、2019年9月現在で約25万人だ。

ヴィーガニュアリーのキャンペーン責任者であるリッチ・ハーディーはガーディアン紙に対して、ヴィーガニズム(完全菜食主義)への関心が高まっている背景には、肉の消費が気候変動に及ぼす影響に関して環境科学者たちが警告していることによる可能性があると語った。

豪動物愛護団体「アニマルズ・オーストラリア」のリサ・チョークはBuzzFeed Newsに対して、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2018年10月に報告書を発表したことで、食生活を変えることに対する個人の関心が高まったと述べた。

IPCC報告書には、個人の生活を変えることについての提案も含まれていた。2015年のパリ協定で定められた摂氏1.5度未満という野心的な目標値を、世界の気温上昇の上限とするのに役立つ提案だ。

たとえば、肉の消費量を減らす、飛行機の利用を減らす、車での移動を避けるといった提案だ。

アニマルズ・オーストラリアのチョークは、「気候変動と環境への懸念は確実に、食事を植物中心にしようという強い動機付けとなっています。(中略)地球の健康のために、われわれが食べる食事を見直すという、切迫した理由があるのです」と言う。

2013年に英ランカスター大学が中心になって行なったある研究によると、個人の食事から肉を取り除くと、温室効果ガスの排出量は35%減少する。また、牛肉やラム肉のような炭素集約度が高い肉を、鶏肉や豚肉に換えれば、1人当たりの排出量を18%減らせるという。

2018年10月に発表された、英オックスフォード大学が中心となった研究では、すべての国のデータに基づいて、食料消費が環境に与える世界的な影響が分析された。

それによると、今世紀に世界の気温が2度以上上昇するのを防ぐには、平均的な人が摂取量を牛肉で75%、豚肉で90%減らす必要があると示唆された。

研究を率いたマルコ・スプリングマンは、食料税を提案している。生産に必要な排出量を反映する税金だ。これを取り入れれば、牛肉の価格は40%、他の肉の価格は20%上昇するという。

オーストラリアのヴィーガン団体「レス・ミート・レス・ヒート」(Less Meat Less Heat)のメンバーたちは、自分たちをヴィーガンではなく「クライマタリアン(Climatarian)」と呼んでいる。

アニマルズ・オーストラリアを含む大半のヴィーガン団体は、「動物の倫理的扱い」を求めてヴィーガンを推奨しているが、彼らの関心は「気候変動に悪影響を及ぼさない食事」だからだ。

レス・ミート・レス・ヒートは、「クライマタリアン・チャレンジ(Climatarian Challenge)」という取り組みを行っている。アプリのユーザーに対して、オーストラリアの温室効果ガス排出量の50%が畜産農業によるものだと指摘し、炭素ポイントの割り当てに基づいて食事をするよう促しているのだ。

メルボルン大学にある一次産業気候課題センター(Primary Industries Climate Challenges Centre)所長のリチャード・エッカード教授はBuzzFeed Newsに対し、畜産業由来の温室効果ガスにまつわる一番の懸念は、牛のげっぷや鼓腸(腹腔内のガス)を通じたメタンの排出だ、と語る。

二酸化炭素や亜酸化窒素は、大気から消えるまでに1世紀以上が掛かる。それに比べると、メタンは短寿命の温室効果ガスで、12年後には消失するが、気温を二酸化炭素と比べて86倍上昇させる。

オーストラリアでは、国内における温室効果ガス排出量の約10%を農業部門が占める。世界全体では、排出量の14.5%を家畜が占めている

エッカード教授は、メタンの削減を「魔法の切り札」と呼んでいる。メタンの生成が実際に抑制されれば、短期間に地球温暖化を軽減するのに役立つからだ。

しかしエッカード教授は、文化・社会・経済的に複雑な要因が、肉食を止めるのをきわめて難しくしていると指摘する。

経済協力開発機構(OECD)によると、世界の中流階級は、2009年の18億人から2030年までに49億人に増加する。そして、中流階級が増加すると、肉に対する需要が高まる。予測によれば、家畜の肉に対する世界の需要は、2050年には2010年の1.8倍になる可能性がある。

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エッカード教授は、肉に対するこうした中流階級の需要を左右するのは、「豊かさ」に関する欧米的な認識であると指摘し、文化が変わらないと、肉断ちは受け入れられないと述べる。

「われわれは、マイカーを運転し、マイホームを持ち、肉を食べよう、という価値観を作ってしまいました。したがって解決策はおそらく、豊かな食生活というものがどういうものなのかについて、世界の中流階級が認識を変えることにあるでしょう」

牛の飼育は、多くの地方や先住民コミュニティにとって重要な経済基盤であるため、エッカード教授は、肉消費の削減とともに、「メタン排出量が少ない家畜」の開発を擁護している。

「オーストラリアでは、多くの先住民が、伝統的な土地の権利や、伝統的な狩猟の権利、伝統的な食料源を失っている状況にあります。今では家畜が、先住民の伝統的なタンパク源になっているのです」

「したがって、そのことを認識したうえで、環境的により害の少ない方法を提供する必要があります」

メタン排出量が少ない牛を作る1つの方法は、牛の遺伝子操作を行い、草を分解する第一胃のマイクロバイオームが、げっぷ時にメタンをあまり排出しないようにすることだ。

ゲノム・カナダ(Genome Canada)のような機関はすでに、メタン生成量が少ない牛を特定して育てるDNAシークエンシング・プログラムを開始している。

エッカード教授は、こう語る。

「われわれが試し、行動してみるべきことは、自分たちのためになるだけでなく、世界全体のためになり、さらに、社会経済的により貧しい環境においても世代を超えて引き継ぐことができるような解決策を生み出すことです」

この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan