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プロが教える、後悔しない病院・医師選び〜“あなたの名医”の見つけ方

心から信頼できる主治医に巡り会うために

前回は、がんの病院選びの5つのコツということで、主に“病院”の選び方について解説しました。

しかしながら、それだけでは十分とは言えません。というのも、大きな病院になれば、一つの病院の中に同じ疾患を診察する医師が何人もいるからです。

いわゆる“指名”が必ずしもできるとは限りませんが、とはいえ、この先生にお願いしたいという希望を伝えれば、初診はその先生の外来の枠に入れてもらうなどして、主治医になってもらう確率を高めることはできます。

今回は、「大きな病気になった時に“医師”をどう選べば良いのか」について、

考えてみましょう。

医師同士の紹介は2つのバイアスに注意

医師選びで最も典型的なパターンは、病気を見つけてくれた検診施設や開業医、もしくは知り合いの医療従事者などから紹介を受けるというものでしょう。

「業界内のことは業界人が一番良く知っている」と考えれば、それが一番確からしい選択のようにも思えます。特に信頼している“かかりつけ医”が紹介してくれるとなれば、「先生にお任せします」とまずなるでしょう。

ただし、医師同士の紹介の場合、「同門バイアス」「専門バイアス」があることに注意が必要です。

「同門バイアス」とは、自分と出身大学や医局が同じ医師であれば、直接知っていたり評判が入りやすかったりしてよくわかるので、紹介しやすいということです。

もう一つは「専門バイアス」。開業医もほとんどの場合、開業するまでは大学や市中の病院で何らかの専門を持って診療にあたってきていますし、関連の学会にも参加を続けています。ですから、元々の専門の領域に近い話であれば「土地勘」がありますが、それ以外はあまり詳しくありません。

例えば、かつての専門が呼吸器外科の開業医なら、肺がん手術の医師については詳しいけれど、膵臓がんになるとさっぱり、という感じです。

医師からの紹介は、こうしたバイアスがあることを承知した上で、活用されると良いでしょう。

「有名医師」=「あなたの名医」なのか?

世の中、新聞や雑誌などの紙媒体の売れ行きが右肩下がりになって久しいですが、こと医療に関しての特集記事はよく売れるらしく、新聞社や雑誌の企画で、「○○の名医△人」なんていう特集を見ることがよくあります。

そんなリストを眺めていると、医療業界にいると「ああ、あの先生ね」と顔がすぐ目に浮かぶような「有名医師」や「大学教授」の名前がずらりと並ぶことが多いです。

では、そんな「有名医師」や「大学教授」が本当に「あなたにとっての名医」なのでしょうか?

まず、そうした有名な先生達が近隣の病院にいるとは限りません。

また、特別なコネがあれば別かもしれませんが、有名医師や教授に新たに主治医として診てもらうことは一般的に難しく、うまくたどりついても主治医になるのは結局その部下の先生、などということがよくあります。

それに、たとえ高名な先生でも、お年を召されている外科医の場合は、今現在の力量は若い頃と比べてどうかというのも考えるべきポイントです。なぜなら、外科医というのは経験値と同時に非常に体力の要るお仕事で、現役としてのピークは40歳代とも言われているからです。

それともう一つ。大学病院の教授ともなると当然名医だと思われるかもしれませんが、実は教授が名医とは限りません。たぐいまれな臨床(特に手術)能力で教授まで上りつめる医師もいます。しかし、臨床力とは関係のない学問上の業績(論文)や政治力などで教授に選出されることもごく普通にあるのです。


遠くの高名な医師に何とかしてたどり着こうとする前に、自宅や職場の近隣で「あなたの名医」を探してみた方が、結局は納得のいく治療が受けられる可能性が高いと思います。

「あなたの名医」の条件(1)→「腕」

では、自宅や職場の近隣で「あなたの名医」はどうやったら見つかるでしょうか?そのためには、まずその条件を考えてみる必要があります。

私が考える条件の1つめは、当たり前ですが「腕」、つまり、臨床能力(適切な診断を下し、治療方針を立て、実行する力)です。

この臨床能力については、前回の「がんの病院選びの5つのコツ」のお話の中にも出てきた、その疾患に関わる「専門医資格」の所持が大きな目安となります。逆に言えば、これ以外の客観的な指標はなかなかありません。

本当は、医師1人1人の手術件数であるとか、治療結果の記録だとかがわかれば良いのですが、現状手に入るものは病院単位での不完全なデータくらいで、あてになりません。

現状の専門医制度は、認定元の学会によって、その「レベル感」が異なるという問題は抱えているものの、医師個人単位の「腕」を計り知る上では一番信頼できる目安です。どの学会がどのような専門医を何人くらい認定しているかは、以下の一覧表が便利で見やすいので、ご参照ください。

加盟学会の専門医数の一覧表」(日本専門医制評価・認定機構)

「あなたの名医」の条件(2)→「コミュニケーション能力」

2つめの条件は、コミュニケーション能力です。

病院でのトラブルの原因の大半は“医師と患者とのコミュニケーションに起因”すると言われます。臨床能力は本来、「腕」と「コミュニケーション能力」がセットのはずなのですが、残念ながら日本の医師の多くは、適切なコミュニケーション技術のトレーニングを積んできていないのが現実です。

良質なコミュニケーション能力を持つ医師かどうかの、私にとっての3つのチェックポイントを挙げてみましょう。

【病気の告知時や治療の節目で十分時間をかけてくれるか?】
どんな人でも、命に関わるような病気になっていることを告げられたら、相当なショックを受けます。

「バッドニュース(悪い知らせ)」の伝達は医師にとっては日常の一こまですが、患者にとっては“非常事態”。バッドニュースを聞かされて、頭の整理も気持ちの整理もできていない状態で治療方針の決定を急かされても、患者は適切な判断ができません。

その辺りの機微がわかっている良医は、告知そのものに時間をしっかりかけたり、治療方針決定の際に患者や周囲の人に考える間を与えてくれます。

【セカンドオピニオンをとることに協力的か?】

治療方針を決めかねる時に、セカンドオピニオンを取る、つまり他の医師から意見をもらうことは、患者や家族にとって納得のいく決断をするために有効な手だてです。

セカンドオピニオンを取りたいと患者側から申し出た時に、どのような態度で出てくるかで、信頼に足る医師か否かかなり見えてきます。

患者から申し出られた際に明らかに嫌な顔をしたり、「何のためにするの?」という質問を投げて患者にプレッシャーを与えたりするような医師は二流。一流の医師であれば、快く賛同してくれます。

【あなたの仕事や生活への配慮があるか?】
医師は原則、「病気を治す/コントロールする」ことがゴール。一方、患者にとっては受ける治療が仕事や生活に与える影響は、医師が思っている以上に大きな問題であることが多いです。

例えば、ピアニストにとって、“手足のしびれ”の副作用が高確率で出てくるような抗がん剤治療は、科学的には推奨されてもベストの選択肢ではないでしょう。また、フルタイムの仕事をしている患者であれば、来院して点滴が必要な治療より、飲み薬での治療の方が好ましいかもしれません。


こうした患者の「個々の事情」をしっかり汲み取って、治療選択を一緒に考えてくれるような医師は良医です。

「あなたの名医」の条件(3)→「あなたとの相性」

「あなたの名医」の最後の条件は、「あなたとの相性」です。

後述する「イシュラン」を運営する中、ここ3年で1000を優に超える医師個人への感想一つ一つに目を通してきて言えることが、医師−患者間のコミュニケーション・トラブルは、医師側のコミュニケーション能力もさることながら、「相性」の問題も大きいということです。

ある患者にとっては治療方針をバシッと示して、「これで行きましょう」と力強く導いてくれる頼りがいのある医師が、別の患者にとっては自分の気持ちもきちんと聞いてくれずに、説明不足で乱暴なコミュニケーションをする医師と映ってしまう。

また、ある患者にとっては、治療方針が何に基づくのか科学的なエビデンスに基づき説明してくれる丁寧な医師が、別の患者にとっては辛い事実を淡々と伝える冷たい医師に映ってしまう、といったことが実際に起きています。

命に関わる重要な選択を行なう際に、「合わないな」と思ってしまうような医師ではそれだけで納得度が下がりますし、その後も診察のたびにストレスが増すばかり。「あなたとの相性」はそれだけ重要なのです。


「あなたの名医」の探し方

「あなたの名医」の3条件のうち、「腕」に関しては、各学会が出している専門医の名簿を調べれば、比較的近隣にいる医師は特定できるでしょう。では、残りの2条件であるコミュニケーション能力が高い医師や自分と相性の良い医師を、一体どうやったら見つけ出すことができるでしょうか。

ここに関しては、実際に会って話をしてみない限り、本当のところはなかなかわかりません。ですから、多くの場合のがんやリウマチなど、治療開始までに比較的時間の猶予のある疾患であれば、該当疾患や症状に関連する専門医資格を持つ複数の主治医候補と会ってみて考えるのが、面倒でも最も良いと思います。

その際、以下の4類型で、自分に合いそうな医師のタイプを予めイメージしておくことをお薦めします。

<学究型>
数字を使ってきっちりした説明をする真面目なタイプ。 治療方針を論理的に理解・納得したい患者に向く。


<リーダー型>
医師自らぐいぐい引っ張る頼もしいタイプ。 治療方針をバシッと端的に示してほしい患者に向く。


<聴き役型>
患者の話を良く聴き、受け容れる優しいタイプ。 自分の話をしっかり受け止めてほしい患者に向く。


<話し好き型>
楽しく前向きに患者の気持ちを盛り上げるタイプ。 堅苦しくないざっくばらんなコミュニケーションを望む患者に向く。

私が作成・運営に携わっている、乳がん患者向けの病院・医師情報サイト「イシュラン」では、3500名ほどの乳がん診療医の情報が掲載されており、それぞれの医師の専門医資格や、4類型のどのタイプにあたるかの投票結果を見ることができます。

2018年3月時点で2300名ほどの医師に約1万6000票の投票がされていますので、乳がんに限ってはイシュランを見て頂けば、自分に合いそうな医師を事前に特定して“当たり”の確率を上げることができるでしょう。

ここまで、「あなたの名医の見つけ方」を述べてきました。

是非知って頂きたいのは、“有名医師”でなくても“名医”と呼ばれるに相応しい診療を実践されている医師が沢山いらっしゃること、そして他の人には合わなくてもあなたに合う医師も沢山いらっしゃることです。

人の心は「口コミ」に影響されやすいものですが、客観的なデータと自分の目を重んじて「あなたの名医」を見つけて頂く方が増えることを願っております。

【鈴木 英介(すずき・えいすけ)】医療コンサルタント

東京大学経済学部、ダートマス大学経営大学院卒(MBA)。住友電気工業、ボストンコンサルティンググループ、ヤンセンファーマを経て、2009年に「”納得の医療”を創る」を掲げ、「株式会社メディカル・インサイト」を設立。ヘルスケア領域でマーケティング/営業戦略の立案・遂行をサポートする戦略コンサルティングや、患者ニーズと医療者の意識のギャップをあぶり出す患者調査・医師調査を手がける。2016年には、株式会社ソニックガーデンと共に「株式会社イシュラン」を設立し、がん患者の病院・医師選びをサポートする情報サイト「イシュラン」、無料医療メルマガ「イシュラン」を運営する。