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プロが教える、後悔しない病院・医師選び〜あなたの町のお医者さん「開業医」の見分け方

普段、通っている近所のクリニック、どのように選んでいますか?

前々回は、“がんの病院選びの5つコツ”、前回は“あなたの名医”の見つけ方、ということで、主に大きな病気にかかった時の病院や主治医の探し方について書きました。

とはいえ、日々の生活の中で健康面の不具合が出てきたときは、アクセスの良さから考えても、大きな病院ではなく開業医(クリニック)への受診をまず考える人が多いでしょう。


開業医も本当に“ピンキリ”で、名医もいれば“ヤブ”レベルの医師もいます。患者の立場からすると、開業医こそ選択の余地が大きいのですから、しっかり考えたいところ。

ということで、今回は、「開業医の見分け方」について、考えていきましょう。

診療科のてんこ盛りに気をつけろ

街中で、「内科・外科・アレルギー科・皮膚科」みたいな看板を見たことありませんか? このような診療科の掲げ方をして一人の医師が診ている場合、色んな科の病気を診ることができる良医と思われるかもしれません。

しかしながら、このような診療科の“てんこ盛り”を見た場合は、注意が必要です。

あまり知られていないことですが、驚くべきことに、専門のトレーニングを積んでいなくても、医師は“勝手に”診療科を名乗ることができます。

ついこの間まで、精神科のトレーニングしか積んでいなかった医師でも、明日からいきなり眼科の看板を掲げることができてしまうのです。極めて非合理的なルールなのですが、未だに日本の医療制度の中に存在します。

したがって、診療科のてんこ盛りをしている開業医が、すべての科に専門性があるかについては疑問符をつけざるをえず、むしろ専門性の所在がはっきりしないという意味では、選択しづらいと感じてしまう看板なのです。

専門医資格はやはり大事

眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、精神科など特殊性の高い科については、診療科の表記だけでなく、「専門医資格」の有無のチェックを確実にしましょう。前述のように、専門のトレーニングを積んでいなくても、その診療科を名乗れてしまうからです。

開業医であれば、たいていの場合その医院のホームページに医師のプロフィールが明記されていますので、そこでどのような専門医資格を持っているのか、どういった病院で診療をしてきたのかをチェックできます。

また、各学会が専門医のリストを出していますので、特定の医院が頭に浮かんでいない時は、こちらから調べるのが良いと思います。

■眼科:日本眼科学会 専門医一覧
 

■耳鼻咽喉科:日本耳鼻咽喉科学会 専門医名簿検索
 

■皮膚科:日本皮膚科学会 皮膚科専門医MAP
 

■精神科:日本精神神経学会 専門医・指導医検索
 

連載初回でも書きましたが、「専門医であれば絶対にOK」とは言い切れませんが、専門医資格のない医師よりは「当たり」の確率はずっと高いです。

ちなみに、専門医制度については、本年4月から新しい枠組みに移行していますが、本質はそれほど変わっていませんので、患者側から見た時に、「専門医資格を有しているか」が必須のチェックポイントであるということ自体は、新制度下でも変わらないと考えます。

内科医は「出自」を見分けよう

開業医の名乗る「科」は千差万別ですが、中でも「内科」の数が一番多いです。厚生労働省が出している「診療科名別にみた医師数」で見ると、2016年12月時点の開業医の数は、日本全体で9万5213人。そのうち、「内科」をメインとしている医師は実に3万9374人を占めます。

皆さんも、風邪などひいたら、とりあえずは近所の内科に行こうと考えるのが普通ではないでしょうか。

内科の開業医を選ぶ際には、その医師の「出自」、すなわち内科の中でも何の内科を専門としてきたのかが大事です。

開業医は通常、医師免許を取った時から開業しているわけではありません。大学病院などをはじめとした大きな病院で研究や臨床の実績を積んだ上で、開業に至っている(もしくは後を継ぐ)のが普通です。

こうした大きな病院では、同じ内科の中でも細かい「分業制」を敷いています。同じ内科でも、呼吸器内科なのか循環器内科なのか消化器内科なのか神経内科なのか、はたまた血液内科なのかで、扱う疾患も大きく異なってくるのです。

そして、専門医資格も、真っ当な内科医であれば誰でも持っている「内科専門医」の“2階建て”的な形で、「呼吸器」、「循環器」、「消化器内科」、「神経内科」、「血液内科」といったように、臓器別の専門医資格があります。

その先生がどんな科で診療・トレーニングを積んできたか、どんな専門医資格を持っているかは、大抵の場合はそのクリニックのウェブサイトで先生の経歴を見たら出てきますので、是非チェックしてください。

そして、お腹の症状なら消化器内科、しつこい咳が続くなら呼吸器内科、血圧や血糖値が気になるのなら循環器内科、といったように、自分が悩まされてる症状がはっきりしている場合は、先生たちの「出自」によって受診する先を変えると、より質の高い診療を受けられる確率が高まると思います。

ちなみに、出自が外科系の医師が開業して内科を名乗る場合も数多くあります。もちろんそうした“元外科医”が素晴らしい内科開業医になる場合もないわけではありませんが、専門性については割り引いて考えておいた方が良いでしょう。

こんな場合、何科にかかる?

そもそもどの診療科のクリニックに受診したら良いのか、迷うようなケースもあると思います。2つほど例を挙げてみましょう。

<ひどい傷や火傷ができた場合>
救急受診は別として、ひどい傷や火傷などを負った時、どの科を受診したら良いでしょうか? 外科かなあくらいに思う方はいるかもしれません。
でも、それ、何の外科ですか?

外科系の医師も、「脳神経外科」、「呼吸器外科」、「消化器外科」、「心臓血管外科」、「整形外科」etcと、“出自”は幅広くあります。ちなみに、今挙げた科は、どれも上記の状態にズバリの外科ではありません。私なら「形成外科」の専門医資格を持った医師を受診します。

形成外科医は、あまり馴染みが無いかもしれませんが、端的に言えば「修復のプロ」です。

日本形成外科学会のHPには、
「形成外科とは、身体に生じた組織の異常や変形、欠損、あるいは整容的な不満足に対して、あらゆる手法や特殊な技術を駆使し、機能のみならず形態的にもより正常に、より美しくすることによって、みなさまの生活の質 "Quality of Life" の向上に貢献する、外科系の専門領域です」
とあります。

同じ外的な損傷でも、骨、筋肉、関節の損傷については整形外科が本職です。「形成外科」と「整形外科」、似たような響きなのですが、異なる科であると知っておきましょう。

<長く続く頭痛に悩まされている場合>
頭痛はよくある症状なので、まあ内科かなと思う人もいれば、「アタマ」のことだから、脳神経外科と思う人もいるかもしれません。もしくは「痛み」なので「ペインクリニック」が良いと考える人もいるかもですね。

実は頭痛に関しては、めずらしく「症状」単位で学会とそれに付随する専門医制度が整っており、「頭痛専門医」がいます。

■日本頭痛学会 認定頭痛専門医一覧

出身科としては、神経内科、脳神経外科、麻酔科(ペインクリニック)、と色々入り乱れていますが、どの医師も「頭痛」治療のプロです。2013年時点で778名とかなり数の限られた「専門医」ですので、近隣に頭痛専門医がいるのであれば、頭痛持ちのあなたはかなりラッキーです。

「かかりつけ医」の選び方

ここまで色々なコツを書いてきましたが、「出自」や「専門医資格」を逐一調べるのは面倒くさいですし、複数の症状や持病がある場合はどうするか困ってしまいそうです。

どんな症状でもしっかり“診立て”ができて、一定レベルの治療を行ない、必要に応じて専門性の高い病院に紹介してくれるような、“ワンストップ”の「かかりつけ医」は望むべくもないのでしょうか?

実は、「プライマリケア医」「総合診療医」「家庭医」と呼ばれるような医師こそ、かかりつけ医に相応しいのです(呼称は異なりますが、どれも原則同じようなものと考えてください)。

NHKの「総合診療医“ドクターG”」という番組をご存知でしょうか? 「G」は「General」の頭文字。総合診療医とは「診立てのプロフェッショナル」と考えれば良いでしょう。

番組内の講師役の医師のように、どんな症状でも、まずは診立てと初期治療を施せるような医師が「かかりつけ医」として近所にいれば、これほど心強いことはありません。

これまでの日本の医療システムは、専門毎に「たこつぼ化」しがちで、「かかりつけ」を担えるような総合力のある医師をあまり育てられてきませんでした。その反省からか、本年4月からの新専門医制度では、「総合診療専門医」という資格を新たに設け、遅まきながらそうした医師を育てていく方向に舵を切っています。

この「総合診療専門医」は、できたばかりでまだリストも存在しない状態です。が、日本プライマリ・ケア連合学会という学会が認定している「家庭医療専門医」は少なくとも必要な要件を満たしていると考えられますので、かかりつけ医を見つけたい場合は、まずはここから探してみるのが良いでしょう。

■日本プライマリ・ケア連合学会 家庭医療専門医制度:専門医一覧

ここまで、あなたの町のお医者さんである“開業医”の見分け方のコツを述べてきました。

開業医は、いわゆる「病医院検索サイト」でもある程度の情報は得られます。しかし、こうした「病医院検索サイト」は、広告費などの形で開業医から資金を得てサイトを運営しているところが数多くあります。タウン情報誌なども、同様の構造があります。

巷にあふれる医療情報は、かくも不確かでバイアスがかかっているものが多いのです。

3回にわたる連載を通し、信頼できる病院や医師を見分ける“視点”を書き綴ってきました。病院選び・医師選びは、その重要性の割には、体系的な考え方が流布していません。読者の皆様が、今までに無い気づきを少しでも得て頂けたことを期待し、筆を置きたいと思います。

【がんの病院・医師】プロが教える後悔しない病院・医師選び〜がんの病院選びの5つのコツ

【大きな病気の医師】プロが教える、後悔しない病院・医師選び〜“あなたの名医”の見つけ方

【鈴木 英介(すずき・えいすけ)】医療コンサルタント

東京大学経済学部、ダートマス大学経営大学院卒(MBA)。住友電気工業、ボストンコンサルティンググループ、ヤンセンファーマを経て、2009年に「”納得の医療”を創る」を掲げ、「株式会社メディカル・インサイト」を設立。ヘルスケア領域でマーケティング/営業戦略の立案・遂行をサポートする戦略コンサルティングや、患者ニーズと医療者の意識のギャップをあぶり出す患者調査・医師調査を手がける。2016年には、株式会社ソニックガーデンと共に「株式会社イシュラン」を設立し、がん患者の病院・医師選びをサポートする情報サイト「イシュラン」、無料医療メルマガ「イシュラン」を運営する。