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「隠れなければいけないのは、私たち被害者ではありません」レイプ被害者が特派員会見で語ったこと

外国特派員協会は、山口氏を今回の会見に招待した。しかし、「返事が来なかった」という。

レイプ被害を受けたジャーナリストの伊藤詩織さん(28)が、10月24日、外国特派員協会で記者会見を開いた。

詩織さんは、著名ジャーナリストの山口敬之氏に性行為をされたと告白している。

2015年4月3日、当時TBSワシントン支局長であった山口氏に就職相談をし、食事に誘われた。都内で食事をして、2軒目に移って食事をしているところから記憶を失った。激しい痛みで目覚め、ホテルのベッドの上で山口氏に性行為をされていることに気づいたという。

今年5月に実名で記者会見を開き、約5ヶ月後に手記『Black Box』を出版している。

詩織さんは、特派員会見のはじめに英語で被害について説明したあと、日本のレイプ被害の現状について語った。

日本の司法や社会システムが性犯罪の被害者のためにきちんと機能していないことや、レイプ被害の報告をしようとしたところ、警察に「こういった事件は、よく起こることだ」「性犯罪を捜査するのは難しい」と伝えられたことを指摘。

詩織さんは、日本でレイプ事件が報告されるのは5%以下、と「性犯罪・児童虐待捜査ハンドブック」のデータを引用。タブーを破り、実名そして顔出しで声を上げていきたいという。

「隠れなければいけないのは、私たち被害者ではありません。問題は、私たちを受け入れてそして信用する準備ができていないこの社会にあります」

「話をすることで、いい変化をもたらすことができます。そうすることで、性暴力を無視することはもうできません」

様々な疑問や質問が飛んだ。

イタリアの男性記者は「アメリカやイタリア、そして世界中でレイプというものが問題になっているが、日本で女性から連帯、サポートの言葉などはあったか」と質問した。

この質問に対し詩織さんは、こう答えた。

「日本では、女性弁護士からはたくさん連絡がありましたが、組織や団体からの連絡は覚えている限りないです。イギリスの女性権利を訴える団体から連絡があり、実際会って日本の状況を話しました」

フィガロの男性記者は、詩織さんの件について日本の女性何人かと話し、あまりシンパシーがない、むしろ反感を持っているということに非常に驚いたと説明。「日本の女性の間で、エンパワーメントや連帯の気持ちがないのが問題なのか」と詩織さんに意見を聞いた。

公に出てから、脅迫やネガティブなコメントを男女から受けた詩織さん。これを受けて、学んだことがあるという。

「女性たちは、社会で生きるのに忍耐しなければいけなかった、または忍耐しないといけないと思っていたのではと考えています」

「自分の大切な人に置き換えて考えてほしい」

最後に男性記者が、「レイプ被害というつらい経験を明かして、世の中を変えていこうという強さは、どこから来ているのか」と質問した。

「自分のことを、強いとは一切思っていないです」と詩織さんは微笑み、こう続けた。

「この話をするにあたって、警察に行くところからすごく悩みました。なぜかというと、話をしたらジャーナリズムの業界では働けないと言われていたからです」

「ただ、自分の中で唯一クリアだったことは、これが真実であり、自分でその真実に蓋をしてしまったら、真実を伝えるのが仕事であるジャーナリストとして働いていけないとも思っていたことです」

被害者の経験や受けた傷といった「真実」を周りが理解し、サポートするのが大切だと強調。

「これが自分の妹や友人に起きた場合、彼らはどう対応できるだろう、どういう道をたどるのだろうと思った。もうこれ以上、彼らに負担をかけたくない。自分が話さなかったことよって、繰り返されるのがすごく苦しいと思いました」と詩織さんは説明。

「自分の大切な人に置き換えて考えてほしい」。詩織さんは、そう呼びかけた。

山口氏は当時、TBSワシントン支局長を務めていた。会場では「同じ立場だった」という男性が「質問しようかどうか迷った」と口を開く場面もあった。

「同じ組織に属していた元同僚が詩織さんに対してとったという行動というのは、理解できないくらい非常に怒りを覚えています」

「就職話に絡んでああいうことをやるという状況が、私には理解できないです。支局で働く人間を選ぶ際、私はあんなことを想像もできないし、ましてや犯罪行為がもしあったとすれば、それは一人の人間のモラルとして恥ずべきことだと個人的には思っています」

そう思いを伝えた。

外国特派員協会は、山口氏を今回の会見に招待した。しかし「返事が来なかった」という。