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【リオ五輪】イギリスの成功の裏には「妥協しない文化」があった

世界ランキング36位から2位へと駆け上ったイギリスが取った対策とは。

Justin Tallis / AFP / Getty Images

リオ五輪でイギリスは、合計67個のメダルを獲得する快挙を成し遂げた。

5大会連続でメダルの獲得が増加しているイギリスは、中国を追い抜いて初めて合計メダル数で世界2位に輝いた。勝利の要因とは何だったのか。

国営宝くじ

1996年のアトランタ五輪でメダル15個、世界36位と大完敗を経験したイギリス。当時の首相だったジョン・メージャーは、対策として国営宝くじの収益の一部をエリートスポーツ向けに投資する制度を始めた。

1997年に国王から承諾を得て設立された非省庁公的機関UKスポーツが、オリンピック・パラリンピックに向けたエリートスポーツに投資し、政策を担っている。

国営宝くじの公式販売代理店でもあるUKスポーツは、宝くじの収入の20%をエリートスポーツの支援に回している。

イギリスのメダル数:1992〜2016
British Olympic Association / Eimi Yamamitsu / BuzzFeed

イギリスのメダル数:1992〜2016

スポーツ専門チャンネルのSky Sportsによると、過去4年でイギリス政府とUKスポーツはリオ大会に向けて約380億円を投資している。パラリンピック大会も含めると480億円を超える。

2012年のオリンピック・パラリンピック大会の430億円と比較すると、リオ大会では11%もの増加があった。

リオ大会で金メダル2個と銅メダル1個獲得した、体操のマックス・ウィットロック。
Ryan Pierse / Getty Images

リオ大会で金メダル2個と銅メダル1個獲得した、体操のマックス・ウィットロック。

資金の増加とともに成功例も増えることを証明したのは、体操だ。2012年に目標のメダル4個を獲得し、リオ大会に向けて36%増加の支援金を得た。そしてリオ大会では、7個のメダルを獲得している。

しかし、資金とメダルの個数が比例すると一概には言えない。

2012年ロンドン大会で3〜5個のメダル獲得目標を達成できなかった競泳は、支援金がカットされた。

だがリオ大会では前回を上回る6個のメダルを勝ち取った。東京に向けて資金が増える見込みだという。

「妥協しない文化」

UKスポーツは、「妥協しない文化」を作り上げた。ガーディアンは「オフィスで常に使われていた言葉」だと報じている。

メダルを勝ち取るために妥協はしない。「支援金=メダル数」という概念をもとに、UKスポーツは実績のある競技を優先に投資をしている。

当初、UKスポーツのやり方は実績が少ない競技に対して不平等だと人気がなかった。金でメダルが"買える"という見方が極端なのではないかとの声もある。

しかし、大会でのメダル獲得数が増えている今では、UKスポーツの投資方法はイギリスで大きな支持を得ている。

サイクリングのイギリスチーム
Julian Finney / Getty Images

サイクリングのイギリスチーム

エリートコーチング

エリートスポーツの質の向上に大きく貢献したのはUKスポーツだと言っても過言ではない。2012年ロンドン大会直前までUKスポーツのパフォーマンスディレクターだったピーター・キーン氏はそのうちの一人だ。

「妥協しない」文化の推進者でもあるキーン氏は、サイクリングの利益を利用し、成功を他の競技でも適用するよう試みた。

キーン氏はまた、成功経験のある選手の技術を真似することに注力。質の高い指導によって、才能のある選手の発掘から、選手たちのエリートコーチングへの変化があったという。

2005年にロンドンでオリンピックを開催されることが決定した時、宝くじと政府からの資金が多く注ぎ込まれた。キーン氏はそれを最大限に利用して、繰り返しメダルを獲得できるようなタレントの育成を重視した。

キーン氏の後を継いだサイモン・ティムソン氏は、同じく競技間の成功の共有や質の高い指導に資金を費やした。

大会前にイギリス団体のメダル目標を発表する、UKスポーツのパフォーマンスディレクターを務めるサイモン・ティムソン氏。
Christopher Lee / Getty Images

大会前にイギリス団体のメダル目標を発表する、UKスポーツのパフォーマンスディレクターを務めるサイモン・ティムソン氏。

また、成功例があまり無いトランポリンやダイビングでも、どの国よりも4位の成績を収めてきたことをティムソン氏は強調し、自信を育むことに成功した。選手たちの自信が強まることで、メダル獲得のポテンシャルが増加しているという。

エリートコーチングによるスポーツの質の向上と失敗への免疫が、影響をもたらしたとガーディアンは評価している。

チーム精神

オリンピックで成功するのに必要なのは、大会までの投資や選手の育成だけではない。オリンピック協会の最終準備や大会期間中の団体の管理も大きく影響するという。

中でも、イギリス選手団のマーク・イングランド団長の貢献が成功をもたらしたとガーディアンは分析する。

イギリス選手団のマーク・イングランド団長
Stuart C. Wilson / Getty Images

イギリス選手団のマーク・イングランド団長

2002年のアトランタ大会から団長を務めているイングランド氏は、選手たちがチームにアドバイスをしたり、中心メンバーになっていくのを褒める文化を築いていった。

リオ大会で選手村に滞在していた選手は、3分1しかいなかった。しかし、イギリス選手団全体としての団結力は高く、「今まで一番最高の大会だった。チームの取り組みは特に優れていた。初の試みや、最高の試合がたくさんあった」とイングランド氏はコメントしている。

成功の裏に潜む問題

だが、リオ大会の成功の裏には問題もあるとBBCは指摘する。

イギリスでは、エリートに資金が回る一方、草の根スポーツの状況は悪化しており、2012年のオリンピック開催以降、週1回に運動する人口が減少している。

UKスポーツの支援金の配布方法が批判の対象になっている。エリートスポーツの中でも、優先しているのは経済的に余裕があるボートや馬術の選手たち。優先されるのは、メダルを獲得する確率が高いためだ。

育成が不足している競技は大会で実績を出せず、結果的に次の大会に向けての資金が回りにくいという負の循環にはまってしまうのだ。

バスケットボールや卓球はイギリスでは一般的に人気のあるスポーツだが、オリンピック大会での実績がないため、資金が削減されている。

エリートスポーツと草の根スポーツの資金や指導の差をどう埋めていくのか。この対策が2020年東京大会での成功の鍵となる。

バズフィード・ジャパン ニュース記者

Eimi Yamamitsuに連絡する メールアドレス:Eimi.Yamamitsu@buzzfeed.com.

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