大相撲の女人禁制を海外メディアはどう報じたか

    「伝統は人によって作られるもので、人に奉仕しなければいけない」

    相撲の土俵上で人命救急をしていた女性に「土俵から降りてください」とアナウンスがあった騒動が国内に収まらず、海外でも物議を醸している。

    舞鶴市の多々見市長が4月4日、大相撲の春巡業の挨拶を土俵上でしていたが、途中でふらつき倒れる事態に。

    多々見市長の救急対応をするために女性が土俵に上がって心臓マッサージをしていると、「女性の方は土俵から降りてください」とアナウンスが流れた。

    この騒動を受けて、日本相撲協会や実行委員会、関係者に批判が集中している。海外の報道機関でどう報じられたのか。一部を紹介する。

    ニューヨークタイムズ

    ニューヨークタイムズは、大相撲で土俵が女人禁制になった背景を説明しつつも、人命救助していた女性が土俵から降ろされたことに関してこう言及。

    「先進国の中でも健康・学問・経済・政治におけるジェンダー平等が一貫して低い順位を占めている日本で、今回の騒動は女性がどう扱われているかを象徴していると見られている」

    夫婦同姓問題や女性政治家の少なさ、皇位継承問題、そして毎日新聞が報じた保育士の「妊娠順」を例に挙げ、日本の女性は「無数の障害に直面している」と指摘している。

    近年、相撲は女性にも人気があり、女性客を集めるイベントなどをして呼びかけていたことも指摘。

    しかし今回の騒動で、日本相撲協会が女人禁制に対して何か動きを起こすインセンティブは少ない、という専門家の分析で結んでいる。

    ワシントンポスト

    「神道の伝統として、相撲の土俵は神聖な場所で、『不潔な』女性は上がるのを禁じられている」と説明するワシントンポスト。今回の騒動は「女性が平等を実現するのに直面する問題を明らかに表している」と批判。

    安倍首相が、女性の就業率の増加を目標に掲げるウーマノミクスを推進しているのにも関わらず、女性たちはどんな場面でも差別や便宜の問題に直面していると論じている。

    また、ワシントンポストは、日本のジェンダー問題に詳しい専門家の分析を報じている。

    「日本は世界の基準を満たそうとしているが、同時に伝統や性差が表れる領域もある。女性たちにとって変化は起きているが、一進一退だと感じる」

    また、皇位継承や寿司作りを例に、「女性が入られる世界は決められている」とし、「伝統は人によって作られるもので、人に奉仕しなければいけない」と専門家は話す。

    伝統が現代の期待に沿えるよう私たちはどう手伝えられるのか。今回の騒動がそのような考えのきっかけになれば、と見ている。

    ほかにも、BBCガーディアンロイター通信などが、「『不潔』だとされている女性たちが土俵に上がると汚してしまうという理由で、伝統では女性の土俵に上がるのを禁じている」と報じている。

    また、BBCでは「土俵に大量の塩が撒かれた」という国内の報道を元に、「女性が土俵を『汚した』ことをほのめかす行為だ」とSNSの声をピックアップしている。

    AP通信は「女性政治家を土俵に上らせないという、相撲の男性限定の伝統は、以前にも議論を呼んでいた」と指摘。

    SNSに投稿された動画が激しい怒りを引き起こし、「日本相撲協会の委員は、命より伝統を選んでいた」という批判が多くあったと紹介している。

    また、シンガポールのStrait Timesは、日本を「時代に追いつこうとしながらも根深い伝統にしがみつく社会」と描いている。今回の騒動は、そんな社会の中での「女性の役割を浮き彫りにした」と批判している。