海外バンドが京都の寺でライブをしてわかったこと

    Clean Bandit来日インタビュー。新アルバム『What Is Love?』にこめた思いや、目指しているサウンドの方向性とは。

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    Clean Banditが待望のセカンドアルバム『What Is Love?』をリリースした。

    ケンブリッジ大学で知り合い2009年に結成された、イギリスの若手3人グループ。

    リード・ボーカリストがいないため、曲ごとに違うアーティストをフィーチャーしているにも関わらず、Clean Banditらしさを体現したクラシックとエレクトロの融合サウンドでファンを魅了し続けているヒットメーカーだ。

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    Clean Banditのグレース・チャトー、ジャック・パターソンそしてルーク・パターソンが、新アルバム『What Is Love?』にこめた思いや、目指しているサウンドの方向性についてBuzzFeedに語ってくれた。


    京都と音楽の共通点

    ——京都の東福寺でアルバムのローンチイベント「LIVE FROM KYOTO ~古都から世界へ」がありました。どうでしたか?

    グレース:マジカルで夢のようだった。

    ルーク:超刺激的だったよ。

    グレース:ライブから3日経って、やっと頭が追いついてきた感じ。翌日に起きたときは、本当に夢から醒めたような感覚だった。

    渡邉一生
    渡邉一生

    ——アーティストがお寺でライブをするのは、珍しいですよね。

    ルーク:そう、700年もの歴史がある大きな建築で演奏できたのは、とにかくすごかった。

    ジャック:お寺に着いた時も、「本当に演奏していいの?」という思いばかりで。実は、東福寺のお坊さんたちが今年の大阪公演を観にきたときに、東福寺に招待してくれたんだ。すごくクールな人たちだよ。

    ——東福寺でのライブや、「Solo」のMVの舞台が京都でした。「Rather Be」の歌詞でも "With every step we take, Kyoto to The Bay / Strolling so casually"(意訳:ゆっくりと一歩ずつ歩んで、京都から港へ)とあるように、京都との繋がりがあるように感じます。

    グレース:私たちが初めて日本に来たのが12年前。(パターソン兄弟の)お父さんの案で休みの間に京都を旅行することになって。そのとき、京都に恋しちゃったんだよね。

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    ジャック:今回のライブで気がついたのは、京都にはユニークなところがあるっていうこと。古代と現代が絶妙に融合している感じとか。それがすごく興味深かったんだ。僕たちも、音楽でクラシックと現代音楽をミックスして似たようなことをしているから。

    そういう意味でも、東福寺でのライブは、僕たちにとってすごくピッタリだった。でも、特に計画を立てていたわけじゃなくて、偶然に起きた感じだよ。

    渡邉一生

    みんなそれぞれの「愛」

    ——セカンドアルバム『What Is Love?』では、サウンドの方向性やテーマをどうやって決めたのでしょうか?

    ジャック:このアルバムを制作するのに時間がかなりかかったし、大量に曲をかいたけど、テーマは設定していなかったんだ。

    でも偶然にも選んでいた曲が、いろんな愛の形について語っていると気が付いて。どっちかというと、自然な流れでテーマが『What Is Love?』になったんだと思う。

    家族についての愛でも「We Were Just Kids」は兄弟愛で、「Rockabye」は親子間の愛。

    それ以外にも、時間とともに変わっていってしまう愛情や、失恋、有毒な愛みたいに、ネガティブな面についての曲がある。逆に自己愛についても。

    グレース:今回のアルバムはジャンルの観点で言うと、かなり統一されていると思う。同じ世界観で揃えていて。

    ルーク:テンポもそうだね。

    グレース:そう、すごくトロピカル感のあるレゲエっぽい。Elton Johnとのトラックもあったんだけど、ほかの曲が87BPM〜119BPMで、彼の曲が125BPMだったから取り出さなきゃいけなかった。

    ——歌詞は、Clean Banditが考えているんですか?それともソングライターの人たちが書いていることが多いのでしょうか?

    グレース:曲によって違うけど、ラッパーとかは特に自分たちで歌詞を考えてくる。Sean Paulがシングルママについてまさかあんなスゴイ歌詞を書くとは思ってなかった(笑)

    「Rockabye」や「Symphony」みたいに、時によっては作詞家とコラボすることもあるよ。

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    ——たくさんある愛の形の中で、Clean Banditのみなさんが最も共感した愛情は?

    グレース:どれも共感できると思うけど、私の場合は、悪い経験を最近したから「Nowhere」かな。この曲は、不誠実さや誰かに依存してしまうことについて語っている。ほら、嘘つき政治指導者が真実を語っていないと知っていても、なんとなく信じ続けてしまう感じ。

    それを恋愛関係でたとえると、あなたを大切にしてくれない誰かと何度もよりを戻してしまって「こんな関係から離れられないくらい自分を愛せてないのはなんで?」と自分に質問するみたいな。

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    もう一つは「Playboy Style」。Charli XCXとBhad Bhabieをフィーチャリングしている曲なんだけど、Charli XCXが書いた "Not that I regret you but I met you, went insane"(意訳:後悔はしていないけどあなたに会って/気が狂ってしまった)という歌詞がすごく好き。

    人生のあらゆるステージで出会う愛で、自分が本当は何者なのかって振り返られるから。

    ——ルークさんはどうですか?

    ルーク:えっと…

    ジャック:「Solo」じゃない?(笑)

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    ——そういえば、ルークさんが今日着ているTシャツにも「Solo」の歌詞 “Cr-cr-cry but I like to party” がプリントされていますもんね。

    ルーク:(笑)ジャックがさっき話していた「We Were Just Kids」だと思うよ。僕はよくリズム感から曲にハマっていくから、歌詞に注目するのが難しくて。ラップを聞くときに、ボーカルのリズムとメロディしか耳に入ってこない、みたいな。

    でも、本当に歌詞が引きだつ曲だったんだ。音楽を聞いていてエモーショナルになることなんて滅多にないんだけど、これでは兄弟愛というつながりを感じることができた。今までそんな気持ちにさせてくれる曲を聞いたことがなくて。すごく良かったよ。

    ジャック:僕も同じかな。Craig Davidが正直に歌う感じが本当に良いよね。Kirsten Joyとのハーモニーがすごくイケてるんだ。2人ともピュアで澄み切った歌い方で。

    ルーク:そう、2人の声がこんなにうまく絡まるなんて想像していなかった。

    ジャック:名デュエットだよね。

    Clean Banditらしさは、サウンドでわかる

    ——ほかにも色んなアーティストとコラボしていますが、こうやって一緒に仕事する人が増えると、「Clean Banditのコンセプトや音楽はこれ」と伝えるのは難しくないですか? Clean Banditらしさを、どうやって理解してもらっているんですか?

    グレース:脅せば大丈夫(笑)

    ジャック:契約に書かれているから(笑)

    グレース:というのは冗談(笑)そもそも、そういうのはあまり気にしていないかな。サウンドできちんと繋がっていたら、理解してもらうのは簡単だし。それにジャックの曲は、説明する必要がないくらい独特だから。

    ジャック:いつも同じコードだからね。

    全員:(笑)

    ルーク:自分たちがどういうサウンドが好きなのか、きちんと知っているのもある。音楽をプロデュースしていると、特定のサウンドを気に入ってそれを繰り返し使うようになるしね。

    ジャック:ボーカリストのアーティストたちはレコーディングが終わったあと、恐怖に陥ってしまうことがあるんだ。だって、その後のサウンドの運命をコントロールしているのは、僕たちだから。

    さらに下手に聞こえさせようと思えば、できる…(笑)けど、そうはせずにオートチューンを使って、サウンドをけっこう磨くんだ。

    グレース:私たちはオートチューンをよく使うけど、それは楽器としてであって。つまり、ボーカルの外れた音程を直すためじゃなくて、音色を良くするため。

    でも、アーティストによっては、最初は驚いて嫌がる人もいる。Kirstenも「We Were Just Kids」で自分の声にオートチューンがかかっているのを聞いた時に、けっこうショックだったみたいで。最初は変えたがっていたけど…私たちに脅されたから(笑)

    ジャック:法務部を立ち上げたし(笑)

    グレース:いやいや、これもまた冗談だけど(笑)。いつもの自分とは違う声を聞いているうちにKirstenがだんだん慣れてきて、最終的には気に入ってくれた。

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    逆に、強いエッジのきいたサウンドを出すために、レコーディングの段階でオートチューンを使いたがる歌手もいるよ。

    ジャック:アメリカでは、メロディをきちんと耳で聞きながら色々と試せるように、ソングライターたちが作曲でオートチューンを使う文化が大きい。歌うときにたまたま出るしゃくりみたいな表現力も、オートチューンが音としてすべて拾い上げてくれるんだ。

    オートチューンが好きな理由は、音程を変えるときのスピードをダイアルで調整できるから。パーカッションみたいでリズムがイケてるメロディが作れる。僕にとって、ピッチの良し悪しよりも、こっちの方が重要だと思う。


    「本気だからこそ、けんかは重要」

    ——いろんな音楽のバックグラウンドを持つトリオが、一つのバンドとして続けられる秘訣は。 ケンカとかしないんですか?

    ジャック:長い間、僕たちは一緒にやってきたから、家族みたいになっている。そういう意味ではラッキーだと思うんだ。

    バンドよりも、こういう家族みたいな関係の方が大事だと思う。家族の価値観を共有して、 お互い信用できるかどうかがすべてかな。どんなにひどい言い争いをしても。

    つい先週も、ケンカがヒートアップした勢いで、僕がカプチーノのコップを投げてしまって(笑)

    ——本当ですか(笑)

    ジャック:うん、人に見られなくてラッキーだったよ。ゴシップ記事に載っただろうからね。

    ルーク:でも、今このインタビューで話しているっていう(笑)

    ジャック:まぁこういうケンカって、すぐ忘れるもんだよ。だって……

    グレース:カプチーノを投げた本人だからね(笑)

    ——まだ、ほかの二人は忘れてないんじゃ…

    全員:(笑)

    グレース:でも、そういう騒ぎのあとは、良い話し合いができたよね。

    ジャック:うん、カプチーノはもうやめましょうって(笑)

    グレース:本気だからこそ、けんかは重要。それは、生い立ちの違う私たちが、共通点にたどり着くためであって。納得するまで話し合えば話し合うほど、お互いを理解することができるようになるんじゃないかな。

    ルーク:そうだね、まさしくそうだと思う。話すのがウンザリになるかもしれないけど、それくらい大事。

    ジャック:ケンカって好きなだけ延々と続けることはできるけど、ライブをやると、それが一切どうでもよくなってくる。

    「あ、なるほど。僕たちがバンドを続けている理由って、これだったんだ」と気づくんだよ。仲直りライブみたいな感じで。

    ——今後、コラボしてみたいアーティストは?

    ジャック:Janelle Monáeとコラボしてみたいな。僕が最初に聞いた彼女の曲が『Tight Rope』で、今回のアルバムに出てくるBig Boiとの曲なんだよ。あの二人とコラボできたらいいよね。

    グレース:日本のSEKAI NO OWARIとは、コラボについてしばらくの間話を進めていたんだけど、近いうちに出来るかも。アメリカのツアーを一緒にやっていたときに、彼らの音楽を聞いていたんだけど、スタイルのミックスの仕方がとっても興味深い。

    Nakajinとも「Baby」で、ギターコラボをしていて。曲作りのためにスタジオでセッションをやっていたときに、自然な流れでコラボするようになったんだけど、出来上がりにみんなすごく満足している。

    渡邉一生

    ジャック:LAでスタジオを2つ借りて、セッションを同時進行に進めていたんだよ。一つのスタジオではKyleと「Nowhere」をやっていて、その隣ではSEKAI NO OWARIと作業をやっていたんだ。

    グレース:そうそう。京都でNakajinが「Nowhere」のメロディを覚えてるって言ってた。ちょうど隣の部屋でKyleが歌っていたからね。

    新しいサウンドを実験

    ——音楽のジャンル的には、今後どうでしょう。

    ジャック:僕たちは…僕自身は、コードをもう少し多くやれたらいいな。

    全員:(笑)

    ルーク:コード進行の種類をもうちょっと増やすとかね。

    ジャック:R&Bとポップの間とか…もしくは、しばらくはR&Bだけにするかもしれないし。R&Bをもっとやりたい。

    ——ひとつのジャンルに落ち着くということですか?

    グレース:ずっといろんなサウンドを実験し続けると思う。私たちが一つのジャンルに落ち着くのが想像できない。だって、これまで出してきた曲は、どれもいろんなジャンルをミックスしてきたから。

    ジャック:なんでも色々と受け入れてやっていきたいけど、同時に一つの音楽のゾーンにもうちょっと長居したいかも。R&Bだらけのアルバム、もしくはすごくポップなアルバムとか。

    一日のルーチンを変え続けたり、毎回違うことをしていたりすると、結構気が狂いそうになるときもあるからね。

    ルーク:違うのを毎回やっているからこそ、何か音楽を出さなきゃ、と良いプレッシャーになっている。

    こうやって百もの曲を作れたり、ジャンルがそれぞれ違うアルバムを十枚以上も出せたりしているのも、それが唯一の理由だと思う。