自閉症の青年が生まれて初めて発した疑問に、世界中から温かな答えが寄せられた

    「僕を好きになってくれる人、いるのかな?」自閉症の息子は母にきいた

    Courtesy of Kerry Bloch

    フロリダ州ネプチューン・ビーチに住むケリー・ブロックと夫のロバートには、21歳になる息子デヴィッドがいる。二人は最近まで、息子が自分から話すのを聞いたことがなかった。

    ケリーはその昔、子どもをもつのは無理だろうと複数の医師から言われていた。しかしその後デヴィッドを授かり、40歳のときに出産。医師の言葉が間違っていたことを証明した。

    その後デヴィッドは4歳になるころ、重い自閉症の兆候がみられるようになった。

    「元気だったのですが、まったく変わってしまったのです」。取材に対し、ケリーはそう振り返る。

    デヴィッドは話をしなくなり、21歳になる今まで、促されれば1語を発するくらいしかしない。ひとことも発しないまま何日も過ぎることもあるという。

    息子の自閉症について、ケリーは次のように話す。「私も夫も、何がどうなったのかわかっていませんし、正直なところ何でもいいと思っています。もう起きてしまったことだし、ただ前へ進むしかない、息子ができるだけいい人生を歩めるようにしたい。大事なのはそれだけです」

    デヴィッドはさらに、重度の免疫不全症候群を発症。感染症を防ぐため、ほかの子どもと接触せず自宅にいなくてはいけない。現在、母親のケリーはデヴィッドの世話に専念し、「息子は一番の親友」だという。

    とはいえ、息子が寂しい思いをしているのをケリーはわかっていた。息子の気持ちを思うと心が痛む。デヴィッドは、TV画面の向こうで笑いあったり連れだって出かけたりする人たちを見て、自分はなぜそれができないのだろうと思っているのだ。

    「息子は友だちがほしくてしかたないんです。(学校へ行けず)勉強もホームスクールでしたし、私たち家族3人だけですから」

    Courtesy of Kerry Bloch

    デヴィッドは地元フロリダ州のフットボールチーム、ジャクソンビル・ジャガーズの熱心なファンだ。チームの試合は繰り返し観ている。少し前、デヴィッドは急に母親のほうを向くと、こう言った。「僕、ジャガーズ大好き」

    「デヴィッドが自分から(3語の)文を口にしたのは初めてでした。それまで会話のやりとりができたことは一度もありません。自分から何かを言うことはなかったのが、自分はジャガーズが好きだと初めて言ったんです」

    しかも、そこで終わりではなかった。10月30日、母親に向けて初めて疑問を口にしたのだ。「僕を好きになってくれる人、いるのかな?」

    生まれて初めて疑問を言葉にした息子に、ケリーは驚きと感動をかみしめたかった。だが、わが子が自分を好きになってくれる人はいるのだろうかと考えていたのかと思うと、胸をつかれた。

    「その場を離れて、息子が見ていないところで涙しました。そんな思いを抱えていたと思うと、うれしさと苦しさが入り混じったような気持ちになって。息子も誰かに好かれたいし、友だちもほしい。でもどうしたらいいかわからないんです」

    ケリーは息子に説明した。お母さんもお父さんも、あなたを愛してるだけじゃなくて、あなたのことが好きなんだよ。神様もイエス様もあなたのことが好きだし、亡くなったおばあちゃんだって、今はそばにいなくてもあなたが好きなんだよ――。「それから、あなたに会った人は、きっとみんなあなたを好きになるよ、とも話しました」

    その日の午後、ケリーは息子が口にした疑問をTwitter(@dsmom58)に書いた。Twitterでは普段からときどき息子のことなどを投稿し、同じく自閉症の子をもつ親と交流している。

    My 21 year old autistic son has no communication skills. Today he asked me his first question ever. It was. “Would someone like me?”

    「自閉症のある21歳の息子は人とコミュニケーションがとれません。今日、息子が初めて私に質問しました。‘僕を好きになってくれる人、いるのかな?’と」

    すると、ツイートは一気に拡散。現在までに7万を超える「いいね」とリツイートがされた。世界中から寄せられたメッセージには、デヴィッドに、そしてケリーに、「ひとりじゃないよ」と伝えたい思いがつづられていた。

    @dsmom58 Tell David, he has a friend from London... and my family. Much love

    「デヴィッドに伝えて。ロンドンに友だちがいるよって」

    @dsmom58 @JonahDispatch David, I live very far away, in Jordan. It is almost midnight here now, and I've had a nice, but long day. Your two photos put a smile on my face just before I sleep. I am sure I would like you if I met you -- because I like you just from seeing your photo

    「デヴィッドへ。私は遠く離れたヨルダンに住んでいます。こちらはもうすぐ夜の12時です。今日はいい日だったけど、長い1日でした。あなたの写真を見たら、寝る前にふっと笑顔になりました。もしあなたに会えたら、間違いなく好きになります。写真を見ただけで好きになったから」

    返信をくれた人の中には、同じように自閉症の子をもつ親もいた。

    @dsmom58 I am sure my 19yo autistic son would like him. He has yet to ask me a question like that, but he longs for friends.

    「自閉症のある19歳の息子はきっとデヴィッドのことが好きになるはず。息子はまだそういう質問をしたことはないけれど、友だちがほしいと強く願っています」

    @dsmom58 David, My name is Ross. This is my Son, Lincoln. He’s 7-years-old, and, also, Autistic. We would both like to be your friend!

    「デヴィッドへ。僕はロスといいます。こちらは息子のリンカーン。7歳で、自閉症があります。僕もリンカーンもきみと友だちになりたいです!」

    @dsmom58 My 16 year old Nick (with autism) and I sure do like him!! Aren’t they the best? ❤️ 🧩 🥰

    「16歳の息子ニック(自閉症あり)も私もデヴィッドのことが好きよ! この子たち最高じゃない?」

    @dsmom58 🙌🏻 to your David, my sweet boy is 28 and his name is David too! I can’t imagine my life without him. He teaches us all so much!

    「うちの28歳の息子もデヴィッドなの!息子のいない人生は考えられないです。本当にたくさんのことを私たちみんなに教えてくれるもの!」

    ツイートへの反響に圧倒されている、とケリーはBuzzFeed Newsの取材に答えた。

    「本当にものすごく驚いて、胸がいっぱいです。昨日の夜はデヴィッドとずっと起きていました。ずっとTwitterを見ながら、返事を一つひとつ息子に読んでいました。たくさんの人がくれた返信、GIF、送ってくれた写真を息子に見せました。言葉は多くなかったけれど、‘かわいい’‘いいね’と言っていました。顔を見ればにこにこしてるのがわかるんです。あんなに笑顔の息子を見たのは初めてです」

    To say that David and I are overwhelmed by the response to this simple tweet is putting it mildly. Our hearts have never been touched like this. I am reading every reply to David. It’ll take time but know that every one of you have blessed us. Love you all!

    「私のなにげないツイートにみなさんがこんなふうに応えてくれて、デヴィッドと私は胸がいっぱいという言葉では足りないくらいの気持ちです。二人ともこれほど心打たれたことはありません。いただいた返信は一つひとつ全部、デヴィッドに読んでいます。少し時間はかかりそうですが、みなさん一人ひとりが私たちに大きな喜びをくれました」

    新しくできた友だちに向けてデヴィッドが書いたメッセージも載せた。「友だちのみなさん、僕を好きになってくれてありがとう」と書いたのだ。

    思いがけずたくさんの温かい気持ちが寄せられ、ケリーはこんな思いも抱いていると打ち明ける。もしかして、とても大きくてふさわしいハートをもった、自分たち夫婦と同じように息子を愛してくれる人がどこかにいてくれたらいいな、と。

    「私と夫はこの先、いつまでもずっとデヴィッドのそばにいてやれるわけではありません。私たちがいなくなったときに彼を大切にしてくれる、特別な人を見つけられればすばらしいのですが。息子が愛されて、幸せで、安心して過ごしていければいうことはありません」

    とりあえず今のところ、二人はもらったツイートへ律儀に返事を書くのに忙しい。

    「デヴィッドはどんな人の気持ちも傷つけたくないんです。取り残される人をつくりたくない。一人ひとりみんなに返信したいんです」。母親は息子の気持ちをそう説明する。「時間はかかるかもしれませんが、二人でみなさん全員に返事を書くつもりです」

    ケリーはまた、今回のできごとを通して、インターネットが善意にあふれる場所になり得ることを改めて思い出してもらえれば、と言う。

    「みなさんTwitterは邪悪だ、おぞましい世界だ、と言いますよね。でも私は、そんなことはない、その人次第ですばらしいものにもなるんだと伝えたいです」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:石垣賀子 / 編集:BuzzFeed Japan