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「新型コロナかも知れない…」不安と戦う男性に手を差し伸べたのは、出会い系アプリで出会った人だった

「多くの人が必需品の買いだめをしている中、喜んで支援してくれる人がいる。これは、特に私たちのような(性的マイノリティの)コミュニティにとっては、本当に大きな意味があることです」

Courtesy of Tarik Dobbs

23歳のタリク・ドブスさんは、ミネソタ大学ツインシティー校の大学院に通いながら、ティーチングアシスタント(教育助手)として働いている。

3月13日、タリクさんは友人と一緒に、本の発売イベントに参加した。しかしその途中で気分が悪くなった。

「痛みやだるさ、熱っぽさを感じました」とタリクさんはBuzzFeed Newsに語った。

オンラインや電話を通して複数の医師の診察を受けた後、1人の医師からコロナウイルス(COVID-19)の検査を受けるよう勧められた。

ジョンズ・ホプキンズ大学の調査によると、ミネソタ州にはドライブスルー型検査施設があり、現在100件以上の感染が確認されている。

しかし、タリクさんは車を持っていなかったため、歩いて救命センターまで向かった。隔離状態で数時間待った後、やっと検査を受けることができた。

「すごく嫌な気分で妙な感じでした」とタリクさんはこの出来事を振り返る。

Courtesy of Tarik Dobbs

それからタリクさんは、2人のルームメイトと共に自宅で隔離生活を送りながら、検査の結果を待った。しかし、1週間ほど経っても、まだ連絡は来なかった。

「最も体調が悪かったのは昨日でした」

20日の夜、タリクさんは電話でそう語った。

「熱が39.4℃くらいあって、なんとか乗り切ろうとしていました」

隔離生活に退屈していてたタリクさんは、ゲイの男性向けの出会い系アプリ「グラインダー」を開いた。

「彼氏はいるけど、友達を作りやチャットをするために、僕たちはお互いグラインダーを利用しているんです」

「自宅隔離中の今、みんなグラインダーをやっています」とタリクさんは言う。

検査を受けた次の日曜日。グラインダーを通して、50代の男性からメッセージを受け取った。

米政治家のバーニー・サンダース氏を支持するタリクさんは、グラインダーのユーザー名を「バーニー2020」にしている。

それで名前を混同したのか、50代の男性から「やあ、バーニー」というメッセージが届いた。

「彼はすごく優しくて、僕がどうしているか尋ねてきました」とタリクさんは振り返る。

「僕は最初に、『僕たちは会わない方がいい』ということを伝えました。加えて新型コロナウイルスが大流行していること、僕は実際に新型コロナウイルスの検査結果を待っている状態だ、ということを伝えました」

そこから会話の流れが変わった。男性は、かつて医者として働いていたという。そしてタリクさんに、症状についていくつか質問をし始めた。

タリクさんは生まれつき、体が左右非対称になる「ポーランド症候群」を患っていた。男性が本物の医師かどうか確かめるため、症状のある手の写真を送り、男性に病名を診断してもらった。

すると、男性はすぐにタリクさんの病気を言い当てた。

「彼はとても心配していました」とタリクさんは言う。

「十分な薬があるか、家族は面倒を見てくれるのかと聞かれました」

タリクさんが、「自分は低所得家庭の出身で、実家に帰るまで何時間もかかる」と説明すると、男性はすぐに行動を起こした。

「彼は『君にはチームが必要だ。僕はそのチームの一員になって君を支えたい』と言ったんです」

男性は、BuzzFeed Newsの取材に応じた。55歳の元小児科医、ゲイリーさんだ。

「医師モードから抜け出すのに苦労しています」とタリクさんとの出来事についてゲイリーさんは語った。

「とても同情しました。彼には助けてくれる人もいなく、食料もなかったのです」

「僕にとって、彼を助けるのは簡単なことでした」とゲイリーさんは続けた。

2日後、ゲイリーさんはタリクさんに頼まれた大量の食料を持って、彼の家の前に現れた。

スーパーが閉まっていたため、卵・自家製ヨーグルト・野菜・果物に加え、ルバーブという野菜のデザートを自宅から持参した。

さらに、ゲイリーさんが当日に作った特製ポーチドサーモンとアスパラガスのバルサミコソース和えも持っていた。

「万が一に備えて、大量に食料を備蓄していたので、冷蔵庫から食材を取り出しただけです」とゲイリーさんは語った。

Courtesy of Tarik Dobbs

2人は安全な距離を取って、網戸越しに対面した。お互いに触れることはなかったという。

「防護服を着ていなかったため、彼とは距離を保たなければなりませんでした」とゲイリーさんは語った。

タリクさんによると、やりとりは簡単なものだったが、記憶に残る出来事だという。

「ゲイリーさんはドア越しの僕を見て『そこまで顔色は悪くないね』と言いました。少ししてから彼は黙り込み、悲しそうな顔をしました」

タリクさんはありがたく食料をいただき、ゲイリーさんにお礼を言った後、2人は別れた。

そして、ゲイリーさんは自分の車に戻る途中、振り返りこう叫んだ。

「がんばれ、バーニー!(タリクさんのユーザー名)」

「その出来事を振り返ると暖かい気持ちになります」とゲイリーさんはBuzzFeed Newsに語った。

Courtesy of Tarik Dobbs

タリクさんと2人のルームメイト。

タリクさんと共に隔離生活を送る2人のルームメイトも、その印象的な夜のことを次のように振り返った。

「配達はとても何気ない感じでした」とルームメイトの1人、ユキオカハルカさん(20)は語った。

「キッチンに入ったら、この食料が目に入って(タリクさんが)『グラインダーで出会ったおじさんが来てくれたんだ』って」

「コメディ映画にある『突然フリーズするシーン』のような沈黙でした」ハルカさんは当時の会話を振り返った。

もう1人のルームメイト、トリンさん(25)は、詩人として活動する大学院生。彼女はこの出来事について、「とんでもないことだし、すごく贅沢」だと語った。

タリクさんはこの出来事を、ブログ『ニューヨークの人々(Humans of New York)』を運営している、写真家のブランドン・スタントンさんに伝えた。

タリクさんとブランドンさんは、フェイスタイムで通話している様子をスクリーンショットで撮影し、投稿。

のちにこの出来事はスクリーンショットと共に拡散された。

新型コロナウイルスの影響で人々が混乱し、恐怖が広がっている今、ゲイリーさんの「親切な行動」に人々は感銘を受けているようだ。

「こんな大変な時期だけど、『バーニー(タリクさん)』に幸せがお裾分けされて、私は嬉しいよ💜」

@humansofny I’m happy “Bernie” got some joy sprinkled in such an ominous time. 💜

「この危機は、グラインダーの良いところを引き出してくれた。人間も捨てたモノじゃないね」

@davidmackau Crisis brings out the best in *checks notes* Grindr. Sometimes humanity is alright

「2022年にふたりが初デートに行くってなったら…ぜひ知りたい」

@davidmackau @rabiasquared Awwww. I need an update when these two finally get to go out on their first date in 2022.

タリクさんのルームメイトは「インターネット上でこの出来事が喜ばれていることに驚きはない」と話す。

「一日の終わりに、人々が団結しているのを見て嬉しく思いました」とトリンさんは語る。彼女は現在、インフルエンザの症状と闘っている。

「多くの人が必需品の買いだめをしている中、喜んで支援してくれる人がいる。これは、特に私たちのような(性的マイノリティの)コミュニティにとっては、本当に大きな意味があることです」

タリクさんは過去にも友達を作ったり、LGBTQの人と繋がるためにグラインダーを利用したことはあるそうだ。しかし、医療サービスを受けるために使ったことはないという。

「まさか出会い系アプリでケアをしてくれる医師が見つかるとは思いませんでした、本当に」とはタリクさん語った。

2人はBuzzFeed Newsの取材を受けるまで、お互いの本名を知らなかった。

ゲイリーさんには、タリクさんの名前がバーニーでなく、「タリクだ」と伝えられた。

「その方が納得がいきます」と彼は笑った。

ゲイリーさんは、病気から回復することがどういうことか、身をもって知っている。4年前、ウイルス感染によって心臓疾患を引き起こし、医師を引退したからだ。回復には1年以上かかった。

BuzzFeed Newsの取材中、ゲイリーさんは自分の親切な行為が世界中の人々にどのような影響を与えたかを聞き、電話越しに涙していた。

「お互いを必要としているときに、離れ離れになっているのは不幸です」とゲイリーさんは、涙を流しながら語った。

「グラインダーのような場所では、本来の自分を見せないことが多いんです」と付け加えた。

「僕は、『偶然』というものはないと思っています」

「人と人が出会うにはいろいろな理由があります。自分の人生に関わる人にはきっと意味があると思います」

検査の結果、タリクさんは陰性だった。しかし、ルームメイトのひとり、トリンさんのパートナーが陽性だと判明し、今も自宅で隔離生活を送っている。

この記事は英語から翻訳・編集しました。