新型コロナウイルスの警鐘を真っ先に鳴らした武漢の医師 自身が感染して死亡

    いち早く新型コロナウイルスの存在に気づいた李文亮氏だったが、武漢警察からは「嘘の情報を流した」として逮捕の通告を受けていた。

    中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の危険性にいち早く気付き、警告していた医師の李文亮氏(34)が7日未明、新型コロナウイルスによる肺炎で死亡した。

    李氏は新型コロナウイルスに関して警鐘を鳴らした最初の人物であったが、武漢警察によって圧力をかけられ、沈黙を余儀なくされていた。

    2019年12月末、中国のメッセージアプリ「微信(ウィーチャット)」上で、李氏は同僚に「武漢の人々がSARSに似たウイルスに感染しており、自分の病院でも患者が隔離されている」と懸念を示していた。

    メッセージを送信してから数時間後、地元当局から「情報を入手した経路」と「情報を共有した理由」について尋ねられた。

    さらに数日後、李氏と同僚の医師らは「偽の情報をネットに流さない」という旨の誓約書にサインを強要されたという。

    「拘束されるのでは、家族が心配するのではと思うと、少し怖い」と李氏はCNNの取材に対し答えていた。

    「新型コロナウイルスの流行について、もし警察がもっと早く情報を公開していれば、今よりも状況は良かったのでは。開放性と透明性が必要だ」とニューヨーク・タイムズにも生前語っている。

    武漢中央病院で眼科医として勤務していた李氏は、新型コロナウイルスに感染した患者の対応中に、同ウイルスに感染したとみられている。1月半ばから熱などの症状が現れ、入院していた。

    病院側は「(李氏の死を)大変残念に思い、嘆いている」と中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボー)」を通して発表した。

    いち早く新型コロナウイルスの存在に気づきながらも、妻と子を残して他界した李氏に対し、微博(ウェイボー)では彼を英雄と崇める声が上がっている。

    中国の最高人民法院も武漢の地元当局の対応は不適切だったと批判した。

    「もし『噂』を信じて、マスク着用や衛生対策、(発生源だと考えられている)海産物市場を避けるなどの措置を(早く)とっていれば、新型コロナウイルスの予防と制御のより良い方法が見つかっていたかもしれない」との見解を示した。

    世界保健機関(WHO)緊急事態プログラムの責任者、マイク・ライアン氏も記者団に対し追悼コメントを発表した。

    「李文亮医師の逝去を深く悲しんでいる。(新型コロナウイルスに関して)成し遂げた仕事を称賛したい」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:髙橋李佳子