かつては「退屈な街」とも言われた都市国家シンガポール。東京23区ほどの小さな島国で近年、世界が注目するイベントが開かれている。
シンガポールGPだ。

都市中心部の公道に設置された臨時コースを走るF1のナイトレースは、それだけでも幻想的だ。900馬力の爆音を響かせ、火花をあげながら駆け抜ける。
だが、シンガポールGPはただのカーレースではない魅力を持つ。練習日、予選、決勝の3日間に渡って開かれるサイドイベントが、めちゃくちゃに豪華なのだ。
コースに隣接する特設ステージで連日のライブ。
2日目、3日目にはFATBOY SLIM。

当然、こうなる。

そして、最終日GP決勝後の大トリはRed Hot Chili Peppers。

当然、こうなって...

こうなる。

3日間で登場するアーティストは40組を超える。レッチリやファットボーイスリムのような世界的なアーティストから、アジアで急速に人気を拡大している若手まで、F1コースに隣接して作られている大小のステージで宴は続く。
F1を全く見ずにひたすら踊っている人たちもいる。
もちろん、摩天楼に浮かび上がるナイトレースも凄い。

ビルや歴史的な建築群とレースのコントラストが幻想的。

ライトに照らされて走るF1の車体は美しさが映える。

アスファルトから上がる火花も鮮明だ。

もう一つの楽しみが食事。ミシュラン星つきシェフらが提供する料理とお酒が飲み放題のスペシャルチケットもある。
最高額チケットは飲食つき8880シンガポールドル (約70万円)、最安で98シンガポールドル (7700円)まで25種類のチケットがある。F1や音楽を楽しみたい人は比較的安価なチケットでも十分だ。
3日間で26万8000人を集め、6割が海外からの観光客という世界的なイベントに育ったシンガポールGP。予算は1億3500万シンガポールドル(約100億円)で、その6割が政府の補助金で賄われる国家的イベントでもある。
アジアの小国ながら驚異的な経済発展をとげ、一方で「経済優先で退屈な街」という印象が強かったシンガポール。今回、筆者は新聞記者時代にシンガポールに赴任していた縁もあってGP運営会社から取材に招かれた。
「GPの全体像を見て欲しい」と声をかけられた記者は他に台湾、フィリピン、オーストラリアから一人ずついた。アジア太平洋マーケット開拓の狙いがある。
「GPは観光立国としてのシンガポールの印象を変えた」と語られる舞台裏について、運営企業や政府関係者へ取材した内容は続編で出します。