タックスヘイブンめぐる課税逃れ疑惑 世界を揺るがす「パナマ文書」とは
各国の首脳や著名人の名前が報じられ、波紋が広がっている。

タックスヘイブンをめぐる疑惑が報じられているプーチン大統領
これまでにわかっていること
- タックスヘイブン(租税回避地)に設立された21万の法人に関するファイル「パナマ文書」を南ドイツ新聞が入手した。
- 国際調査報道ジャーナリスト連合と各国の報道機関が協力して分析。各国の首脳や著名人、富裕層の課税逃れ疑惑が浮上している。
- アイスランドでは疑惑を報じられたグンロイグソン首相が辞任した。
アップデート
北朝鮮などへの経済制裁の抜け道に?
パナマ文書の流出元である法律事務所「モサック・フォンセカ」が、米財務省が経済制裁の対象にしている北朝鮮やイランなど33の個人や企業と取り引きしていた、と BBCなどが報じた。モサック・フォンセカが顧客のためにタックスヘイブンに会社を設立し、「顧客がブラックリストに載った後も代理人としてサービスを提供していた」という。
アイスランド首相が辞任を表明
英領バージン諸島に妻が会社を保有していたと報じられていたアイスランドのグンロイグソン首相が4月5日(現地時間)、辞任の意向を示した。パナマ文書をめぐって、首脳が辞任するのは初めて。
パナマ文書とは
カリブ海の英領バージン諸島、インド洋のセーシェル、英仏海峡のガーンジーなど、タックスヘイブンに設立された21万余の法人に関する電子データ。パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した。
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の特設ページ「パナマペーパーズ(パナマ文書)」が報じた概要によると、ファイルには10カ国の現旧指導者12人とその他の政治家や公職者128人、および各界の著名人に関係する会社の情報が含まれている。
パナマ文書は身分を明らかにしていない人物によって、南ドイツ新聞に持ち込まれ、ICIJと世界の100を超える報道機関が協力して分析した。日本からは朝日新聞と共同通信が参加している。
朝日新聞の4月4日の報道によると、文書には日本国内を住所とする約400の人や企業の情報が含まれている。「政治家ら公職者は見当たらなかったものの、医者や実業家らが資産や利益を租税回避地に移そうと試みていたことがわかった」という。
文書内に本人やその家族・友人の名前があると報じられた主な首脳は以下の通り。
・アイスランドのグンロイグソン首相(4月5日に辞任表明) ・アゼルバイジャンのアリエフ大統領 ・アルゼンチンのマクリ大統領 ・イギリスのキャメロン首相 ・ウクライナのポロシェンコ大統領 ・エジプトのムバラク元大統領 ・サウジアラビアのサルマン国王 ・パキスタンのシャリフ首相 ・マレーシアのナジブ首相 ・ロシアのプーチン大統領 ・中国の習近平国家主席
プーチン大統領については、友人のチェロ奏者セルゲイ・ラルドゥーギン氏が所有する複数の会社の名前などが上がっている。ICIJは大統領周辺で少なくとも20億ドル(2千億円余)の資金の流れがあったと指摘している。
サッカーのメッシ選手や俳優のジャッキー・チェン氏らの名前も報じられており、波紋は政財界を超えて広がっている。