• mediaandjournalism badge

ネットの無断転載への逆襲が始まった 普段はバラバラの報道7社が連携した理由

無断転載に無頓着に見えた新聞社が連携した。今後は法的手段もありえるという。

日本最大手のまとめサイト「NAVERまとめ」が、朝日新聞や読売新聞など報道7社の申し入れを受け、無断転載していた画像や写真など約34万件を削除した。

報道各社が協力して申し入れをすることも、まとめサイトがそれを受け入れることも画期的なことだ。背景に何があったのか。

危機感から日本の大手報道が団結

報道7社とは、朝日、産経、日経、毎日、読売の5つの新聞社と共同、時事の2つの通信社。日本の大手新聞・通信社全社が共同歩調をとったことになる。

普段は特ダネ争いでしのぎを削り、政権への距離感で報道内容に違いがある。いずれも日本新聞協会に所属はしているが、個別案件で社を超えて協力することはあまりない。

その7社が共同でNAVERまとめへの申し入れをしたのは、それだけ著作権が守られていないことへの危機感が強かったからだ。

新聞社や通信社は膨大な人件費や取材をかけて、全国に取材網を広げている。たった1枚の画像でも、撮影コストは安くない。

ところが、まとめサイトにはそれらの画像が、時には記事の文章ごと丸ごと無断で転載され、しかもそちらの方がネット上では拡散し、読まれているという現状がある。

これでは報道7社はコストを回収できず、いずれはそういう画像や記事を提供できなくなる。

NAVERまとめは要求に応じた

BuzzFeed Japanが報道7社の取材窓口をしている朝日新聞社広報部とNAVERまとめに取材したところによると、経緯は以下の通りだ。

2017年夏から7社の著作権担当者が集まり、議論が始まった。8月28日にはNAVERまとめに「画像や写真が無断で転載されている」と申し入れ。その後の調査で34万件に及ぶことがわかった。

報道7社は、34万件全ての削除と再発防止策を要求した。NAVERまとめはこれに応じ、これらのコンテンツを全て削除。また、報道7社からの無断転載を防止するために各社サイトのコンテンツを利用する投稿に制限をかけた。

NAVERまとめは月間20億PV、6700万UB(2017年8月末時点)という国内有数の巨大サイトだ。34万件を削除してもPVへの影響は「特にない」(広報部)という。

「裁判をする選択肢もあった」

報道7社のコンテンツが大量に無断転載されていた今回の事案では、裁判や金銭的要求をすることもできたはずだ。朝日新聞広報部は「裁判をする選択肢もありましたが、今回は話し合いを優先しました」と説明する。

裁判をしなかった理由については「具体的には差し控えます」とのことだが、著作権をめぐる裁判にかかる時間とコストを考えると、NAVERまとめが要求に応じたことで、素早い解決を目指したのだろう。

と同時に、BuzzFeed Newsの取材に対して「裁判をする選択肢もあった」と明言したのは、無断転載した相手の対応によっては強硬策をとる覚悟を示している。

実際、無断転載をしているサイトはNAVERまとめ以外にも無数にある。今後、どのような対応をとるのか聞いてみると、以下のように回答した。

「いわゆる『まとめサイト』はたくさんあり、報道機関のコンテンツが数多く無断転載されているのが現状です。そうした現状は大きな問題だと認識しています。今後とも、さまざまな無断転載に対しては、事案それぞれの態様を考慮し、法的手段も含めて適切に対応してまいります」

NAVERまとめに止まらない

ネットでは、コンテンツの無断転載はコピペで簡単にできる。著作権法は「引用」や「報道利用」など著作物を利用できるケースを定めているが制限がある。転載元のURLを貼っておけば良いと誤解をしている人も少なくない。

その結果、自分たちで取材をし、写真や動画を撮影する報道機関が、それらのコンテンツを無断転載され、割りを食うことが多くなっているが、根本的な対策の動きはほとんどなかった。

その意味で、今回の報道7社の動きは非常に大きい。著作権担当者らの会合には、社の垣根を超えて、各社デジタル部門の声が寄せられた。連携して動く下地が整っただけに、大規模な無断転載が見つかれば、再び行動を起こす可能性は高い。

BuzzFeed JapanNews