石破氏がLGBTへの差別防止へ踏み込んだ発言 「実効性のある法律を」

    自治体で進む同性パートナーシップ制度についても「学ぶべき点が多くある」と評価。

    自民党の石破茂元幹事長が8月27日、国会内で記者会見を開き、議論が進んでいる性的少数者(LGBT)への差別を防ぐ法案について、「差別や権利侵害をなくすために実効性のある法律であって欲しい」と発言した。

    一歩踏み込んだ石破発言

    LGBTへの差別を防ぐ法律については、超党派のLGBT議連を中心に成立に向けての議論が進んでいる。

    当事者や支援者が注目をしているポイントの一つがまさに「実効性」だ。差別を防ぐ上で「理解を促進する」ための法律とするか、より踏み込んで「差別をなくすための実効性」を持たせるか。

    自民党では「まずは理解の促進が重要」という声が中心で、「実効性のある法律を」というより踏み込んだ意見を明らかにするのは珍しい。

    総裁選に向けた会見の中で

    会見では安倍晋三首相との一騎打ちとなる見通しの自民党総裁選に向けて、経済や安全保障、憲法などについて語った。

    その中で、会見に参加していた「なくそう!SOGIハラ」実行委員会の松中権代表は、LGBTについて質問をした。(SOGIはセクシュアル・オリエンテーション:性的指向と、ジェンダー・アイデンティティ:性自認の頭文字)

    質問は2点あった。

    一つは、超党派によって議論が進んでいる、LGBTへの理解を促進し、差別を防ぐ法案についてどう考えるか。

    二つ目は、地方自治体で広がる「同性パートナーシップ登録制度」について、どう考えるか。

    「差別をなくすために実効性のある法律であって欲しい」

    石破元幹事長の回答は、LGBTに関する法案については次のようなものだった。

    「議員立法として超党派の取り組み。その法律を作ることは必要と考えている。ただ、法律を作るだけでは、そのようなこと(差別)がなくなるわけではなくて、法律を作るとともに、その実効性をいかに目指すか」

    「差別をなくすために、そういう人たち(LGBT)のいろいろな権利侵害を除去するために、そういう方々の活躍の場をさらに広げて行くために、実効性のある法律であって欲しい」

    また、同性パートナーシップについてはこう述べた。

    「自治体の取り組みは学ぶべき点が多くある。自治体は、憲法との整合性を十分に認識しながら、いろいろな条例を発効している。そのような自治体の姿勢を尊重しながら、あらゆる人がその能力を最大限発揮し、偏見や差別のない社会を具現化することを目指したい」

    「踏み込んだ回答」「安倍氏の考えも知りたい」

    この回答について、質問した松中さんは「踏み込んだ回答で驚いた」と話す。

    「LGBTに対する差別に関して心ない発言が多く、とても悲しく残念な思いをしてきた。 明確に差別をなくすために、実効性が必要だという石破氏の発言は、当事者だけでなく、多くの人に勇気を与えると思う。同じ自民党総裁選の候補者として、安倍氏がどのように考えているかを、国民は知りたいのではないか」

    差別や偏見が続く現実

    LGBTへの差別をめぐっては、学校でのいじめや雇用差別、自殺などがいまも現実として続いている。

    昨年三重県で高校生1万人を対象に実施されたアンケートでは、約10%が自分は性的少数者だと答えた。その他の多くの調査では社会の1割程度がそうだという結果が出ている。

    また、このアンケートでは当事者はいじめや偏見を受けた割合が高いことも明らかになった。(詳細は「高校生1万人調査でわかった6つのこと」

    「差別をしてはならないという条項を」

    LGBTへの差別を防ぐための法律の制定を求め、全国の80団体が加盟して活動を続ける「LGBT法連合会」の神谷悠一事務局長も石破氏の発言を評価する。

    「杉田議員の発言に対しては自民党支持層からも反発の声が上がった。様々な問題に注目が集まる中で、石破氏も『実効性が必要』と感じているのではないか。『理解の促進』はこれまでもやってきた。その状況を追認するだけでは差別を防ぐ実効性を持つことは難しい。一歩踏み込んで、差別をしてはならないという条項が入ることで人権が保証される」