日本のネット上の売上が米中企業に大量流失している 衝撃データが初めて明らかに

    「日本の経済成長に直結する問題だ」と新経済連盟は訴える。

    日本のインターネット経済の売上の多くが海外に流出している。新経済連盟が独自に調査し、その実態を初めてまとめた。インターネット広告の50〜70%、音楽定額配信サービスの75%以上など、衝撃的な数字が並ぶ。

    様々な分野で外国勢がシェアを拡大させている

    IT系企業が中核をなす新経連(代表理事:三木谷浩史・楽天会長兼社長)が、各分野の企業の協力を得てデータを集計した。

    なぜ、外国企業がこれだけのシェアを日本で握っているのか。その背景にはインターネットにおける「プラットフォーム」の力がある。

    プラットフォームとは、例えば検索におけるGoogle、ソーシャルネットワークにおけるFacebookやTwitter、EコマースにおけるAmazon、動画におけるYouTubeやTikTokなど、様々な情報やサービスが集約される場所をさす。

    図解をすると、以下のようになる。

    巨大なプラットフォームには、あらゆる個人や企業が自らの情報やサービスを提供する。例えば、新聞社やテレビ局、ネットメディアはFacebookやTwitterなどに自社のページを作って記事を配信する。

    そうしないとネットユーザーに自社のコンテンツを届ける競争で他社に勝てないからだ。

    情報が集約されるプラットフォームはどんどん便利になり、ユーザーは個別の企業のウェブサイトよりもプラットフォーム経由でサービスを利用するようになる。そうすると、利益の多くがプラットフォームに落ちることになる。

    海外でもインターネット広告売上の多くがGoogleとFacebookに集中することが「デュオポリー(2社独占)」と注目を集めていたが、日本でもその実態がデータから明らかになった。

    広告だけではなく、スマートフォン上で楽しむあらゆる活動がプラットフォーム経由になっている。音楽も、動画も、買い物も、ソーシャルネットワークも、メディア消費も。

    そして、巨大プラットフォームはほとんどがアメリカや中国企業のものだ。

    冒頭のチャートにあるように、アプリに至っては市場の100%をAppleとGoogleが抑えている。スマホアプリでの売上の30%は海外に吸い上げられ、国内企業の利益は圧迫されている。

    アプリ手数料が日本企業にとって大きな壁になっている

    新経連の吉田浩一郎理事は4月24日、衆議院議員会館で国会議員らを前に講演し、「日本の経済成長に直結する問題と認識して欲しい」と危機を訴えた。

    日本の経済成長に直結する問題という言葉は、大げさではない。インターネット上の経済規模は大きくなる一方。その成長分野で売上の多くが海外に流れ、税率が安い国を経由することで徴税額は抑えられている。

    そうやって急成長する海外企業の資本力は、日本で税金を収めている日本企業にとっては脅威。吉田理事が例にあげたのが、スマートフォンへの広告出稿だ。中国を筆頭に海外企業のサービスの広告が上位を占めるようになっているという。

    膨大な資本力で投資してくる海外企業に対して、日本企業が同じ分野で競争力を維持するのが難しくなっている。

    ネット広告出稿でも中国企業の存在感が大きい

    この状況にどのように対応するか。

    吉田理事は「プラットフォームを規制しろというわけではない」と強調した上で「日本企業が外国企業に比べて不利な競争環境にある」と訴える。

    例えば、著作権法違反の疑いのあるコンテンツや民泊やライドシェアなど、日本が法的な規制を設けている分野で、海外企業がその規制の網を逃れて国内で活動している、という指摘だ。

    その上で、海外企業にも法の域外適用をすることや、独占禁止法によって手数料3割問題を是正していくことなどの対応策を改めて提言した。

    メディア業界が頼みとするインターネット広告の実態に衝撃

    メディア業界にとって、広告費は大きな収入源だ。そのうちインターネット広告が、テレビ広告とほぼ並んだことが大きな話題になっている。一方で、新聞や雑誌の広告収入は右肩下がりが続く。

    しかし、右肩上がりで頼みの綱となるインターネット広告も、その50〜70%が海外に流れているという実態は衝撃的だ。

    こういった情報がこれまで表に出てこなかったことについて、吉田理事は「取引相手でもある日本の個別企業では声をあげづらかった。だから新経連で調査する意義があった」と話す。

    こういったプラットフォームビジネスで海外勢に圧倒される日本企業の努力不足を指摘する声もある。

    吉田理事は国会議員を前に「便利なものが選ばれるビジネスの結果とも言える。プラットフォームを規制しろというわけではない。ただ、日本企業が不利な競争環境にあるという認識を持って欲しい」と繰り返し訴えた。

    これらの資料や提言は新経連のウェブサイトで公開されている。