日米関係「これまでにないほど良好」、トランプ政権では? 屈指の知日派が語る過去と未来

    BuzzFeed Newsはダニエル・ラッセル国務次官補にインタビューした。

    日本とアメリカの両首脳が12月27日(日本時間28日早朝)、ハワイ・真珠湾を訪問した。真珠湾攻撃から75年、戦争の終結から71年。日米関係の大きな節目だ。

    BuzzFeed Newsは、この訪問に先立ち、ダニエル・ラッセル国務次官補(東アジア・太平洋担当)にインタビューした。

    日米外交に30年にわたり携わってきたラッセル氏は、今回の真珠湾訪問を「両国の和解のプロセスにとって、重要な区切りだ」と表現する。

    ラッセル氏は学生時代に日本に留学し、1985〜89年に東京のアメリカ大使館や大阪・神戸アメリカ総領事館で勤務。その後、国連や韓国、欧州などでの勤務を経て、2005〜08年には、大阪・神戸アメリカ総領事に。さらに、ホワイトハウスで大統領特別補佐官、国家安全保障会議アジア上級部長を歴任した。

    日本人と結婚し、日本語を話す。中曽根首相とレーガン大統領の「ロン・ヤス時代」から日米外交に携わってきたアメリカ屈指の知日派だ。

    80年代、戦中派が繋いだ日本とアメリカ

    最初の日本勤務の頃の外相は安倍晋太郎氏。「その秘書だったのが、今の安倍晋三首相。その頃から私たちは人脈を作ることができました」と微笑む。

    80年代。高度経済成長を経て、バブル景気に突入し、「Japan As Number One(ナンバーワンの日本)」と称された時代。 当時の日本は「自信に満ち溢れていた」。

    その中で、日米関係に大きな役割を果たしたのが戦中派だったと指摘する。

    「当時のビジネスリーダーたちは皆、第二次世界大戦を経験していました。破壊と貧困。戦争末期と戦後の混乱に苦しめられた経験がありました」

    では、アメリカを恨んでいたのか。そうではない、という。

    「彼らのうち相当数がアメリカに行き、大きなチャンスを掴みました。そして成功したのち、アメリカの友人として、その恩義を返そうとしました」

    「空襲で焼き払われ、食料もない。そのような経験を当時60〜70代だった彼らが語ってくれました。それでも、アメリカへの苦い思いよりも、日米の友好的な関係を望んでいた。そのことに心を打たれました」

    日米関係は「これまでにないほどに良好」

    2013年に東アジア・太平洋担当の国務次官補となり、「アジア重視」のオバマ政権の外交を支えてきた。

    オバマ外交についてラッセル氏は、日本や韓国など友好国との関係強化とともに、ASEAN、APEC、G20など国際的な枠組みを重視してきたと説明する。

    特に日米関係について、2015年4月の安倍首相のアメリカ連邦議会での演説、2016年5月のオバマ大統領の広島訪問、そして今回の両首脳の真珠湾訪問などに触れ、「これまでにないほど良好だ」と称賛した。

    しかし、中国の南シナ海への進出や北朝鮮の核実験とミサイル開発は止まらない。さらに状況を不安定にしているのが、トランプ次期大統領の存在だ。

    就任前から台湾総統と異例の電話会談をし、中国との間の緊張が一気に高まった。選挙戦中には、トランプ氏はアメリカ軍の日本や韓国からの撤退や日本の核武装容認など、アメリカ第一主義の発言を続けてきた。

    「オバマ外交における同盟国や国際的な枠組み重視」とはかけ離れて見える。今後のアメリカとアジアの関係はどうなっていくのか。

    日本の民主党を例にトランプ政権を考える

    ラッセル氏は、次期政権には次期政権の考えがあるとの前提の上で、「大統領が変わっても、国防や経済などアメリカの国益は概して変わらない」と指摘。日本での民主党への政権交代を例に挙げて、次のように述べた。

    「ギクシャクする面もあったが、徐々に元の流れに戻った。基本的な関係や同盟は維持された」

    また、次のようにも指摘した。

    「今のところは私たちが持っているデータは、選挙戦中のトランプ候補と、政権移行時のトランプ次期大統領のものだ。しかし、重要なのは1月20日(の就任式)後のトランプ大統領だ」

    オバマ大統領も就任前後で、政策や発言は変化した。トランプ氏も就任前の過激な発言を、就任後にどこまで実際の政策とするかは未知数、ということだ。

    「すぐに女性の活用を」

    最後に、長年の日本の友人として、これからの日本へのアドバイスを聞いてみた。ここだけは、日本語で。

    「それは難しい」と流暢な日本語で苦笑し、次のように述べた。

    「私が最初に日本に来た1980年代には『日本は天然資源がない国だ』ということがよく言われていました。でも、今はどの国でも最大の資源は人材です」

    「人口の半分は女性。日本の社会やビジネス、政治は女性を最大限に活用しているでしょうか。友人としての私の日本へのアドバイスは、企業が女性の新入社員を社長にするつもりで雇うこと。保育園の充実などの(女性の社会進出を支援する)政策をすぐに実施してください」