4月19日のプロ野球、広島・DeNA戦で試合を左右した微妙な判定をめぐり、Twitterで選手本人を交えた英語の議論が加熱している。

きっかけとなったプレーは、同点で迎えた十回ウラ、広島の攻撃。4番の鈴木誠也選手の打席でDeNAのピッチャー、スペンサー・パットン投手がカウント3-2から投じた6球目だった。鈴木のインコース低めに決まったストレートがボールの判定を受け、フォアボールに。「ストライクでもおかしくない」とテレビ解説者もうなったこの微妙な判定に、パットンが激怒。「なぜなんだ」というジェスチャーで審判の判定に疑問を呈した。
試合は結局、このまま広島がサヨナラ勝ち。判定が試合を決定付けるひとつの要因となった。
試合は終わったが、納得の行かないパットンは夜11時、判定に対しての不満をTwitterでぶちまけた。
「こういう判定がゲームを左右することが多すぎる。もっとまともになってほしい。以上。これでお咎めなしならば、リーグを傷つける結果になるだけ。選手たちがストライクゾーンの電子判定を望んでいるのも、審判にとっては疑問なんだろう」
投稿にはプレーの動画が貼り付けられているが、その再生数は43万回を超えている。
日米共通の野球規定では、「審判員の判断に基づく裁定は最終のもの」とされ、プレーヤーや監督が意義を唱えることは許されていない。パットン自身も、2018年9月に判定に抗議し、退場処分になったこともある。
試合後であっても、試合の内容や審判の判定について直接、SNSなどで言及するのは処分を受けるリスクもあり、極めて珍しい。
2017年には広島(当時。現在は楽天所属)の福井優也選手が試合後、インスタグラムに「色々思う事もある」などと書き込んで炎上、投稿を削除したこともある。
このパットンの物議を醸すツイートに、かつて西武、阪神、ロッテに在籍し、日本での経験が豊富なクレイグ・ブラゼル元選手が返信。
「お若いの、ジャパニーズ・ウェイ(日本のやりかた)を学ばないと。リスペクトを得るんだよ」
と、パットンの発言をなだめた。すると、
「ジャパニーズ・ウェイはよく知っている。正確な仕事をすることでお金をもらってるんだから、そこにリスペクトも何もないでしょう。単に日本で起きた出来事なんじゃなくて、野球全体のことなんだから」
とパットンが反論。さらにそこにパットンの妻のジュリエッタさんも加わり、
「野球の判定に、ジャパニーズ・ウェイなんてあってはならないでしょう。ルールがあるゲームなんだから。こんなことが問題になっていること自体がつらい。私達夫婦にとって日本が4カ国目だけれど、審判に偏りなく、ルールブックに沿って判定してもらうのに“リスペクト”が必要だなんて、初めてのこと」
と投稿した。しかし議論はここで終わらず、通算229セーブと実績を上げている大物、ソフトバンク所属のデニス・サファテ選手も参戦。
「ストライクだったか? 100%そうだ。だけど、もしあれがメジャーリーグで、しかもテッド・バレット(訳注:往年の名審判)や偉大な審判だったとしたら、君は同じように批判したかな? もしするなら、僕も謝るしかないけどね。ただまあ、僕も見ていたけれど、あれは間違いなくストライクだし、君もよく自分を抑えたと思うよ」
と、元の発言をたしなめつつ、同じ投手として理解も示した。パットンはこれに返信する形で、改善のためなら声を上げることも必要、と締めくくっている。
「メジャーリーグだったら私もああはしなかったと思う。監督が選手の側に立つことが許されているし、メジャーには審判が公正であるよう責任を持つシステムがあるから。だけど日本にはないし審判が罰せられることもない。これが選手とリーグを傷つけているんだ」「もちろん、メジャーでもPitchFX(CGを使った投球分析システム)や、全国ネット放送があるから、審判が批判されることもある。でもリーグがよりよくなるためなら、それも必要なんじゃないかな」
日本のプロ野球では2018年からビデオ判定が導入されているが、ストライク、ボールの判定は対象となっていない。
いずれにしても、普段はなかなか見られない、プロ選手同士の「Twitter野球談義」だったことは間違いない。